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あっち向いてホイ!

作者: 辛口カレー

『あっち向いてホイ』という遊びがある。


まさか知らない人はいないと思うが、生まれ育った地域によっては、その呼び方が異なっていて、意味が通じないという事もあるかも知れないので、一応どういう遊びなのかを補足しておくことにする。


まず二人で向かいあってジャンケンをして、勝った方が「あっち向いて」と言いながら相手の顔を指さす。


次に、勝った方は「ホイッ」と言いながら指で上下左右のいずれかを差し、負けた方は「ホイッ」と言われるタイミングで顔を上下左右のいずれかに向ける。


このとき、相手が指をさした方向と同じ方向に顔を向けてしまったらその人の負けで、指をさした人の勝ちとなる。


指をさした方向と違う方向に顔を向ける事が出来た場合は、初めに戻ってまたジャンケンをする。

以後、決着がつくまでこれを繰り返す。


下手な説明になってしまったが、以上が『あっち向いてホイ』という遊びの概要である。


この遊びの面白いところは、勝負がついた瞬間、勝った人があたかも負けた人を意のままに動かしたように見えることである。


相手が自分の指差した方向と同じ方向を向く。

たったそれだけの事が面白くて、つい笑ってしまう。


僕がまだ小学生の頃、休み時間にクラスの友達と『あっち向いてホイ』で遊んでいた事を思い出す。


この遊びは、日本だけのものなのだろうか。

それとも、同じような遊びが外国にもあるのか。

あるとしたら、いったいどんな掛け声をかけるのだろう。


ま、そんな事どうだっていいんだけど。(笑)


じゃあなんで僕がこんなことを書き始めたのかというと、これがスマホの入力操作(フリック入力)にそっくりだからである。


例えばスマホで『の』と入力する場合、僕は人差し指で『な』をタップしてから指を下方向にスワイプする。

この動作は、あたかも「あっち向いてホイ」と言いながら、指で下を指すようなものではないか。


フリック入力と言えば聞こえはいいが、要は『あっち向いてホイ入力』である。

(こう書くと、いかにもマヌケだが)


そりゃあ僕だって『の』の入力くらいなら素早くできるが、これが『R』だったらどうか。

『PQRS』のボタンに触れた後、どの方向へスワイプすればよいか分からずに指が止まってしまわないだろうか。


そうして迷っていると、やがて上下左右の方向に文字が現れて、『R』は上にスワイプすればよいことが分かる。


そこで指を上に走らせる。

指を置き、ちょっと間を空けてから指を上に動かすところが、ますます『あっち向いてホイ』っぽい。


この傾向は、高齢者において顕著に見られる。

たいていはスマホに目を近づけながら、人差し指で辿々しく『あっち向いてホイ』をしている。


しかしながら、これは高齢者に限った話ではない。


何しろフリック入力の仕様がそうなっているのだ。

人差し指でフリック入力する場合は、誰がやっても、嫌でもそうせざるを得ない。


要するに、フリック入力自体が、『あっち向いてホイ』なのだ。


極論すれば、今や国民の大半が暇を見つけてはスマホの画面を見つめ、夢中になって『あっち向いてホイ』という子供の遊びじみた事をしているわけである。


何とも滑稽ではないか。

(当然、僕もこの中に含まれている)


今日も誰かが電車の中で『あっち向いてホイ入力』をしているのを見かけた。

同類を見つけた気がして、妙に安心する。


ところが慣れた人になると、人差し指だけでスマホの文字入力なんてしない(特に若い女性は)。


彼女たちは両手でスマホを挟むようにして持ち、左右の親指を縦横無尽に滑らせてパパパパッと恐ろしい速さで文字や絵文字を入力している。


たまたま電車の隣に座った若い女性が、長い爪に綺麗なネイルを施した左右の親指を澱みなく動かして文字入力しているのを見たときは、つい感動して見惚れてしまった。


す、(すげ)ぇ。


許されるならその指先と、凄まじい速さで入力されていく文字列をずっと見ていたい。


もはや『あっち向いてホイ入力』とは次元が違う。

これを僕は、『親指マッサージ入力』と名付けよう。


彼女たちのその凄技(すごわざ)は、見ているだけで気持いい。


「ついでに僕の顔もその親指で優しくマッサージして下さい」と、その娘の太ももの上で仰向けに寝転びたくなる衝動に駆られる。


あとは、そうだなぁ……。


できれば両足の付け根の中心あたりを親指で念入りにマッサージしてもらいたい。

代わりに僕が、君の身体のあんな所やこんな所を人差し指でスワイプしてあげるから。


……なぁんて思ったそこのキミ!


実にけしからん! 

この変態が。


僕はそんな事、逆立ちしたって思い付かないぞ。

読んで頂き、ありがとうございました。

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