北の洋館での戦闘
冒険者ギルドを出発して北の洋館に向かった。急いでいるからあんまり話せないが、ザックさんと少しお話した。
「ザックさん、少し聞いてもいいですか?」
「ん? どうした?」
「あの、北の洋館ってどんな所なのですか?」
「あぁ、北の洋館はな、洋館だけどダンジョンなんだ」
「えぇー! ダンジョンなんですか?! 洋館なのに不思議ですね……」
「しかも洋館には、ゾンビとかの不死系の魔物しかいないんだ。だからあんまり人気がなくて、たまに倒しに行かないと溢れるんだ。今回はティリスの街に行っていたからちょっと遅くなっちまってな。多分、それで溢れたんだとは思うのだが……」
「そうなのですね。教えてくれてありがとうございます」
不死系ばかりで洋館って……お化け屋敷だよね、完全に……。確かにあんまり行きたくない、怖いし。
今はひぃろ達も他の冒険者達もいるからいいけれど、1人だったら近づきたくない。突然出てこられるのは本当に苦手だ。
範囲攻撃を考えていたけれど、雨みたいに降らせたらどうかな。人に当たったら回復、魔物に当たったらダメージを当たえる。そうしたら他の冒険者達の回復をしながら戦えるんじゃないかな。
よし、危なかったらこれを使おう! 良い感じの魔法を思いついて良かった。
30分ほどしてゾンビとかが出てくるようになった。やっぱり洋館から溢れ出しているみたいだ。アルスさんは大丈夫だろうか。
ギルマスさんが討伐開始の号令を掛けたので、私は全員にシールドを張って先に進んだ。
「ひぃろ、ベリー行こう! ひぃろはアルスさんの反応を見つけたら教えてね。そっちに行こう!」
『分かったくま!』
『行くぴょん!』
『ハル、あっちだくま!』
「よし、行こう!」
「待ってくれ、ハルはアルスの所へ向かうんだよな? 俺も連れて行ってくれるか?」
「はい、ひぃろがアルスさんの場所を確認出来たので、今から向かうつもりなので一緒に行きましょう」
さすがに溢れているだけあって、そこら中にゾンビやスケルトンやグールがいる。ザックさんと倒しながら進む。
『ホーリーアタック!』
どっしーん!!
「えぇ!?」
まさかのベリーの体当たり!? 確かにスキル名が、ホーリーアタックだけれども…魔法じゃないのね。聖属性体当たりなのか……、ウサギタイプだし、瞬発力が強い…のかな?
かなりびっくりさせられたベリーの体当たりだけど、気を取り直して倒して行こうかな。今もどっしんどっしん体当たりしている。
ザックさんとベリーが強くて、私とひぃろはポカーンとしている状態だった。手を出す必要性がない程に2人が強い、強すぎる。やっぱりB級冒険者って強いんだなと納得した。
それについていっているベリーも凄いと思う。今まで魔物に突撃する事がなかったから、本当にびっくりだ。もしかしたら突撃したかったのかな、そうしたら悪い事しちゃったな。好きにしていいよって言ってあげないとだね。
ほとんど攻撃をしていないのに、すっかり辺りの魔物が減っている。早くアルスさんを助けに行こう。
「ひぃろ、アルスさんの所に急ごう」
『分かったくま』
「2人とも! そろそろアルスさんの方に行きましょう!」
「おう! そうだった、ちょっと忘れてたぜ」
「忘れないで下さい!」
「ベリーと一緒に戦うのが楽しくてすっかりな」
と笑っていたけれど、ベリーも楽しそうだ。
「ベリーも頑張っているね。強くて恰好良いね、楽しそうで良かったよ」
『任せてぴょん!』
「ひぃろ、アルスさんの方に向かおう。誘導して貰って良いかな? 前方の魔物は私が後ろから倒すから大丈夫だからね」
『分かったくま!』
ひぃろに続いて進んで行く。ひぃろの前方にいる魔物は後ろから私が魔法のホーリーアローで倒す。両サイドはザックさんとベリーが倒してくれる。これでアルスさんの所まで無事に着けそうだ。
『あそこくま!』
見つけた途端に、ザックさんとベリーの倒す速度が更に上がった。どんだけ強いの、この2人?
