49.勝負服
作戦会議と称した話し合いは夜通し行われ、気付けばカーテンの隙間から朝日が差し込む時間になっていた。昨日から殆ど睡眠をとれていない紬は、鷲尾邸の客室を借りて少しの間休ませて貰う。
いつもの煎餅布団とは全く異なるフカフカのベッドに慣れず、寝付けないままうとうとと微睡んでいると、六時の鐘の音と共に扉がノックされ「失礼します」と複数の侍女が部屋に押し入ってきた。
「……どうされました………えっ??!!」
眠たい目をしばたたかせて身体を起こすと、腕を取られて廊下へと連れ出される。困惑しながらも誘導されるままに長い廊下を進んでいくと、紬の下宿部屋の三倍はあろうかという広い大浴場に行き着いた。
す、すっごい豪華……。
白を基調とした清潔感のある浴場には形の異なる複数の浴槽が配置され、獅子などの動物を模した蛇口から常時温かいお湯が注がれている。
壁面には見事なバラ園の風景が描かれており、その絢爛さに圧倒されて無意識に口が開いていった。
侍女達は呆然と立ち尽くす紬の服を手際良く脱がせると、薔薇の花びらが浮んだ湯船に浸からせる。
「え、ちょ、ちょっと……!! ちょっと待ってください!!」
焦って抵抗する紬の身体を侍女が数人がかりで丁寧に磨き上げていく。他人に風呂の世話をされているという羞恥に耐えられず、なんとか逃げ出そうと身体を捩るが軽くいなされるだけでびくともしない。
……もう、どうにでもなれ……!!!
諦めて思考を停止し、顔を真っ赤に染めて固まっていると、いつの間にバスローブを着せられてタエ婆の私室に連れ込まれていた。
「ふむ……中々似合うではないか。そうしていると良いところの令嬢に見えるぞ」
侍女の手によって中礼服を着せられ、着飾られていく紬を見てタエ婆が満足そうな笑みを浮かべる。されるがままになっている紬だが、これまで触れたこともないような高級な品々を前にして内心肝を冷やしていた。
「わ、私を御前会議に連れていくって……本気で仰っているのですか?!」
落ち着かない状況に追い討ちをかけるような信じがたい事実を告げられ、思わず大きな声をあげてしまった。
動揺して目を白黒させる紬を見て、タエ婆がニヤリと口角を上げる。
「安心しろ、御前会議には殆どの者が側近を連れてくるのじゃ。普段は一人で参加しているが、今回お前を連れて行ったとて咎められることは無い。烏丸の疑惑についてはお前が一番状況を把握しているのだから連れて行って損はないだろう」
「で、でも私平民ですし……れ、礼儀作法とか色々と全く自信がないのですが……」
さも当たり前のような顔をするタエ婆に、恐縮しながら進言すると「問題ない」と首を横に振られた。
「紹介所で客相手の仕事をしているのだから礼儀作法は身に付いておるだろう。普段の仕事ぶりも知っているが、心配する必要はない」
……これは、公爵様のお墨付きを貰えたと喜ぶべきなのかしら……?
何故か楽しそうにしている老婆に言いくるめられたような気もするが……。自分が何を言おうと、御前会議に出席することは決定事項のようだ。
紬は綺麗に身なりを整えられ、普段全くしない化粧を施される自身の顔を鏡越しに見ながら、複雑な表情で小さく溜め息を吐いた。
\お読みいただきありがとうございます!/
次回、いよいよ御前会議に乗り込む予定です!
ただ今週も予定が立て込んでおり、土日更新分の執筆時間を確保できませんでした……。
次話更新は11/1(月)18:00になるかと思います。
度々お待たせしてしまい申し訳ございません。
ご理解の程、どうぞよろしくお願い致します…orz




