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第110話 国王様からの頼みごと

 国王様がやってくるということで、学校内は行動規制か敷かれ、警備も一層厳重なものになった。

 学校の生徒たちは、その様子を見るべく規制の外に群がっている。


 ――国王様も大変だな。

 娘の学校に来るだけでこんな一大事なんて。


 一行が到着し、そのうち一番豪華な馬車の中から、国王と思われる男性が出てきた。


「ごきげんよう、お父様」

「おお、カタリアナ。元気にしていたかな」

「ええ、変わりありません」

「うむ」


 国王様は娘の元気な様子を確認すると、満足そうにうなずく。そして。


「君がフェリク君かな? ふむ、リアムの冗談かと思っていたが、まさか本当にこんな幼い子どもだとは驚いた」


 国王様は僕の姿を見つけ、そう声をかけてきた。ちなみにリアムというのは、領主様の名前だ。


「……ふ、フェリク・クライスと申します」

「今日は私のことは、ただの好奇心旺盛なおじさんだと思ってくれ。さあ、中でゆっくり話そうじゃないか」


 国王様は、僕を緊張させないようにか砕けた笑顔を見せ、楽しげな様子で屋敷の中へ入っていった。

 その後、執事のフレッドに促され、僕も屋敷の中へと戻る。

 そして応接室で待つようにと言われた。


 ◇◇◇


「待たせてすまないね」

「い、いえそんなっ! こ、この度はお――私のような者に謁見の機会をくださり、感謝申し上げます」

「今はプライベートな時間だ、楽にしてくれて構わない」

「は、はい……」


 どうにか笑顔を作るも、楽になんてできるわけがない。

 いくら中身は大人とはいえ、一国の王に会うなんて前世含めても初めてだ。

 領主様もオーラが違うと思っていたが、やはり国王ともなると威厳のレベルが違う。


 ――というか、いったい何の用だろう?


「フェリク君は、アリスティア領の領民らしいね。彼はどうだい?」

「え……ええと、とても良くしてくださいます。火事で家を失った私たち家族を助けてくれましたし」

「――ああ、そうだったね。リアムから聞いたよ。本当に、ひどいことをする」


 国王はそうため息をつく。

 まさか、うちの火事の話が国王様の耳に入っているとは思わなかった。


「アリスティア領では、君のおかげでお米が大人気だそうだね。あれは貧しい農民しか口にしない穀物だったはずだが、今や領内随一の特産物になったと聞いている。私も何度か食したが、素晴らしい味だったよ」


 なんと、いつの間にか国王様が僕のお米を食べていた!


「恐れ入ります。領主様やフローレスさんが力を貸してくれたおかげです」

「新しい調味料や食品もたくさん生み出したんだってね。たしか……醤油と味噌、みりんだったかな? ほかにもいくつかあったな」


 というか、めちゃくちゃ話がいってるな!

 まあわざわざ会いに来るくらいだ。事前にがっつり調査されてる可能性が高い。

 効能を付与できる件は漏れてませんように……。


 ――でもこれは、ある意味チャンスなのでは?

 お米がおいしい万能食材なのは紛れもない事実なわけだし。

 国王様がお米を気に入ってくれれば、全国でおいしいお米料理が食べられるようになるかも……。


 ……なんて、そんなことを考えていたそのとき。


「実は、君に頼みがある」

「――へっ? な、何でしょう?」

「君のスキルで作りだしたお米は、場所を選ばず豊かな実りをみせると聞いた。不思議と虫も寄ってこないと。それは本当かな?」

「はい。スキル【品種改良】で、お米を改良したんです。天気の影響も受けないので、燃やされない限りは育ちます」

「うむ。……そこで、だ。君が作ったそのお米を、ぜひ国でも備蓄したいんだ。力を貸してくれないだろうか」


 んんん? んんんんんんん!?

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