表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

【幕間1】

 おばあちゃんが死んで数ヶ月たった。

 親たちは集まると介護だなんだと口々に言ってたけど、90歳を過ぎて重い病気もなく、老衰でひっそり亡くなったのは奇跡だろう。

 そんなおばあちゃんの家のものを整理しろとかお母さんが言われたから、おばあちゃんの家にきていたりする。

 やっぱり…そのままにしておくってできないのね。

 この家は小さい頃は預けられていたから、間取りは覚えているけど…。


「さて、どこから手を入れたらいいのか」


 よく遊んでいた居間からにしよう。

 押し入れを開けて中を見ているが整理されていて、手を入れることがないというか…。


「とりあえず…何があるか見ればいいのかな?」


 故人の遺品を勝手にいじりたくないというか。おばあちゃん見られたら困るのとかないかな。


「うーん。箱の中に何が入っているかメモしよう」


 持ち上がられる箱を押し入れから出してふたを開ける。

 中身を確認してメモに書いたら、戻してとそれを繰り返す。

 おばあちゃん、しっかり整頓していたから確認しやすい。


「これは…細かく編み込んでる。竹細工かな?」


 段ボールとは違い手紙類などの紙が入っている。


「もしかして…これ」


 昔に自分が描いたおばあちゃんの絵。


「残しておいてくれたんだ」


 小さい頃は、この家に預けられていたのでいる時間は長かった。

 私のお母さんは、父親になれない人と思いあまって駆け落ちして自分を産んで戻ってきた。


「自分を預けて働きに出てるの…寂しかったけな」


 大人になると子供を一人で育てるのは大変だってわかるけど、子供の頃は理不尽だと思った。

 なんで一緒にいてくれないんだろうって。

 そんな時、おばあちゃんはずっと一緒にいてくれて…。


「おばあちゃん。どうしてお母さんは一緒にいてくれないの?」

「お母さんも一緒にいいたいのよ。寂しかったら我慢しないで言っていいのよ」

「言ったらお母さん困っちゃうよ」

「困らせなさい。自分が一緒に居られなくてさみしいって、わからせないと」

「いや…それほんとにお母さん困ると思うけど」


 実際、言ったら大泣きされたけど。


「もう私、会社辞めて一緒にいるー!」

「背中に背負って仕事に行きたいし!」

「金が天から降ってこないし!」

「拘束時間長いのわけわかんない! 上司のバカ!」


 最後、上司の悪口になってるし。

 …大人が思ったより大人じゃなかった。


「そうね。あなたもお父さんが仕事に行くときに一緒に行くってだだをこねていたし」

「待って! それ言わないで!!」

「わたしがお買い物に行くときも一人で留守番できないって泣いたしねぇ…」


 えー。年齢によってはちょっとそれは…。

 お母さん…子供が大人になったみたいになっている。


「ありがとう。おばあちゃん。お母さん、私を置いて行くの平気じゃなかったんだね」

「まぁー、一言でも”あなた(子供)のために働いている”なんて、一緒に入れない理由を子供したら二度と家に入れなかったけどね」


 それからおばあちゃんちで帰りを待っている時も寂しさが減っていった。


「うわ! これって…」


 子供の頃に描いた絵や季節の手紙の間に挟んであったのは…。

 友人に進められてプレイした乙女ゲーム。


「このゲーム。ここでよくやってたっけ」


 メインの話より脇役の作り込みがすごかったっけ。


「あー、このキャラ好きだったな。ビジュアルが気に入って」


 ヒロインの攻略相手の婚約者。

 ルートによっては、助演女優賞ものだったりする。

 ライバルになるルートは順当だったし、ヒロインの友人になるルートはそうきたかってなったし、隣国の救世主って途中の仕打ちがひどかったな、世界観を壊すほどの悪役令嬢は見てられなかった。まあ、隠しキャラ出すためなのかなってなったし。


「一番好きだったのが、彼女が女王様になるヒロインのルート」


 ヒロインは幼なじみと一緒になったけど、彼女の婚約者はヒロインが好きなままで…婚約破棄して、別の人と結婚はしたはず…だけど。

 彼女の治める国でヒロインは幼なじみと幸せに暮らしました。…なんだよね。

 攻略キャラの王子には別に婚約者がいたし、そっちも婚約破棄してたはず。

 どういう経緯でなったのかが詳しく作中にはなかったのだけれど、そこは妄想がつきなかった。脇役で少ししか出てこなかった彼女のメイドと平民の友人がいい味出してたな。

 とくにメイドがおばあちゃんに似てるとこがあって好きだったけど。

 悪役令嬢になるとき、どっちも■■■ってたかな。

 あれ? なんか今…。


「気になるから家に持って帰って起動してみよう」


 ゲームは箱に戻さないで、テーブルに置いておいて。

 …さて、続きをしないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