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悲しい過去にさよならを   作者: Maromiru
ひとつの貝に願いを託して
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ひとつの貝に願いを託して pixivにも投稿しています

史実に基づいた幼い恋の物語。

生まれ変わった2人は今度は幸せになれるのか?

pixivにも投稿しています

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赤、赤、赤ー

炎の色が夜空にうつる。

馬の雄叫び、人の怒号。

あたしの記憶はここで途切れる。

いったい、どこのドラマで見たのかしらね。

時代劇と思うんだけど、なんかちょっと違うんだ。


ほら再放送であるよね。

水戸のおじーちゃんが最後に豪快に笑って終わりのやつとか、暴れん坊なお殿様が成敗のセリフともに立ち回りを終わらせるとかそんなの。

そんな勧善懲悪なめでたしめでたしの物語じゃない。


もっとずっと生々しい。

松明の爆ぜる音や匂いまでしてきそうな生々しさ。大河ドラマは見ないのに。


そんな悪夢を5月になるころ毎年のように見る。


世間一般ではGW最終日。

あたしも友達と買い物に出かける。

お母さん、おこづかいをねだるあたしに「GW前もボーナスの支給があればいいのにー」って嘆いてみせた。

そうだよね、夏休みや冬休みはボーナスという臨時収入がある。


けど知ってるぞ。お母さん、嘆くフリだけでしっかりその分貯めてること。

うちの家計は普段はかたい財布のひもで締められてます……その分こういう時は緩くなる。


買い物を楽しんだあたしとつゆりちゃん、二人でファーストフード店で食事を取る。

その時、ドリンクが倒れて、有名進学校の制服を着た男子にかかった。


茶色のブレザーに着いたコーラの染み。

どうしよう、制服だものね。明日も着るはず。


「明日も着ますよね、今からでもクリーニング間に合いますか?クリーニング代払います!!」


焦るあたしたちに彼はのほほんと笑って


「いーよぉーどうせクリーニング出す予定だったから。目立たないだけで、これ結構汚れてんの」

ほんとにのほほーと答える。

なんか脱力感のある人だな。


「じゃせめてクリーニング代、払わせてください!!」

すると彼は、あたしたちを見て

「ナンパされていい?おごってよ、コーラ」

「えっあっは、はい……」

こうしてあたしたちはその男の子をナンパしててしまった……


「吉高、どうしたー」

どうやらその子の連れらしい男子がもう一人。

「女の子にナンパされてんの。俺にカーラ奢ってくれるって」

嬉しそうに笑う。


「お前がナンパー?まさか、また人様に迷惑を……」

するとお友達、倒れたドリンクと彼のブレザーを見て苦笑してみせた。


「なるほど、ナンパね……そりゃーされるわ。うん、やっちまうわな」


あたし納得する、こういう性格なんだ。そして

「俺にも奢ってー」

「あ、俺からもお願いする」

彼は頭を下げてみせ、あたしたち

連れの方までもナンパしてしまいました。


ナンパしたのか、されたのか、なんだかんだで意気投合しちゃったあたしたち、LINEの交換をしてしまいました。


特につゆりちゃんとお友達と名乗ったった智則くん、いい感じだったみたいで、友達以上恋人未満の関係だ。


だから、あたしと吉高くんといっしょに「遊びにいこうよ!」と誘われる。嫌じゃないけど、ううん、嫌じゃないって言いながら、なんかやっぱり「いや」なんだ。


だって

あの二人に会ってからあたしあの夢にうなされる。

はっきり覚えてない日もあるけど、寝起きは最悪。ここ最近すっきり起きれたためしがない。


あたし、男の子と付きあうの怖いのかな?

