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第1話 あなたのスキルは【品種改良・米】です←!?

 米が好きだ。ごはんが好きだ。

 これさえあれば生きていける。


 程よく水分を含んだあのもっちり感、白く輝く艶やかさ、噛んだ瞬間にじんわり広がる甘みとうまみはオレを魅了してやまない。

 使い勝手だって抜群にいいしアレンジもし放題、おまけに栄養価も高い米を日々の生活に取り入れないなんて、人生の80%は損してる。

 そう思っていたのに――


 ◆◆◆


「えー! またカユー!?」


 目の前には、少量のサラダと肉、それから米に水を加えて煮込んだだけの、薄黄色に濁ったドロドロの液体・カユーが置かれている。

 うちの夕飯の定番メニューだ。


 特にカユーは、朝昼晩と毎食のように登場する。

 食えないほどまずいわけではないが、特有の強い匂いがあり、こうも毎日食べたいものではない。というか、オレはカユーが苦手だった。


「しょうがないでしょ、うちは米農家なんだから。それに家計も大変なのよ。我儘言わないでちょうだい」

「そうだぞフェリク。飢えに苦しまずにいられるだけありがたいと思え」

「そんなあ。ぼくもパンが食べたいよ……」

「贅沢言わないの!」


 ぼくはしぶしぶ、スプーンでカユーをすくって口へと運ぶ。

 相変わらずの匂いと舌触りにうんざりするが、空腹には勝てない。

 サラダと肉で味をごまかしながらカユーを流し込み、食事を終えた。


「そういや、フェリクももうすぐ8歳になるのかあ。スキル、期待してるぞ!」

「もう、お父さんったら。あんまりハードル上げちゃ可哀想でしょ。うちが授かるスキルなんて知れてるわよ」


 ここでは8歳になると、神にスキルを授けられる。

 どんなスキルが与えられるかは神のみぞ知る、というところで、たとえ貴族であっても、王族であっても選ぶことはできないという。

 とんでもない人生ガチャシステムだ。


 ――ん? ガチャ?

 ガチャってなんだろ?


 不思議なことに、たまに自分でもよく分からない言葉がニュアンスでふっと飛び出すことがあり、しかし結局いつもそれが何だったのか分からずじまいなのだ。


 ――もしかして、スキルをもらったら分かるのかな?

 実はめちゃくちゃすごいスキルをもらえる前兆だったりして!


 とはいっても、だいたいは身分に見合ったスキルとなることが多い。

 農家の息子が突然すごいスキルを授かる、なんてことは、ほとんど奇跡に近いことだった。

 だから期待してはいけない。いけないけど――

 でもやっぱり期待してしまう。


 ◆◆◆


 こうして迎えた誕生日当日。

 ぼくは家にある服の中で一番いい服を着せられて、隣町にある教会まで連れて行かれることとなった。スキル授与のためだ。


「フェリク!」

「――アリア。そうか、アリアも誕生日今日だもんな、おめでとう!」

「ふふ、ありがと。フェリクもおめでとうっ」


 教会には、幼なじみで村長の孫娘でもあるアリア・フローレスも来ていた。

 アリアとオレは年齢も誕生日も同じで、幼い頃からよく一緒に遊んでいた。

 貧しいうちの食事情を見かねて、隙を見ては野菜や肉、魚、そしてごくごくたまにパンも持ってきてくれる優しい子だ。


「――ええと次は、フェリク・クライスさん。どうぞこちらへ」

「は、はいっ!」


 ぼくは教会の神父様に呼ばれ、スキル授与のための部屋へと連れていかれる。

 部屋は窓のない小さな個室で、複雑な魔法陣のようなものが書かれた上に簡易的な椅子が1つだけ置いてある。


「この椅子に座って目を閉じ、神に祈りを捧げてください」

「は、はい……」


 心臓が激しく脈打ち、手にはじんわりと汗がにじむ。

 数分後には、ぼくの人生が決まるのだ。


 ――か、神様。お願いです。

 少しでもいいスキルをください!!!


 目を閉じてそう強く念じ――たところで。

 一瞬周囲に優しい風が舞い、どこからともなく声が聞こえてきた。


『フェリク・クライス、あなたにスキルを授けます。あなたのスキルは――【品種改良・米】です』


 ――――え? ひ、品種改良?

 しかも米限定……?

 お、終わった……。

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