表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運び屋少女の勤務録 〜お困りごとなら帝都人材紹介所にご相談ください!〜  作者: 夏時みどり
第一章 お困りごとなら帝都人材紹介所にご相談下さい!
13/68

12.裏メニューの任務(8)



 窓から差し込む陽光に照らされ、紬はその眩しさに思わず顔を顰める。日差しから逃れようと身を捩ったところで、いつもと違う柔らかい感触に驚いて飛び起きた。


 慌てて周囲を見渡すと、明らかに高級そうな寝台の上に寝かされていることに気付く。



 腰の辺りから聞こえてくる規則正しい寝息が気になって、恐る恐る掛け布団を捲ってみると、椅子に腰掛けたまま、寝台の上に顔を突っ伏して眠っている忍の頭があった。きっと一晩中様子を見てくれていたのだろう。


 自身の首元に手をやると、痣のある箇所に湿布が貼られており、手足に出来た傷も包帯や消毒が施されている。



 紬がゴソゴソと傷の状態を確認していると、その気配を感じたのか忍が目を覚まし、ガバッと顔を上げた。



「紬!!?? 良かった!!! 貴女半日以上眠ったままだったのよ!」



 勢いよく抱きつかれ、背中の傷がズキズキと痛む。思わず顔が歪んだが、心配を掛けてしまったことを自覚し、甘んじて受け入れる。



「待ってて! すぐに先生を呼んでくる!」



 忍は慌てて立ち上がると、バタバタと大きな足音を立て、部屋を後にした。





*****




「うん、骨に異常はないみたいだね。この薬を塗っていれば痣もそのうち綺麗に消えるだろう。ただ、暫くは安静にしているんだよ」



 忍に腕を引かれ、強引に寝室へと連れて来られた八雲は診察を終えた後、塗り薬を差し出してそう告げた。


 診察の様子を心配そうな表情で見守っていた忍は安堵の溜息を吐き、部屋の外で待機している流華に声を掛ける。




「先生、わざわざご足労いただいてしまって……すみません」




 八雲の指示に頷き、恐縮しながら礼を言うと、変わり者の医師は慌てた様子で、ぶんぶんと両手を振った。



「とんでもない! 紬君には普段凄くお世話になっているんだから、もっと頼って貰いたいぐらいだよ! 診察ついでに家政婦の派遣も頼めたし、本当に気にしないで」



 その薬も君が届けてくれた薬草で作ったんだよと、紬が手にしている塗り薬を指差してウインクする。



「それに……、僕はあんなに余裕のない冬至君を久しぶりに見たよ! 貴重なものを見せて貰っちゃった」



 八雲が腕を組み、ニヤニヤと呟く。その意味が分からず首を傾げていると「まぁ、とにかく!」と流華が手を叩いた。



「傷が残ったらどうしようと心配してたけど、綺麗に治るなら良かったわ。紬、頑張りは評価するけど、もう一人であんな無茶したら駄目よ」


「はい。心配掛けてすみませんでした。」



 流華に諭され、紬は素直に謝罪する。囲まれる前に追手に気付いていたのだから、戻って紫苑達に合流するなり、もっと人通りの多いルートを選ぶなり、選択肢はあったのだ。


 甘い判断の所為で皆に迷惑と心配を掛けてしまったことを反省し、二度としないと心に誓う。



「分かってるならいいのよ。とにかく今は安静にして、早く傷を治すのよ!」



 流華に両手でぐりぐりと頭を撫でられながら、紬は「はい!」と元気よく返事をした。




「……そうそう、あの後ちゃんと紫苑様達が環さんを連れて大審院に告発文書を届けたわよ」



 忍が口を開き、紬が気を失った後のことを説明し始める。紫苑と双子はあの後すぐに環を連れて大審院へと向かった。告発文書は無事に受理されたそうだ。



 審議の結果、告発内容の正当性が認められ、足柄領主である孝治は容疑者として捕らえられた。


 横領罪のみならず、領民に不当労働を強いていたことや、ごろつきを雇って暴力行為を行なっていたことでも立件され、現在は重罪人用の地下牢に収容されているらしい。



 裏付け調査の結果次第だがその罪は重く、国外追放や、処刑が言い渡される可能もあるそうだ。




 「一件落着したように見えるんだけど、足柄孝治に入れ知恵をした人間については謎のままなのよねぇ……」



 流華が神妙な面持ちで呟く。環は「孝治はある日突然羽振りが良くなった」と話していた。その為、誰か硫黄の横流しを支援した人物がいるはずだと踏んでいたが……中々尻尾を掴めないらしい。



「蜥蜴の尻尾切りみたいなものよ。容疑者は浮上するんだけど、なんか用意されているような小物ばかりなのよね……」



「まるで誰かに誘導されてるみたい」と忍が悔しそうに口をへの字に曲げる。この件については、引き続き調査するよう冬至から命じられているらしい。



「でもまぁ、環さんの依頼はこれにて無事完了。紬に挨拶が出来なくて凄く残念がってたわよ? 文書を守って貰ったことを本当に感謝してると伝えてって言われたわ」



 忍の言葉に、紬は依頼主だった生真面目そうな青年の姿を思い返す。自分が関わったことで、彼やその家族、恋人達に平穏な生活が戻るのだと思うと、傷を負った甲斐があるものだ。



「いつか行ってみたいなぁ……」



 彼が命懸けで守ろうとした領地はきっと素敵な場所なのだろう。忍の話を聞きながら、紬はまだ見ぬ風景へと想いを馳せた。


\ お読みいただきありがとうございます!/


ここで第一章完結となります。


すぐに第二章がスタートしますので、

楽しみにお待ち頂ければと思います。

更にいろいろな陰謀に巻き込まれていく予定です!



「面白い」「続きが気になる」と思って頂けましたら、

下記の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価をお願い致します。


執筆の励みになります(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