5.そして公爵令嬢は開放される
パパンはやればできる子(意味深)
私の件は片付いたので次は家のことだね。この辺もきっちりしておかないと後日蒸し返されたりして面倒だからね。
「公爵家は弟が継ぎます。当家に婿は不要になりました。ちなみに妹たちも王家に嫁ぐ気はないみたいですよ。」
お父様が頑張ったおかげで公爵家も子沢山だ。第5夫人までと弟3人に妹22人、弟妹はまだ増えそう。あと5年もすれば妹だけでサッカーの紅白戦ができそうだ。頑張れなでしこ公爵家!
「なんだと!お前の代わりに王家の誰かと政略結婚するために子供を増やしたのではないのか?」
「当初はそんな予定もあったのですが、妹を不幸にしたくはありませんしね。妹の誰かが王家に嫁ぎたいという話をすれば別ですが、どうも妹たちも興味ないようですし・・・・・。」
私が事あるごとに王家には嫁に行かないと言い続けてきたからか、物心つく前から妹たちの中では嫁に行きたくない家ナンバー1の称号を王家は頂いていしまっている。当初は身代わりにする予定だったのに大幅に前提がくるった。洗脳したわけじゃないし私のせいじゃないよー(棒)
「では王女の誰かを次期公爵と婚約させるのはどうかしら?」
王妃様が食い下がってきます。まあ私と第二王子の件はもともと公爵家の跡取りの座を狙うための婚約だったしそうなるか・・・。
「ないですね。弟たちはモテモテですしわざわざ面倒事を抱え込む理由もありませんから。」
公爵家の乗っ取りはもちろん新産業の技術流出とかもにも気をつけないといけないのに、わざわざ敵のスパイを抱え込む必要もない。一国の姫が嫁に来れば侍女や家臣などもある程度ついてくることになるわけで、国の中枢に敵性国家の人間がいるのはあまりよろしくない。
「そうそうこの場をかりてお伝えしておかなければ・・・。当家は寄子と共に独立してこの度新帝国を樹立いたします。」
敵性国家で思い出したけどうちの家は後腐れないように独立します。
「「「「え?」」」」
皆さん驚いていますね。
「だってほら、公爵家は魔王を打倒して魔王領を接収したので当家以外の王国の5倍位の国力になったんですよ。王家に対しては10倍です。我家が王国の貴族でいる意味はもうないかと思って?なので帝国を樹立して一番上の弟が新皇帝になります。」
まだ6歳だから私も含めて色々補佐がいるけどね。サラッと言うと、王太子が前に出てきます。
「聞いてないぞ!魔王打倒ってどういうことだ!」
「先程の真実の鏡で少し触れましたが、精力剤の素材集めに魔王領に行っていたんですけどその際にちょっと魔王城を見かけたので魔法のアイテムとか財宝とかあったらいいなと思って攻略して来たんですよ。もともと魔王国とは交戦中だったし問題はないはずですよ。ついでに魔王も倒してきました。」
「精力剤のついでで倒される魔王ェ・・・・」
魔王軍幹部の睾丸なんかも集めてきた関係で向こうに行くと怯えられて女帝扱いだ。魔王軍の全面降伏後きちんと魔王城にあったエリクサーで直してやったんだから恨まないでほしい。正々堂々の玉取ったるでだったわけだし・・・。
「そういうことで公爵家は帝室として再出発です。王家との婚姻は必要ありません。」
旧魔王領はもとの公爵領の10倍くらいの面積の土地と30くらいの部族がいるから妹たちは多分そこに嫁に行くはず。一番上の弟は元公爵領を中心に帝室として皇帝直轄領。二番目と三番目は新公爵家を立家。旧魔王軍重鎮3部族の長が侯爵家として6家で選帝侯になる。まあ選帝侯と言っても皇太子や皇位継承権の順番を決めるくらいだけどね。侯爵家の跡継ぎは割とイケメンだったので妹の誰かが嫁に行くだろう。
私は面倒だしエログッズの利益の一部をもらっているので財産もいっぱいあるから政略結婚に魅力を感じない。予定通り修道院に行って放蕩三昧だ。
「そういうことならますます王家との婚約を中止させるわけには行かない。お主と第二王子との婚約は諦めるが、祖父の代で交わした孫同士の婚約は有効のはずだ。もしこれを違えるということであれば貴族社会ひいては周辺国家との関係に罅が入ることになるぞ。我が王家は父上の頑張りで婚姻外交で周辺の国々との結びつきも強いからな。いくら『公爵家』の国力が上がろうと征服したばかりの領地で対応できるかな?」
王太子がここぞとばかりに食いついてきますね。わざわざ『新帝国』を承認しないというあたり上から押さえつける気のようです。
「わかりました。」
「そうか・・・。では誰と婚約するのかを・・・」
「いえ王国が我が家に喧嘩を売っているということがわかったと言ったのです。そういうことならばこちらもそれなりの対応をするまで。」
よろしいならば戦争だ。
「そうか残念だ。戦争かな?しかし大義名分のない戦を仕掛けるならいくらお主の武力が優れていようと周辺国すべてが敵に回ることになるぞ?」
「いいえ。王国が外交力でくるなら我が方は経済力で対抗するまで。今後帝国で生産する精力剤は禁輸といたします。」
「え?それが何だと言うんだ?」
王太子はまだ若いから影響は少ないかな?
