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第103話 いざ王女様専用キッチンへ!

「――それで、あの」

「ああ、そうそう。今回はそんな話をするために来てもらったんじゃないのよ。カタリアナ様が、フェリクの作るお米料理を食べたいそうなの。フェリクは平民だし9歳の子どもだから、王族に料理を提供するのは……ってお断りしたのだけど……」


 フィーユは再びため息をつく。

 いくら辺境伯のご令嬢といえど、王族相手に強く出られるわけがなく。

 王女様に押し切られたのだろう。


 そもそもフィーユは、僕から離れるために学校に通っているわけで。

 本来なら、僕とは会いたくないはずだ。


「話は聞いています。メニューの指定はなく、こちらで考えてほしいと伺っていますが、それで合ってますか?」

「ええ。カタリアナ様も、きっと新しいお米料理に出会えるのを期待して呼んだのだと思うわ。……分かってるでしょうけど、2人とも失礼のないようにね」

「私が責任を持って対応いたします」


 フィーユの言葉に、アリア父がそう一礼する。

 正直、1人だったら心が死んで料理どころではなかったと思うが、アリア父がいてくれることでだいぶ心強い。


「それじゃあ頼んだわよ。夕食には私も参加します。楽しみにしてるわ」


 僕とアリア父はフィーユと分かれ、1つ下の階にある客室へと向かう。

 それぞれの部屋の前には、1人ずつメイドさんが待機していた。


「フェリク様、フローレス様、ようこそいらっしゃいました。学園への滞在中、私どもがお世話させていただきます」

「よろしくお願いいたします」

「よ、よろしくお願いいたします」


 このお屋敷で働いているメイドの多くは、貴族でもある。

 そのため身分は僕たちよりずっと上で、本来なら気軽に話すことすら許されない相手だ。――と、アリスティア家で受けた授業中に聞かされた。

 ここでメイドとトラブルを起こすと、後々やっかいなことになる可能性もある。

 ならいっそ放っておいてほしいが、客人として王女様直々に招かれている以上、そうもいかないのだろう。


「よろしければ、先にキッチンへご案内いたします」


 王族お抱え従者のスキル【転移】で一瞬だったため、今はまだ午前中で。

 王女様に料理を提供するのは、夕食としてになるらしい。

 そのため、まだだいぶ時間がある。


 ――でもまあ、先にキッチンを見ておいた方が安心もできるしな。


 キッチンは半地下のような場所にあり、シェフが昼食を作っていた。

 もっと広大なキッチンが用意されていて、たくさんのシェフがてんやわんやしているのかと思ったが――


「も、もしかして、あなたがフェリク様ですか!?」


 そのシェフは、視界に僕を捕捉するなりパッと目を輝かせ、パタパタとこちらへやってきた。


「ぅえっ!? は、はい。フェリク・クライスと申します……」

「――はっ! と、突然申し訳ありません! 私、このお屋敷で王女様にお出しする料理を作っています、デリと申します」


 デリは僕が驚いたことに気づき、慌ててそう頭を下げる。

 キッチンは、少し広めのワンルームマンションの一室くらいの広さで、そこにはこのデリと名乗る女性1人しかいなかった。

 が、きれいに掃除が行き届き、物も整然と置かれていて、その様子からも調理に最善の注意が払われていると伝わってくる。


「い、いえ、こちらこそ申し訳ありません。あの、ほかのシェフは……」

「ここで料理を作っているのは私1人ですよ。このキッチンは、王女様の料理をお作りする専用のキッチンなんです。ですので基本的には、王女様直属の世話係と執事、それから私しか入れません。使用人用のキッチンは地下にあります」


 ――な、なるほど。だから彼女1人なのか。

 というかそんな大事な場所に入れてもらっていいのか……?


 デリは、キッチンに置かれている調理器具や食器、食材、調味料などの場所を丁寧に教えてくれた。

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