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零零 ーゼロレイ 異能犯罪武力対策局ー  作者: 綾川八須
第一部 ー女神の幼体編ー
1/8

1 異能と非能 歓迎されぬ助っ人



『――それでは、続いてのニュースです。連日発生している異能力者による非能力者への殺傷事件により、異能嫌敵いのうけんてき派の活動は増々激化し、各地でデモや異能力者への襲撃が相次いでいます。異能犯罪武力対策局はこの嫌敵派の活動と異能力者連続失踪事件との関連を捜査していますが、未だ有力な情報は得られていません。あと二ヵ月で異無いむ日本内戦から二十二周年を迎える日本ですが、異無間で連続する事件の数々に、世間からは応酬の繰り返しによる第二次異無日本内戦の勃発を危惧する声が上がっており、民間人の不安は日々高まるばかりです。……ただいま速報が入りました。現在、東都京とうときょう八光やこう区のスクランブル交差点で、異能力者二人による戦闘の予知ぎゃ』 


 モニターに映る女性アナウンサーの美貌に自動車が突き刺さった。地上からの距離はおよそ五〇メートル。竜巻警報も強風注意報も無い、快晴の空に冬の木枯らしが肌と肺に痛いほどの風が吹くばかりの日本首都東都京八光区の交差点に、天気予報にはない液晶画面や窓ガラスの破片の雨が降り注ぎ、堅い音を立てて砕け散る。


 アスファルトに溶けて流れることのない透明な粒を、赤い回転灯を作動させる一台の黒いバイクの車輪が踏み締めた。


「こっちは予知通りだな。ひでえ有り様」


 そう言ってバイクから降りる人物は、草臥れたスーツに「異武」という文字とルドベキアの紋章を背負うジャケットを重ね、その上からベルトに繋げた小銃を下げた出で立ちをしていた。ヘルメットを外せば、長い前髪が目元を隠していて結局のところ顔付きが判然としない。無精髭を生やしており、全体的な格好からずいぶんな不精者であることのみが把握できる。しかし身長は百九十センチに迫るほどの高さで、体系は鍛えられているので厚く見えて圧力があった。


 背中の異武とは、異能犯罪武力対策局の略称である。左胸には所属を証明する、背中と同様のルドベキアの紋章に三ツ星が光る赤いバッジが留められている。


「こちら武装捜査部所属、れい桜太郎おうたろう。現場に到着した」


 インナーイヤー型インカムで一足先に現場入りしている同僚たちに報告すると、すぐに困惑と驚愕の声が混じった若い男の声が応答した。


「零!? 零さんですか!?」


 二等武装捜査官の牧野まきの誠太せいたの声だ。煩くて首を傾けたが、インカムは耳に取り付けられているので逃げても無駄だった。


「うん、そうそう」

「いや、そうそうじゃなくて、何であなたがここに!? 今日は別任務のはずですよね!?」

「俺の任務は予知外れで無くなったんだ。局に戻ったらすぐに出動命令出されたから来た」


 桜太郎は、横転したトラックの後ろから竜巻の発生源を確認した。スクランブル交差点の中央付近で、二人の男が睨み合っている。二人の周辺には数台の自動車と電柱や道路標識が浮遊しており、さらにその周りを風が渦巻いている。交差点からはすでに人々は撤退しており、混雑による負傷での逃げ遅れや、暴風に避難を妨害されている民間人が点在している。


「だからって、何もあなたが来ることは――」


 牧野が言い募る中、横やりを入れるように桜太郎のインカムに着信が入る。桜太郎が音声受話するよりも早く、桜太郎のインカムは発信者に乗っ取られた。ブチ、と銅線を引き千切ったかのような音が耳に流れ込んだその瞬間、牧野はゴミ箱を渾身の力で殴りつけ、遠慮なく怒鳴り散らした。


「――三等《雑魚》のおっさん武装捜査官になにができる!」


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