「今まで公爵家として王族や大貴族を中心に50人分の精力剤の販売を行ってまいりました。国王は最近側妃を二人も増やされ六人になったとか。それに王妃様もアラフォーながらまだまだ現役。大貴族の方々もそれぞれ側室を増やされているとか。」
ちなみに精力剤やエロ下着は私が差配する公爵家資本の商会の直接取引だ。シモの情報はすべて私のところに集まっているのだよ。引退してたらエロ下着いらないもんね。
「夜の訪れが週1日から月1日に減り、欲求不満が溜まったことで起こる嫁同士の争い。手を付けるだけつけて放置することで起こる実家からの突き上げ。そして始まる正妻戦争。『出す物出せや!』と襲われる殿方達。息子同士も妃の派閥に分かれて争いが起こりそして始まる家庭崩壊。見ものですわね。」
この世界は魔法があるため、女性がいいなりということはない。特に武家の娘とかは見た目細くても身体強化と寝技レベルが高ければオリンピック柔道代表クラスには寝室限定でなれるのである。
「きっきさま!卑怯だとは思わないのか?」
王太子もだいぶ状況が飲み込めてきたようです。彼も正妃のほかに側妃二人、そのほかに年若い婚約者が三人ほどいたはず。くくく・・・いつまで元気でいられるかな?
「全く思いませんね。子供が出来なくて寄親になんとか精力剤の融通をと頼み込んでいる下級貴族もいるとか・・・。私の一番下の妹と誰か婚約させても結婚するまで15年。それまで無事でいられるといいですわね。」
王家は5年前から精力剤漬けだ。王国貴族も2年前からかなりの量が流通している。もはやこの蟻地獄から抜け出すには世代交代を待たなければならない。材料は魔王国が帝国に組み込まれた以上出荷しない。王国内のダンジョンは少なくすべての材料は揃わない。圧倒的ではないか!わが帝国は!立てよ息子たち!精力剤なんて飾りですよ。年寄り達にはわからんのです!って感じで頑張ればいいんじゃないかな?
