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マヌルネコの王国!

 最終日は那須どうぶつ王国へ行く。

 昨日と違って出発は早くないので、のんびりと6時半に起きた。支度を済ませ、電車に乗る。電車では那須塩原駅まで行き、そこからはどうぶつ王国のシャトルバスが出ている。バスは予約制で、昨日、アフタヌーンティーを飲んだ後に予約していた。マジ計画性の神。


 那須塩原駅の2階からは左右いっぱいに広がる山々。壁に山系についての説明がある。それによると、左から日光連山、高原山、黒滝連山、那須連山だ。那須どうぶつ王国もあの中のどこかにあるのだろうか。こうして左脈に囲まれた景色を見ると、関東平野の端にいるのだと実感する。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 駅前のバス停でシャトルバスに乗車。標高が上がると、やはりというか、雪が積もっていた。動物王国に到着すると、積もった雪が道路脇に集められていた。雪国は大変だな。入国料を払い、税関を抜けると、うさぎがいた。

 まんまるふわっふわの兎が三匹。白が二匹と、黒が一匹いる。戸塚が喜びそう。なでると今までにないモフモフ力。で、こいつなんて兎?


 兎の種類もわからないままさらに視線を横に向けると、アルパカがいた。アルパカだ。目まっくろ。かわいいとはならないが、感動はした。今まで画面越し、あるいは写真の中でしか見たことがなかった動物たちが今、目の前にいる。素晴らしい、素晴らしいよ。


 猛烈に感動したあとはリスの森へ突入。教室より一回り小さいくらいの面積の小屋に、木々が植えられ、リスたちが縦横無尽に駆け回っている。なんなら私の体にも駆け上がってきた。元気よすぎだろこいつら。人をビビる心とかないんか?

 一方、じっとしているリスもいる。何をしているのかと思えば、くるみをカリカリカリカリ齧っていた。さっきから聞こえてた音はこれだったのか。くるみ推しのロリコンの同僚が見たら泣き叫びそう。

 ここで本来の目的を思い出した。マヌルだ。私はここへ、マヌルネコを見にきたのだ。


 ゲートでもらった地図を確認し、マヌルネコのもとへ。が、迷った。

 ここに来るまで、私はてっきり動物ごとに檻が並んでいるのかと思っていたが、実際にはいくつのも建物が連節し、複雑怪奇な迷路を作り出している。

 いや、まあ、さすがに複雑怪奇な迷路は盛ったけど。それでもゾロ並みに方向音痴な私が迷うには十分だ。

 だがそんな私でも時間をかければなんとかなる。時間をかければ誰でもできると言ったクーガーの兄貴は偉大。10分ほどさまよった末、マヌルネコのうた! で歌われている通りのユニークフェイスを見つけた。ちなみに私はなす動物王国をマヌルネコのうた! で知った。


 マヌルネコ。600万年前から生存している最古の猫。ホモサピエンスが30万年前であることを考えると大先輩だ。それだけ長く生きているということは、生物として優秀なのだろう。

 体毛は通常の猫の十倍以上の密度。超絶爆絶モフモフだ。マヌルのモフ力数は、53万です。


 二匹いるのだが、どちらも微動だにしない。下手に動くと天敵に見つかるからだろうか。狩りをするときだけ、最小限に動く。私もそういう生き方をしたい。最小限の動きだけしていたい。働きたくない。飼育されたい。


 マヌルネコを堪能した後は各コーナーを巡る。

 北極オオカミに中二心をくすぐられ、アムールトラを見て愚地独歩を連想し、スナネコにハートを射抜かれる。

 ぶっちゃけトラ倒すってどれくらい凄いのか想像できなかったが、実際に見てわかった。これ無理だわ、人間が勝てる相手じゃねえわ。何あの二頭筋? 人の足よりゴツいじゃん。元レスリング部のロリコンの同僚の足よりも太い。ロリコンゴリラと寝技勝負したときなんて岩に乗られているのかと思ったくらいだ。それよりもはるかに太い前脚に押さえつけられたらなす術なく殺されるだろう。

 あと、トラは泳げるらしい。アイスエイジでサーベルタイガーが頑張って泳いでたシーンはなんだったのか。まあ、サーベルタイガーは俗称で、トラではないし、なんならひとつの種でもなくでかい牙もった絶滅した肉食動物の総称なので、泳げないやつもいたのかもしれんが。


