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第19話 領主様の待遇の良さが異常!

「――え?」

「どうせ部屋も余ってるし、こっちの方が過ごしやすいだろう?」

「い、いやでも、さすがに……」


 領主様の屋敷についた僕たちが案内されたのは、使用人用の部屋ではなく客室だった。しかも1人1部屋、計3部屋貸してくれるらしい。

 アリア父を介して知り合った「大事なお客さん」という扱いなのかもしれないが、クライス家はただの貧しい一般庶民だ。どう考えても分不相応だろう。

 当然、父も母も困惑している。


「あ、あの、失礼ですが領主様、なぜうちのようないち領民にここまで……」

「私たち、お返しできるものは何も……」

「……いや、これくらいはさせてくれ。本当にすまなかった。私が浅はかな行動をしたばっかりにあのような……。もっと目立たない方法を考えるべきだった」


 領主様は、なぜうちが全てを焼かれるような事態に陥ったのか、察しがついているようだった。

 元々、うちとフローレス家が親しい関係にあることを良しとしない層がいた、というのもあるのだが。

 そこに領主様まで加わったことがトリガーとなったのは間違いない。


 村にはうちより裕福な家もたくさんあったし、僕やアリアと同い年の子もほかにも何人もいた。にも拘わらず、なぜクライス家だけ、と思われていたのだろう。

 まあ最初に懐いてきたのはアリアの方だし、正直僕もよく分からないんだけど。


 つまり、そんな僕たち一家が領主様にまで気に入られたことが、よほど気に食わなかったのだと思われる。

 ここ最近の村人たちの探るような社交辞令、冷ややかな作り笑いを見ていれば、さすがにそれくらいは気づかざるをえなかった。


 でもだからって、この厚遇はさすがにやりすぎでは?

 まあ、それだけアリア父の存在が偉大ということなんだろうな……。

 あの人も一応、庶民のはずなんだけど。本当、絶対敵には回したくない相手だよな。


「だからまあ、せめてここにいる間は快適に暮らしてくれたまえ。もちろん、いつまででもいてくれて構わないよ。それから」


 そう言って廊下に目を向けると、そこには3人のメイドが立っていた。


「慣れない暮らしは大変だろうから、1人につき1人、メイドをつけよう。以降、何か困ったことがあれば遠慮なく話すといい。私がいる時には私に言ってくれても構わないけれどね」


 メイド3人は、僕たちに頭を下げる。

 いやメイドって。

 まあたしかに、こんな広いお屋敷で放置されたらどうしていいか分からないってのはあるけど!


「それじゃあ、今日はゆっくり休みなさい。仕事に関する話は明日しよう」

「は、はい……」


 領主様は、それだけ言うとどこかへ去って行った。

 それと同時に、メイド3人のうち1人が僕の元へとやってくる。

 おそらく15~6歳くらいの少女で、美しい金髪はうしろに綺麗に纏められている。


「本日よりお世話をさせていただきます、シャロと申します」

「え、ええと、フェリクです。よろしくお願いします」

「お手洗いとお風呂は、各部屋にございます。すぐに着替えをお持ちいたしますね。それから、私に敬語は不要ですよ」

「で、でも僕貴族でも何でもないし……」

「フェリク様は、旦那様がお連れした大事なお客様です」

「わ、分かった」


 ……き、緊張する。

 でも、せっかく領主様が用意してくれたんだし。

 早くこの生活にも慣れなきゃな。

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