「くそっ・・。いい気になるなよ!」
王太子の発言も負け犬の遠吠えですね。
「小便は済ませたか? カミさんにお祈りは? 寝室の隅でガタガタ震えて嫁たちに襲われる心の準備はOK?」
ふはははは!一度言ってみたかったのよね。息子たちを人質にした以上我が方の勝ちは揺るがないのだよ。王太子に子供はいないけどね。
「王太子。もうおやめなさい。我々の負けです。いままで王家は奥向のことがうまく言っていたから外に手を出す余力があったのです。今の状態で『新帝国』の協力がなくなれば王家も国内貴族も大混乱に陥ります。」
流石に王妃様は理解が早い。まあ自分の性欲のこともあるし、そうだからこそ大変なことになるのも理解できるのだろうけどね。
「母上・・・・・。」
「ではご理解いただけたところで両家の婚姻の約束は双方合意のもとで破棄。精力剤の提供は5分の1にするということにしますわね。」
「なんだと!」
「ちゃらになったなら提供する量は今まで通りでは?」
「全然足りぬぞ!もっと増産を!」
集まっていた貴族などからも声が上がりますがそうは問屋が卸さない。もともとキング種を使うので迷宮産といっても材料の調達も大変なのだ。それに王家のように嫁を増やしまくったところはともかく懐妊中は使わないものだしうまくやりくりすればいいだけの話だ。
「王国の婚姻外交がうまく行き過ぎても良くないようですし戦略物資ですからね。周辺国にもうまく提供して我が国の外交に役立てた方が良さそうですので・・・。気に入らないのなら禁輸です。別に販売先はいくらでもございますので。それとも精力剤を売らないということを大義名分にして我が国に戦争を仕掛けますか?」
1対1での戦争なら負けることはないからね。散々圧力をかけてきて事実上ケンカを売られてきたのだ。これでも優しい方だと思う。
「「「「大変申し訳ありませんでした。」」」」
流石にこれ以上は無理だと思ったのか、そう言って貴族から王族まですべて土下座してきた。
ふはははは!王国が精力剤の前にひれ伏しておるわ!よく考えるとゴブリンとオークの睾丸にひれ伏しているんだよねこれ。うぷぷぷぷ。
「そうそう私は貴族や王族との結婚は考えておりませんし色々お騒がせしたので修道院に行きます。釣書とかは送ってこないでくださいね。では皆様。ごきげんよう。」
そういうわけで問題はすべて解決したかな。妹たちも守れたし、無事エンドロールが流れている。お姉ちゃん頑張ったよ。あとはお気楽平民スローライフに邁進するのみだ。
その後私は修道院に行って影の権力者?ハイ・プリーステスとして院政を敷いていたけど2年位色々調整して各地の代官と弟たちの傅役が決まったあたりでお父様に権力を返還した。帝位には弟がついているけどまだまだ若いし、魔王領の住人は私の影を見ているからね。お父様には大人として後見人になってもらわないといけない。かと言って全権を任せると変に言質を取られ面倒事を起こしそうで怖いし摂政ではなく相談役程度の状況においておくのがいいと思う。
精力剤以外のことは部下だけで回るようにしておいたから不都合はない。精力剤は配合を記したメモを金庫に封印。私が死んだら開くようになっている。それまでは製造工程は部外秘。まあキング種やブラッディバイパーなどはSクラスの魔物だから材料を集めるのも困難で知っていれば簡単に作れるというものでもないけどね。そんな感じで帝室からは除籍となりとりあえずわたしは政治の表舞台からは降りることに成功した。
そして婚約拒否から5年後、まだまだ帝国の裏方として働いていた私は美味しい蜂蜜酒につられて還俗しとある養蜂家のところに嫁に行った。私からは嫁入り道具と持参金代わりにチーズとワインあとちょっとしたものを持っていく。蜜蜂の天敵の熊くらい楽勝で倒せるので割と大事にされている。平民の嫁入りなんてそんなもんだ。大切なのは労働力。私の場合は魔法で大抵なんとかなる。
お母様たちからは
「精力剤はいらないの?」
と聞かれたので
「ゴブリンやオークの睾丸を飲んでる人とキスをするのはちょっと」
と言ったら微妙な顔をされた。材料について軽く話した事があって驚かれたけど、お母様たちはあれなしではもう生きられない体になっているからいまさらやめられないでしょう。私は旦那1人に嫁1人ならそんなのいらないし、家の存続とか関係ないから子供も絶対じゃないしね。安心して。お母様たちの尊い犠牲は忘れないわ。
結局謎知識もあって色々やったけど考え方が根本的に違いすぎて私は貴族社会には向かなかったのだろうと思う。両親は頼りないけどそれも含めて家族は好きだから色々今後も手を出すことになるだろう。
とりあえず生き残って家族も幸せだからハッピーエンドかな。
あとはゴブリンキングとオークキングが絶滅しないことを祈るのみだ。迷宮が攻略されるとリポップしなくなるから人口減少社会を迎えそう。最終階層前にガーディアンでも設置するかな。なんだかんだと私は平民になっても政治的なことで色々動かないといけないさだめにあるようだ。むせる。
世界の強制力なのだろうか?
そう思いながら今日も元気に私は平民スローライフを送っています。
元公爵令嬢「酒とつまみの調達は任せろ。グビグビ」
養蜂家「やめて!それ出荷用だから><」