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雷鳴の武神  作者: ジュレー
第一章 巡り帰りしもの
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第一話 極東より

魔法とか人外とかが認知されてる世界でのハイファンタジーです。

 

「仇なす者は死を免れず」


世界の極東に浮かぶ島国にそう恐れられた男がいた。

 生まれながらの強者であるその男は幼年より山に住まう獣、延いては妖怪をも遊戯の一環として狩って回った。

そして15で元服すると、更なる戦いを求め故郷を発つ。

 まず名のある武芸者から始まった、そして剛強で鳴る武士団と続き、都で腕が立つと評判の陰陽師や妖術家とも戦いことごとく打ち破った。

やはり人間では物足りない。次に目をつけたのは、人智を超えた存在だった。誰もが恐れる大妖怪、暴走した荒ぶる神々。男はそれらと戦い倒した。

人々は彼を畏れ、禁忌の一つと数えた。


-1281年- 日ノ本、とある海辺


「嫌な静けさだ」


甲冑に身を固めた侍が独りごちた。彼の目には月明かりに照らされた、波一つない水面が映る。


「それでいて妙に明るい」


侍の言葉に続けて、その隣に立つ男が呟く。その顔には笑

みが浮かんでいた。

確かに今は真夜中であるというのに、隣の男の不気味な笑顔をはっきりと認識できる事に侍は気付いた。


「本当に貴様一人で向かうのだな」

侍が上擦った声で男に問い掛ける。

「無論、この時をどれほど待ち侘びたか」

嬉々とした声で男が答える。


(化け物が)


侍は口には出さなかった。しかし男を見るその目には畏怖の感情がこもっていた。


「では俺の道案内の役目はここまでだ、あとは存分に戦え 神崎三郎」

侍はそう言葉を残し踵を返して走り去った。


「なれば、そうさせてもらうか」


その男は笑顔を浮かべたまま海へと近づいて行く、砂浜を闊歩し、やがて水面にバシャバシャと音を立ててながら入って行く。膝まで水に浸かる位まで進み、異変に気付く。

男から数百メートル先で動く何か。


「おでましか」


月灯りを背にしてそれは海中からゆっくりと姿を現した。髪の無い人の様な姿形、たがそれは人ではない。表情は読めない。喜怒哀楽、どれとも取れる様な表情。そして何より、驚異的な体躯の大きさ。それを見上げる男の100倍はあるだろう。たがその巨体が動いても水面に波は立たない。

そして、それが男を視界に捉えた。


「でいだらぼっち」


男がそれの名を呼んだ。

古き神話の時代、今日と同じ場所に現れ日ノ本を沈めんとした伝説の妖怪。かつては天から降りし神々によって追い払われた。

しかし今、神はいない。

「幸運だ俺に役回りが来るとはね」


およそ1ヶ月前、たまたま都を訪れていた神崎三郎はある予言の噂を耳にする。


「でいだらぼっちが目を覚ます」


真偽を確かめるべく知り合いの陰陽師に連絡を取ると、宮廷ではでいだらぼっちへの対策を日夜講じていると返答があった。

三郎は伝説の妖怪討伐に名乗りを上げた。その名を知る者は誰も異を唱えなかった。帝からの勅命を受けた三郎は、すぐにでいだらぼっちの現れると予言された地へと向かった。

そして、未曾有の決戦が始まろうとしていた。


海岸線から少し離れた山の上に、武士の小城がある。城主の名は赤松といった。彼は今、城の櫓から決戦の地となるであろう海辺を静かに眺めていた。


「殿、只今戻りました」


息を切らしながら櫓を登って来たのは、神崎の道案内の為出払っていた郎党の侍だ。


「大義であった」


海に目を向けたまま、一言労いの言葉を掛ける。


「彼奴は勝つでしょうか?」


戦々恐々といった様子で、侍が尋ねる。

(神崎の気迫に飲まれてきたな)

侍を一瞥し、赤松は思った。無理もない。

神崎三郎と言えば神をも恐れぬ最強の妖術使い、禁忌とも称される人智を超えた存在。


「仇なす者は死を免れず、か」


赤松自身、歴戦の勇士であり武名もかなり高い。しかしあの男を一目見た瞬間に悟った。

辿り着けない境地があるのだと。


「勝敗は分からん、だが奴しかおらん」


侍の問いに少し間をおいて答えた。

それとほぼ同時に海で動きがあった。でいだらぼっちが姿を見せたのだ。

神々しさすら感じる巨大な存在を目にした二人は言葉を失った。

やがて赤松が声を絞り出す


「ここからは神の領域だ」



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