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運び屋少女の勤務録 〜お困りごとなら帝都人材紹介所にご相談ください!〜  作者: 夏時みどり
第一章 お困りごとなら帝都人材紹介所にご相談下さい!
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10.裏メニューの任務(6)

本日2話目の更新です!「裏メニューの任務(5)」を

読んでいない方はそちらからお読みください◎



 煙玉三つ分の煙幕が一面に立ち込め、視界が遮られる。刺客達の呻き声や悪態を吐く声で一気に辺りが騒がしくなった。


 源太が開発したゴーグルのお陰で紬の目に煙が染みることは無く、ぼんやりとだが敵の位置を把握することが出来る。



「おい、逃すな! 退路を絶て!」



 目眩しをして早々に逃げるつもりだったが、紬の目的地を察している男達は苦しみながらも大きな身体で進路を塞ぐ。




 人目を避けて路地裏の道を選んだことが裏目に出たか……。仕方ない。



 紬はキャスケット帽の中に忍ばせていた痺れ薬をハンカチに染み込ませ、薄っすらと見える人影を頼りに慎重に刺客達の背後へ回る。その肩に素早く飛び付くと、迷いのない手付きで鼻と口を塞いでいった。



 敵の顔を覆い隠す布を剥ぐのに手間取えば、ひ弱な自分などすぐ捕まってしまうだろう。こんな時の為にと双子に簡単な体術の稽古をつけて貰っていて良かった。


 体術といっても圧倒的にパワー不足なので、こうして相手の視界を奪いでもしないと使い物にならないのだが……。



 体格差が大きく薬を嗅がせることが出来ない相手には、足止め液をぶちまけて動きを止めた。


 高濃度の煙幕と即効性のある痺れ薬が効き、刺客達は次々に地面に膝をつき苦しそうに悶えている。



 よし、あと一人……。



 刺客の中でもひと際体格の良い男が、悪態を尽きながら木刀を振り回している。


 念のために追加した煙玉のお陰で、まだ視界を奪えているようだ。吠えるように悪態を吐く様からは、紬を逃さないという気迫が感じられた。



 あれだけ激しく動かれると、背後から飛びかかるのは難しいな……。



 最後の一つになってしまった足止め液を使うことを決め、紬はジリジリと男との距離を詰めていく。



 今だ……!!!



 全神経を集中させ、力いっぱい足止め液の入った玉を投げつけたが……男に向かって低い放物線を描いたそれはブンブンと振り回されていた木刀に当たり跳ね返されてしまった。ベチャッと非情な音を立て、少し離れた地面で破裂する。



 あ、まずい……。



 そう思った時には紬の華奢な身体は宙に浮き上がっていた。節くれだった大きな手で細い首を掴まれ、持ち上げられている。屈強な男の握力で呼吸器官が圧迫され、息が詰まる。


「離せ」と叫んだつもりだったが、紬の口から出たのはヒューと空気が漏れる音だけだった。



「あの坊主が近衛兵に絡まれた時はどうしたもんかと思ったが……別行動をしてくれて助かったよ。お前の鉄仮面上司がこっそり指示を出しているのを見て告発文書ブツはここにあると確信した」



 男は意地の悪い笑みを浮かべ、空いている方の手で紬の背中に回っている帆布鞄を指さす。紹介所を出た時から既に追っ手が付いていたらしい。




 告発文書これだけは絶対に渡せない……!




 息が出来ない苦しさで、視界が霞み始めたが構わず男を睨む。運び屋の意地にかけて、やすやすと奪われる訳にはいかない。


 紬は力をふり絞って両手で男の腕を掴むと、身体を前後に揺らして勢いを付け、男の顔面に渾身の両足キックをお見舞いした。

 



 渾身の一撃は見事男の顔面に命中し、狼狽えた男は腕の力を弱める。


 蹴りの反動で地面に放り出された紬は、解放された器官から勢い良く入ってくる空気と煙を盛大に吸ってゴホゴホと咽てしまった。



 打ち付けた背中の痛みも相まって思わず涙が零れたが、急いで男へと向き直り最後の煙玉を投げた後、痛む身体を引き摺って距離をとる。




「おいおい、反撃はこれでお終いか?」



 嘲笑うような声が近付いてくる。懸命に足を動かすが、追いつかれるのは時間の問題だろう。



 どうする、どうする、どうする……??!!!



 何か打開策は無いかと必死に周囲を見回すが、倒れている刺客達が持っていた武器は重すぎて紬の腕では使い物にならない。


 最後の煙玉の効き目が切れてしまったら丸腰の紬に勝機はないだろう。



 もっと護身用具を貰っておけば良かったと、心の中で自分の判断の甘さに舌打ちをする。


 出発迄にかき集められた品には限りがあった為、命を狙われている環と彼を警護する紫苑や双子に多くを譲ったのだ。



 止まってくれない咳の所為で視界を奪っているにも関わらず、男がどんどん近付いてくる。


 真っ白だった視界に現れた大きな影に見下ろされ、蛇に睨まれた蛙のように身体が硬直してしまった。



 あぁ、やはり、慣れないことはやるもんじゃない……。



 両手で口を押さえ、無理矢理息を殺しながら紬は祈るようにギュッときつく瞼を閉じた。


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