少なくともあの二人に会うのは怖い・・・


放課後の教室でそんなあたしにつゆりちゃん、何を不審に思ったのか、


「小秋、私もなにか悩んでる?彼のこと嫌い?」

なんて爆弾投下してきた。

「嫌いなんて言ってないよ。ただ……」

あたし言葉を濁す……つゆりちゃんのようにハッキリ言えない自分が嫌だなと思う。


「嫌いじゃないけど、好きじゃないってことかぁ。珍しいね。

小秋が他の人のこと❨あたしじゃなくてもはっきりわかる❩くらいに嫌いになるって」


「つゆりちゃん以外にバレてるって智則くん?二人とも?」


「うんにゃ、まだ智則くんだけ」


つゆりちゃん、そう答えてポッキーをカリカリとかじる。

そういうとこだぞ、つゆりちゃん、気は強いけど、リスみたいで可愛いって言われるの。


あたしと正反対。臆病で引っ込み思案なあたし。先頭切って走っていくつゆりちゃん。そんなつゆりちゃんにフーフー言って着いてくのがあたしには精一杯。


ポッキーを食べ終わると


「小秋には申し訳ないけどね、あたし智則くんと付き合うことになりました〜

平日はともかく土日祝日は今までのように遊べないって思って〜」


ごめん、と両手を合わせ頭を下げるつゆりちゃん。親友に恋人ができたのは嬉しいけど、今までのように遊べないのは正直言ってさみしい。


でもまぁいいや。週末は図書館でも行くことにしよ。つゆりちゃんと仲良くなる前はろくに友達いなかったし。


「小秋〜ひとつ聞いていい?」

「ん?なあに?」

「理由あるよね?ワケもなく人嫌いになるわけ無いもん。少なくともあたしの知ってる小秋はそんな子じゃない。超がつくほどお人好し」


そう言って、あたしにぎゅうぎゅう抱きついてきた。


「白状しろ〜今なら情をかけてやる」


心配されてる、その事実が嬉しくて涙が出てくる。

「夢見るの……怖い夢。二人に会ってから回数増えて」


「前言ってたヤツ?時代劇風の?」

あたし、コクリとうなづく。涙が止まらない。

「吉高くんのこと嫌いじゃない。むしろ好きよ。好きなんだと思う。でも怖くて怖くて……」


「会ってみれば?」

「つゆりちゃん……?」

「会っても、会わなくても怖い夢見るんでしょ?なら会った方が得じゃない?」


そう提案してきた。

つゆりちゃん、いつもあたしの背中押してくれる。

ありがとう……大好きだよ。

でもさすがのあたしも照れるから言わないけどね!!


赤、赤、赤……

あぁ、あたしまたあの夢見てる。

男の子を必死にかばっている。

ううん、誰からか逃がそうとしている。


でも、あたし知ってる。

この男の子、殺されちゃう。まだ若い、ううん、幼いといった方が早そう。多分10歳前後。

でも、この男の子を逃がそうとしてるあたし、もっと幼い。小学校の1年生くらい。


でもわかる。あたしこの男の子のこと好きだった。

そして彼も私こと好きでいてくれている。こういうの相思相愛って言うんだろう。

あたしたち、ままごとみたいな恋してた。それでもあたしたちは真剣だった……


どうして……

あたし、誰かに聞いてる。なじってる。

どうして彼を殺さなきゃならならないのって

でも、答えをくれない男の人。

あたしを見る目が辛そうな男の人。

この人、彼を殺さなきゃならないの辛いんだ。あたしのため、あたしが彼を好きなこと知ってて、それでも彼に生きてもらうのは困るから。


目覚まし時計の音がして目が覚めた。

今日は吉高くんに会う日。

夢が変わっていた。もう怖くはないけど悲しい。夢見て泣くなんて初めて。


なんだかとても吉高くんに会いたい……


前世の運命とかがあるのだとしても

あの男の子と吉高くん、別人だったらいいな……


あたし、泣いてる……

あの夢のあとだ。

「あたし」は両親になぐさめらてる。

たぶん、両親であろう人。

もう、「あたし」にとっては悲しいくらいにどうでもいい人。

大好きだった。父様と母様。

でも今はどうでもいい。「よしたか」様が大事……


父様、父様、どうして「よしたか」様を殺したの……

派閥争いに近いのかしら

父様にとって「よしたか」様のお父様「木曾義仲」様は居てもらっては困る方なのね?


