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運び屋少女の勤務録 〜お困りごとなら帝都人材紹介所にご相談ください!〜  作者: 夏時みどり
第二章 渦巻く陰謀、忍び寄る影
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61.面会(2)

大変お待たせ致しました……orz

明日、第二章完結予定です!



 明かりの少ない薄暗い館内に、カツカツと二人分の足音が反響する。


 帝都第一監獄の最奥部、長い長い回廊を進んだ先に造られた特級犯罪者用の牢獄で、烏丸は自身を見下ろす人影を睨み付けていた。




「……今更なんの用だ? 陥れた相手が落ちぶれる様を笑いにでも来たか?!」




 冷たい鉄格子の向こう側で佇む冬至に向かって、叫ぶように恨み節をぶつける。


 この男の策略に嵌り、あと一歩というところで積年の野望は破れてしまった。それどころか、薄汚い監獄で処刑までの少ない余生を過ごす羽目に陥っている。




 ……なんという屈辱!!!




 烏丸は顔を歪め、鋭い視線にありったけの怨念を込める。しかし、それを向けられた青年の表情が崩れることは無い。


 案内役の看守を下がらせた後も、暫く烏丸を見つめたまま無言を貫いていた冬至だったが、やがて小さく息を吐くと低い声で話し始める。




「……今回のことは私が陥れたのではなく、貴方自身が自らの策に溺れた結果でしょう。笑いに来た訳では無いですが、刑が執行される前に確認しておきたいことがありましてね……」




 そういうと、青年からいつもの飄々とした雰囲気が消え、感情の読めない眼差しが烏丸へと向けられる。




「一連の騒動で貴方は夾竹桃の密輸を計画していましたね。未知の毒を流行らせて帝都を混乱に陥れようとしていた……。


 その夾竹桃ですが、五年前に亡くなった皇嗣殿下の死因に関係しているのではないかという報告が上がっています。


 ……あの夜、夾竹桃を使って皇嗣殿下を殺害したのは貴方ですか……?」




 淡々と述べられた問いかけに、烏丸はフンッと鼻を鳴らした。そして意地悪く口角を吊り上げると、憎き相手を仰ぎ見る。




「お前はまだあの事件を調べていたのか……。クククッ……ご苦労なことだ。主を失った傀儡とは憐れなものだな」




 意趣返しの意味を込めて嫌味を返すが、冬至は反応すること無く、じっと烏丸の答えを待っている。




 成る程……。いつまでも過去の主君が忘れられず、藻掻いているという訳か……。




 皇嗣の乳母兄弟だったこの青年は幼い頃から皇弟と共に育ち、次期皇帝の右腕として活躍を期待されていた。本人も当然そうなるものと疑うことはなかっただろう。


 それ故に、五年前に主君を失い、人が変ったように呆けてしまったという噂を耳にしたことがあった。現在は立ち直っているように見えるが、所詮この男も何かに縋らないと生きていけない人間なのだろう。




「……残念ながら、皇嗣の件に私は関与していない。あの毒は酒場で出会った商人から紹介されて手に入れたものだ。それ以前は夾竹桃の存在すら知らなかった」




 烏丸は薄ら笑いを浮かべ、言い聞かせるように真実を口にする。どうせ罪から逃れることは出来ないのだから、事実を告げて此奴の目的が一切果たされていない現実を突き付けてやろう……。




「そもそも皇嗣が生きていれば、このような騒動を画策することは無かっただろうな……。少々甘ったれた考えを持っていたが、皇弟は人望に篤く、多くの者に君主として望まれる男だった。


 彼が次期皇帝となるのであれば、私は大人しくその臣下として自らの責務を全うしただろう。


 ……側近である貴様がしっかり主人を守っていれば、此度のような事態が起こることは無かったであろうな」




 誠に残念だ……と溜息を吐くと、冬至の眉がピクリと上がる。多少話を盛ってはいるが、皇嗣が皇帝の座を継ぐのなら、盤石な後ろ盾を持つ彼を敵に回そうなどと考えることは無かっただろう。青年が微かに動揺する気配を感じ取って烏丸はほくそ笑む。




「……その商人の特徴は?」



「さぁ……? 男だったと思うが……フードを目深に被っていたからなぁ……」




 硬い声色で問われた言葉に、わざとらしく首を傾げる。今振り返っても、よくあんな怪し過ぎる男と取引をしたものだ思う。


 行きつけの酒場で声を掛けてきた男は、その身を隠すように黒いローブを纏い不審な出立ちをしていた。


 あの時は酒に酔っていたこともあるが、気が大きくなる薬か何かを盛られていたのかもしれない。




「しかしまぁ……残念だったな。私が主の仇だと思っていたのだろう。アテが外れてしまったなぁ!」




 挑発するように告げると、冬至の眉間に深い皺が刻まれた。それを見て多少の溜飲が下がった烏丸は「でもまぁ……」と言葉を続ける。




「私が成し得なかったことを、他の誰が……というのも癪だから、特別に教えてやろう。


 その男の顔は分からんが、一つ覚えていることがある。……ちらりと見えた奴の右(くるぶし)には、確かに蛇の刺青が入っていたよ」




 そう言うと、驚きの表情を浮かべる冬至を眺めて満足そうに笑った。



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