ホーリーレイン使おうと思ったのに、もうすでにだいぶ減っている。まずはアルスさんを回復しよう。ひぃろは少し遠くの敵の足止めをしてくれている。
「パーフェクトヒール!」
こちらに気が付いたアルスさんがホッとした顔をしていた。
「ザック、遅いっ! しかもなんでハルがいるんだ。危ないだろう!」
「いやいや、ハルちゃんこれでも黄色カードだぜ。それに獣魔がめちゃくちゃ強くて恰好良かったんだぞ!」
「ハル、悪いな。大丈夫だったか? それとヒールしてくれて助かった、ありがとう」
「はい、ザックさんとベリーが強すぎて、私のやる事がなかったくらいでした」
『ぼくもくま』
「そうなのか、ありがとうな。ハルも強いなら、このまま殲滅してしまおうか」
「はい、ぜひご一緒させて下さい」
『がんばるくま』
『任せてぴょん!』
まだまだ溢れている魔物が沢山いるから倒していく。ここは特に素材も取れず、討伐記録カードだけ出るみたい。なので今回はカードも拾わずそのままにしていくようだ。カードも拾わなければそのまま消えてしまうらしい。それなら安心だ。ゴミを捨てているみたいで気が引けたのだ。
どんどん倒しながら進むと、他の冒険者達とも合流出来た。みんな連携も出来てすごく強い。私は連携とか出来ないので、後方支援に回った。ベリーは冒険者達とも積極的に連携してアタックしていっている。
私とひぃろは着いて行っただけな感じだけれども、ボス部屋に着いた。ボス部屋はかなり禍々しい感じを受ける。アルスさんがみんなに言う。
「ボス部屋も溢れているはずだ! 気を抜かず戦うぞ!」
「「「「おー!!!」」」
さすがアルスさんだ、煽るのが上手い。連帯感が半端ない。私もボス部屋だから気を引き締めると、全員にシールドを掛けなおす。
「入るぞ!」
ボス部屋の扉を開けると、中は凄かった。みっしりゾンビとグールとスケルトンとレイスがいた。これにボスがいるはずだけど、私には見えない。
あまりの密集具合に、みんなの時が一瞬止まった。
「こ、これはやばすぎだろう!?」
私も唖然としたけれど、これはやばすぎる! と思いホーリーレインを発動する。
「ホーリーレイン!!」
癒しの雨が降り、ゾンビ達を倒していく。きちんと効いて良かった……これで少し戦える状態に持っていけるかな。
そう、戦える状況になると思っていた。思っていたのだけど、なんだか全部倒したみたい……?
「おい、ハル。あれだけいたのに1発か?!」
「おいおい、ハル。そんなに強いのか!」
アルスさんとザックさんに突っ込まれた。他の人達はまだ茫然としていた。私もびっくりだよ?
「え~っと……、もしかしてボスがいなかったとか?」
「いや、ばっちりいたぞ」
アルスさんに突っ込まれた。
「まさか全部倒すとは思わなくって……その……」
オロオロしていたらアルスさんに頭を撫でられた。
「凄い事なんだから気にするな。あの数はさすがにやばかったからな、助かった。ハル、ありがとうな」
アルスさんに優しい笑顔で頭を撫でながら慰められた。確かに、全員怪我もなく帰れそうで良かった。
「ハル、ボスの戦利品だけ持ってくれば良いと思うぞ」
「はい。って私が持ってくるのですか?」
「当たり前だろう。ハルが倒したんだからハルのだ」
「いやいや、みんないるんだからみんなのですよ!」
「俺ら何もしてないから気にするな」
「そうそう、貰っておけばいいさ」
「は、はい。じゃぁ、ありがたく貰いますね」
ボスは事前情報では、レイスだったはず。ドロップ品は魔石と宝箱だった。何が入っているのだろう。開けてみたら3cm幅くらいのバングルだった。後で鑑定してみよう。今はみんなの所へ戻ろう。
「お待たせしました」
「宝箱何が出たんだ?」
「バングルでした」
「そうか、良かったな」
「はい、ありがとうございました」
「よし、全員いるな? ギルドに帰るぞ! まだ残りがいるかもしれないから気を抜きすぎるなよ」
「「「おー」」」
さすがに帰りは雰囲気が明るかった。誰も欠けず、怪我もなく帰れるから本当に良かった。
いつも通り、私の前にはひぃろとベリーがぽよんぽよん跳ねている。
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今日はまさかのベリー大活躍でした。明日はブレストの街へ帰還します
楽しんで頂けたら嬉しいです




