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運び屋少女の勤務録 〜お困りごとなら帝都人材紹介所にご相談ください!〜  作者: 夏時みどり
第二章 渦巻く陰謀、忍び寄る影
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18.予期せぬ訃報




 「夾竹桃密輸の件で近衛兵に引き渡した男が、今朝亡くなったそうだ」




 朝礼で冬至から告げられた内容に一同が大きく息をのむ。男が連行されてからまだ五日しか経過しておらず、取り調べの為に拘留されていた筈だ。それが亡くなったとは……一体どういうことなのだろう。皆がやや緊張した面持ちで続きを待つ。




「今朝早くに拘留されている牢の中で倒れているところを発見されたそうよ。検死の結果、毒物を飲んだ形跡があったらしいわ」




 目立った外傷がないことから自殺として処理されるようだと流華が続ける。拘留中に服毒自殺なんて……夾竹桃以外にも珍しい毒を所持していたのだろうか? 紬は微かに震え出した自身の指先をギュッと握り込む。


 


「彼はヤマト商会の契約商人だったんだけど、こちらで独自に調査したところ、第一皇子派の貴族と関わりがあったことが分かったわ。」




 ヤマト商会とは、現代表の手腕で次々と海外諸国との交易を結び、一代で帝国随一の地位を築き上げた大商会である。日用品から嗜好品に至るまで様々な商品を取り揃え、庶民から貴族まで幅広い客層に親しまれている。



 商会の勢力拡大に一役買っているのが、契約商人の存在だ。ヤマト商会は効率的に販路を拡大する為、自社で商人を雇うだけでなく、既に各地で商売をしていた既存の商会や商人と業務委託のような契約を結んでいた。


 契約商人は商談の際にヤマト商会の名前を使うことが許され、更に珍しい異国の商品を優先的に販売できる権利が与えられる。その対価として契約料と売上の一部をロイヤリティとして納めるという仕組みで急速にその規模を拡大させていた。



 捕えらえた商人の男もヤマト商会と契約を交わしていたが、契約内容やロイヤリティの金額に納得がいかず恨みが募っていたと言う。ヤマト商会の名前で毒性のある香木を売り出し、その評判を落としたかったと証言していたようだ。


 ヤマト商会にも近衛兵の調査が入ったが、夾竹桃の入手には関与しておらず、拘束された男が独断で行ったことであると結論づけられたらしい。




「……では男は夾竹桃の香木を第一皇子派の貴族から仕入れたのですか?」




 その入手方法が気になって紬が問いかけると、向かいの席に座っている双子も気になると表情で訴える。流華が「おそらく……」と躊躇いながら口を開いた。




「入手方法についても取り調べが進められていたんだけど、男はのらりくらりと躱すばがりで有力な証言を得られなかったらしいの。近衛隊も手を焼いていたそうよ。


 それもあって独自ルートで調査を進めたところ、彼が帝都に入る数日前に第一皇子派の貴族と接触していたことが分かったの。この貴族が夾竹桃の入手に関係している可能性があると近衛隊に報告して、今日屯所で詳しく話を聞く予定だったんだけど……」




 当人が遺体となって発見されてしまった。更に彼に接触していた第一皇子派の貴族も数日前から行方不明なのだという。




「かなりきな臭い話ですね。」




 一連の話を聞き終わり、忍が低い声で呟いた言葉に紬も静かに同意する。憶測は良くないが、商人の男は第一皇子派に口封じの為に殺されたのではないかという疑念が湧いてしまう。それにしても……




 ここでも後継争いが関わってくるのね……。




 最近、物騒な事件が頻繁に起きていると聞く。動機は第一皇子派と第二皇子派の派閥争いに起因するものが殆どで、互いに牽制し合う状況に痺れを切らした過激派がそろそろ抗争や皇子殺害を企ててもおかしくないのでは……。そのような不敬極まりない噂が紬達の耳にも届くほど、和の国は混乱を極めていた。




「商人に接触していた第一皇子派の貴族から話を聞かないと分からないけど……あのまま依頼を受けていた紹介所ここも密輸の片棒を担いだ罪に問われていたかもしれないわ。その毒が公人の暗殺に使用されたなんてことになったら……」




 流華が起こり得た未来を想像して、忌々しいとばかりに首を振る。確かに、意図せず派閥争いに巻き込まれるばかりか、その罪を着せられ、人材紹介所が取り潰しになっていた可能性もある。




「僕達は今のところ後継争いについては中立の立場を保っていて、そういった依頼は断るようにしているけど、それを良く思わない者も多い。


 最近、好条件で人を集めて切り捨てやすい駒を得ようとする輩が増えているそうだ。皆も仕事を受ける際は今まで以上に注意してくれ」




 冬至の言葉に全員が真剣な表情で頷いた。


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