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第108話 海老と三つ葉の天津チャーハン、いざ!

 屋敷内のダイニングルームへ向かうと、そこではカタリアナ王女とフィーユ様が談笑を交わしていた。


「お待たせいたしました」

「フェリク! ようやくできたのね! 早くチャーハンが食べたいわ」


 僕が声をかけると、カタリアナ王女は待ちわびた様子でワゴンを気にし始めた。

 が、お皿には銀色のクローシュ(金属でできた半球状の蓋)がかぶせてあるため、お皿の中はまだ見えない。

 お皿を2人の前に出し、クローシュを取る。


 ……が、お皿に盛りつけられた料理を見て、カタリアナ王女は無言のまま固まってしまった。

 ダイニングルームに、数秒間の何とも言えない沈黙が流れる。


「……フェリク、これは?」

「海老と三つ葉の天津チャーハンでございます」

「わたくしは先ほどの、ごはんを炒めたチャーハンが良かったのだけど……」

「フェリク、どういうこと? カタリアナ様から聞いていた料理とはずいぶん違うように見えるけれど」


 カタリアナ王女は、少しがっかりした様子を見せる。

 それを見て、フィーユが慌てた様子でこちらを見た。

 というか、ご飯を炒めた以外のチャーハンってなんだろう。


「え、ええと、恐らくご満足いただけると思いますので、安心してお召上がりください。スプーンで切り崩して、すくって食べる料理です」


 そう伝えると、カタリアナ王女はしぶしぶスプーンを手に取り、スプーンを使って端の方を切り崩す。そして――


「こ、これ……中身はあのチャーハンなのね!?」

「はい。そのままお出しするのも芸がないと思い、卵とあんをかけました」

「そういうこと。もう、ならそう言ってくれればいいのに。意地悪ね」


 そう言いながらも、ワクワクした様子で天津チャーハンを口へと運ぶ。

 そして一瞬驚いたように目を見開き、そのままじっくりと味わって――


「……なんて素晴らしい料理なの!? ごはん1粒1粒にしっかりと味がついていて、具材とのバランスもちょうどいいわ。それにこの程よくトロッとした卵とソース! チャーハンの味を消すことなく、より洗練された味に仕上げてくれる……」

「お気に召したようで何よりです」

「この野菜も、爽やかでとってもいい香りね。これは何ていう野菜なの? アリスティア領の特産物なのかしら? フィーユも食べてごらんなさいよ」


 カタリアナ王女にそう促され、フィーユも同じように天津チャーハンを口にする。


「な、何これ……こんなにしっかり味つけされてるのに、全然くどくないわ。青じそのときも驚いたけど、フェリクって本当に変わった野菜をたくさん知ってるわよね」

「え、ええ、まあ……。母がスキル【鑑定・草】の持ち主なものですから」


 まさか貧しさ故に野草を片っ端から鑑定して食べてたなんて、青じそもせりも三つ葉もその中で見つけたなんて、そんなこと王女様がいる場ではとても言えない……。


 2人は、あっという間に天津チャーハンを完食した。

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