「よしたか」様は「あたしの許婚」と言う名の人質。

二人の仲が悪化したから「よしたか」様も敵なのね。生きてもらってもらっては困る、その方の嫡男。

「あたし」はそれを理解している。でも、納得いかなくて父様「源頼朝」を憎んでる。


ねぇ父様、どうして「よしたか」様に手をかけたの……

逃げたの

逃げようとしたの

どうして、そのまま見逃してくれなかったの……


泣きながら目が覚めた。

「よしたか」様、は吉高くん

「あたし」は、あたし。

一番年上の姫様って意味の大姫って呼ばれてた。


あぁ……あれは前世のあたしたち……



それから何回か吉高くんに会った。

吉高くんはあたしたちのこと思い出してもはないみたい。


あたし「よしたか」様が好きだから

吉高くんのこと好きなの?

それとも吉高くんそのもの?

分からない。

どうしたら良いか分からない…


その日は梅雨明け前の蒸し暑い日でどしゃ降りだったから水族館に行った。

水槽の中をペンギンが泳いでいく。


「鳥みたいだよねぇ〜」

吉高くんがあたしに笑いかける。

うん、水の中のペンギン。泳ぐっていうよりは水の中を飛んでいくって表現の方が正しそう。


「俺さぁ、自由になりたかったんだよね」

いつになく寂しそうな吉高くん。

こんな顔もするんだ。

「変な話なんだけどね、夢の中で俺さぁ武士なんだ。武士っていっても10歳かそこらなんだけど。人質でさ、自由になりたいって思ってた」


吉高くん、遠い目してる。

吉高くん、吉高くん。それ、あたしの夢と同じなの!!

吉高くんは「よしたか」様の記憶があるの?!


多分青い顔をしていたであろうあたし。

吉高くん、何も言わずにあたしを家まで送っていってくれた。


それから

あたし、吉高くんに会えないでいる。

自分で自分が分からない。


あたしが好きなのは吉高くん?「よしたか」様?


わからなくて、でも切なくて涙が止まらない。

吉高くんからのLINEも既読スルーだ。


携帯がなる。誰から?

見れば相手は吉高くんだった。


「俺のこと嫌いでいいから。俺の話だけ聞いてくれると嬉しいんだけど、いいかな?」

「聞くだけでいいの……」

「うん、俺さぁ自由になりたいって言ったよね。でも自由でなくても良かったんだ。俺には【大姫】がいたから…許婚だったんだ。俺はその子が好きだった……」


でもね、と吉高くん続ける。

「今はもっと好きな子がいる。大姫はもういない。俺の好きなのは……ごめん、LINEじゃ言えない」


そう言って電話を切った。


吉高くん、期待していい?

その大姫はあたしのことだったって

そして今のあたしを好きだって

自惚れていいの!!


あたしはもう「よしたか」様を忘れて

吉高くんを好きでいいのかな……


あたし折り返し電話をかける。

「会いたい、会いたいの!!

海で、海でなきゃ意味がないの!!」

あたしはそう叫んだ。

そうあたしたちは海で会わなきゃいけない。


義高と大姫がいっしょに遊んだのは海辺だから。二人と決別するには海でなきゃいけない。


家を飛び出して海まで自転車でかけていく。

会った瞬間、

あたし、もうたまらず彼の胸に飛び込んだ。

吉高くん。吉高くん。吉高くん……


好きよ。世界でいっとう好き。

今まで素直になれなかったのが悔しい。

彼のシャツを握る手が汗ばむ。

額もうっすらと汗ばみ体が火照る。

夏真っ盛り・・・


そして、あたし気づく。浜辺で何青春してんだぁー

そんなあたしを後目に吉高くん、一つ巻貝拾う。


「お願いして海に流そう?

悪いこと全部流れていくように、ね?

昔、海で義高と大姫として遊んだ記憶と一緒に。今の俺たちにはもう関係ないから」


うわっうわっうわぁー

天然だったよ。吉高くん。

しかも、本物の・・・忘れてた。

なんでそんなこと平気で言えちゃうのよ。

困る。すごく困る。

だって・・・ますます好きになっちゃうじゃない!!


「俺、小秋ちゃんが好きだから。離れたくない」

あ、わんこの目。しかもこれは大型犬だ。

でもね、そんな目しなくたって

あたしも離れたくない。


吉高くんがやんわりと笑う。


「今度は絶対、 幸せになろうね。俺たち」


そうよね……吉高くんも知ってて苦しんでた。

うん、今度は幸せになろうね。あたしたち……



読んで下さりありがとうございました。

大姫と木曾義高。

興味を持っていただけると幸いに存じます。

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