 食事を挟み、午後からは私のために催されるようなショー、the catsがはじまる。

 なんのイベントなのかはわからないがとりあえず猫がたくさん見られるということだけはわかる。わくわくしながら席につき、はじまるのを待つ。

 司会のお姉さんとの掛け合いののち、猫が飛び出してきた。頭上に渡された通路をあっちこっち走り回る。

 そのあとのショーは名状し難いふわふわモフモフパラダイスだった。しいて言うならにゃーんとやってにゃん、みたいな感じだ。にゃーんにゃん。わかんない? センスねー。


 猫も可愛いのだが、それはそれとして司会のお姉さんだ。トークで観客を盛り上げ、ともすればただのディスりに聞こえる煽り文句も、表情と声のトーンでしっかりと冗談で言ってるんだよと伝えてくる。もうこちらは笑うしかない。猫が予定通りに動かなくてもそれすら演目の一部とする。演技力、胆力、アドリブ。私じゃ絶対できない仕事だ。すげえ。

 あと、猫は匹じゃなくて頭と数えるらしい。司会のお姉さんが「二頭の猫」とか言ってた。これでだれかに知識マウントトークして気持ちよくなろう。


 20分ほどのショーを身終えると、そろそろ帰りの時間が迫って来た。シャトルバスは15時に出る。もうあと1時間しかない。

 お土産を買い(もちろん自分用)、トラやカワウソの説明を聞いて時間ぎりぎりまで粘った後、5分前に出国してバスに乗る。まことに楽しかった。けっこうなお手前でしたという感じだ。昨日、日光を見てけっこうと言う権利を獲得したので積極的に使っていこう。けっこうけっこうこけこっこう。……あ、バードショー見るの忘れてた。


 だがまあ、心残りもまた一興。完璧に満足するより、何かひとつ引っかかることがあってもいいのかもしれない。というのも、昨日の日光で“逆柱(さかさばしら)”というのを見たのだ。

 東照宮入り口の陽明門の造りで、いくつかある柱のうち一本を逆にすることで、魔除けの柱にするというもの。古くには完璧な状態はすぐに魔が差し始めるとされ、立派な建造物ほど意図的に不完全な部分を用意する。逆柱も陽明門の未完成さをあらわしており、倒壊を防ぐのだそうだ。


 完成していなければ衰退もなく、コアメダルも10枚なら何も起こらないが一枚を欠いて9枚にすることで完璧になりたいという欲望が生まれ、グリードとなる。つまり今の私はマジグリードということだ。オーズかもしれない。何を言っているのかわからないと思うが、私にもわからない。とりあえずバードショー見たかった。オーズでもアンクが推しだったし……。帰ったらオーズ見返そう。


 那須塩原駅に到着。電車まで時間があるので、構内を見て回る。御用邸チーズケーキという店があった。そういえばバスに乗っている時、看板が立っていた。有名なのだろうか。

 気になったので買ってみた。明日帰るから食べるなら今日中だが、まあ、いけるだろう。電車に乗り、40分で宇都宮駅に到着。ホテルに戻り、チーズケーキを冷蔵庫に入れるやまた外に出る。


 今晩は餃子だ。初日にも食べたが、今日は別の店に行く。餃子は毎日でも食べられる。むしろ食べたい。

 諸君、私は餃子が好きだ。餃子が大好きだ。

 焼き餃子が好きだ、水餃子が、王将が、日清の冷凍餃子が好きだ、橘田いずみが好きだ。

 いつだったか、ワタモテラジオで聞いた。宇都宮の餃子を食えと。もう何年前、いや十年も経つのだろうか、当時ラジオから流れてきた、餃子の讃美歌。以来、私は宇都宮の餃子に憧れ続けた。

 そして今、私の望んだ餃子が目の前にある! 素晴らしい、素晴らしいよ! 私は今、猛烈に感動している!


 店の名を冠した餃子を食べる。さくりと羽が音を鳴らし、肉汁が溢れ出す。野菜が多い、あっさりとした味。だが物足りないということはなく、肉の旨みとにんにくが舌の上で炸裂する。

 店にタレはなく、酢と醤油とラー油が置いてある。一昨日の店もこのスタイルだったので、宇都宮では共通の様式なのか。小皿の上で好みのタレを錬成し、今度はタレをつけて食べる。美味。


 肉餃子はその名の通りタンパク質を求める胃袋を満足させ、ニンニク餃子は口に入れた瞬間から鼻に鋭い香りが抜けていく。締めはニラ餃子。もちろん、餃子以外のものなど一切頼まない。

 本当はまだまだ食べたいのだが、チーズケーキもあるので腹を開けておく。会計を済まして外に出ると、そういえばクリスマスだったなと思い出す。チーズケーキを買ったのはちょうどよかった。

 だがよくよく考えるとクリスマスは家でたきなの祭壇にケーキを捧げたい。しまった。旅行に来る日まちがった。まあ、今更しょうがない。お正月はたきなと祝おう。


 このあと、フォークがなくて絶望した。アメニティセットに入ってたマドラーで食った。うまかった。

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