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第119話 王城へ行く準備に追われる日々

 王城へは、領主様も一緒に向かうことになった。

 王城からの遣いが来るまでの一週間で、領主様とアリア父監修のもと、フローレス商会とクライスカンパニー、クライス農場、クライス工場それぞれのプレゼン資料を急ピッチで作っていく。

 プレゼン資料は、もちろん国王様に見せるためのものだ。


「も、もう無理……」


 これまでもそれなりに活動記録や報告書は作らせていたし、レシピもまとめていたつもりだったが。

 しかしフローレス商会はともかく、クライス家には経営ド素人しかいないし、起業してからの日も浅く、今も試行錯誤が続いている状態で。

 フローレス商会の専門家がコンサルティングや経理などの事務仕事を担ってくれてはいるものの、今や多忙を極めてており、その目は届き切っていなかった。

 そのため、国王様に見せられるレベルの資料などまったく整ってなかったのだ。


「頑張ってください。フェリク様しか分からないことも多いんです!」

「お、鬼……。ああ、パソコンが欲しい……」

「パソ……とはなんですか? 新しいお米の種類ですか?」

「いや、うん、何でもないです……」


 この世界に来て、今ほどパソコンがほしいと思ったことはない。

 前世、会社で仕事をしていたときは、画面を叩き割りたくなったこともあったが。

 今ではその繁忙期の戦いですら懐かしい。

 人って恵まれた環境にいると、なかなか身近な幸せに気づけないもんだよな。


 というか。

 有名レストランの料理長や貴族のお抱えシェフの対応も、もはや数えきれないくらいしてるはずなんだけど。

 これといった知識もないままに来るもの拒まずだったため、名前が思い出せない。


 ――まあ、だいたいでいいよな。

 この辺の情報は、あくまで実績をアピールしたいってことだろうし。


「フェリク君、進捗はどうだい?」

「――領主様。正直もう帰りたいです」

「はっはっは。面白いことを言う。まだ行ってすらないだろう。――それからね、今後私のことは父上か父様と呼びなさい。君はもう、うちの子なんだからね」

「そ、そうでした……。でもそんな、なんだか恐れ多くて」

「最初は慣れないだろうけど、形から入るのも大事なことだ。君が堂々としていないと、使用人や領民も戸惑ってしまうよ。仮に私がおろおろしてたら、君だって不安になるだろう?」


 た、たしかに。


「――で、では、父上」

「うん、それでいい。間違っても陛下の前で領主様なんて言わないように」

「き、気をつけます……」

「よし。それじゃあ引き続き、資料作りに励みなさい。やることはほかにも山積みだからね。ああそうそう、服や靴も新調しないといけないね。身だしなみを整えるのも貴族の義務だよ」


 こ、こいつら本当、僕のこと9歳に見えてないんじゃないか!?

 たしかに中身は30代の大人だけど!

 でもこの世界では、れっきとした9歳児なのに!!!!!

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