第109話 国王様が会いに来るらしい
王都の学校へ来てから、3日が経った。
大好評だった天津チャーハンのあとも、僕はドリアやリゾット、おにぎり茶漬け、おこげサンド、オムライスなど、さまざまなごはんメニューを提供した。
「――それじゃあフェリク君、申し訳ないが、あとは任せたよ」
「フェリク、またね」
「う、うん……」
3日目の昼、フィーユは学校、アリア父は仕事があるからとグラムスへ戻ることになり、僕は1人この場に取り残された。
――9歳の平民を王族が暮らす屋敷に放置するなんて、ちょっとひどすぎないか?
王女様がいい人で本当によかった!
僕も一緒に帰るという案も出たのだが、カタリアナ王女がもう少しいてほしいと熱望しているらしく、執事のフレッドに頼み込まれてしまったのだ。
アリアは元気にしてるかな……。
慣れない場所での生活のせいか、アリスティア家を離れて随分経つ気がする。
「フェリク様、この度はお引き留めしてしまい、申し訳ありません」
「い、いえそんな。王女様にお気に召していただけるなんて光栄です」
「その……実は明日、陛下がお見えになるそうで。ぜひともフェリク様にお会いしたい、と」
――――え?
「え、ええと……?」
「以前、陛下とアリスティア様がお食事をなさった際、フェリク様の功績を話されまして……フェリク様にとても興味を持っておられるのです」
おいいいいいいいい!!!
そんな話聞いてないんだが!?
「陛下は国王としてではなく、1人の人間として会うつもりだと、近所のおじさんと話すつもりでいてくれれば、とおっしゃっておりました」
「き、近所のおじさんと話すつもりで」
ちょっと何を言っているのか分からない。
国王様相手にそんなことできるわけないだろ!
とはいえ、国王様がじきじきにやってくるのに拒絶なんてできない。
下手をすれば、両親はもちろんのこと、アリスティア家やフローレス家にも迷惑がかかるかもしれないし。
「わ、分かりました……」
「フェリク様なら何も問題ありませんよ。陛下のご命令がない限りは、私も傍についてフォローいたします」
◇◇◇
こうして迎えた4日目の朝。
この日は朝からメイドさんたちがバタバタと準備に奔走しており、僕もいつもに増して丁寧に身支度を整えることになった。
――国王様、どんな人なんだろう?
僕みたいな平民の子どもに会おうとするくらいだし、そんな気難しい人ではない、と思いたい……。
昨日の夜はあまり眠れなかったし、すでに若干胃が痛い。
こんなイベントが発生するなら、スキル【品種改良】で、胃薬効果を付与した米を作っておくんだった……。
領主様の言いつけを律儀に守ってる場合じゃなかったよまったく。
「フェリク様、もうすぐ陛下がご到着なされます。フェリク様もお出迎えを」
ああ、どうか。どうか嫌われませんように!!!
無事何事もなく終わってくれますように!!!