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夏の甲子園予選1週間前、俺たち野球部は早めの中間テストを受けさせてもらって野球に時間を当てさせてもらっている。
ここに至ってようやく筋トレ基礎トレの時間を少し減らして毎日の投球練習回数を増やすことになった。
「筋肉や体幹が鍛えられて体を使う感覚がズレているはずだからそれを調整するために投げ込むぞ。」
とは良二の言だ。俺もその通りだと思ったしやはり試合前の投げ込みは嬉しいので疲れを残さない程度で最後の5日間は投げ込みをしていた。1日は休養で次の日に試合だ。
良二の言う通り見た目でわかるほどに筋肉の厚みが増えた。ような気がする。投げてみるといつもより球が走っている。だが、コントロールが全然定まらない。かなり質の悪い荒れて球になっているのがよくわかる。
「やばい、どうしよう。全然コントロールが効かないんだが。」
「それはそうだろう。そのズレを治すために必要なのは今の自分がどんな球をどのくらいの力で投げ込めるかを知ることだ。ストレートでいい思いっきり腕を振るんだ。筋肉がついた分フォームも今まで以上にしっかりと意識をしてストレートを投げてみろ。」
言われた通り横をむき片足で立ち体重を乗せて倒れ込むようにマウンドからキャッチャー側に身体を沈み込ませる。そして横から正面に、足から腕に、指から指へと体の捻りを伝えるイメージで指先からボールをギリギリまで持ち前に投げる。
パァッン!
気持ちのいい真っ直ぐが良二のミットに収まる。今回の一球がたまたまでないように何度も投げ込んでいく。投げ込むうちに身体が投球を思い出したかのようにどんどんと最適化して行く。
「よし!今日はこれで終わりだ!明日からは変化球を試して行くぞ!あとの時間はバッティングスイングを見ていこう。」
バッティングも今まで以上に身体の捻りを伝える方法が効率よくなっている気がするしインコースにコンパクトに当てられるようになっている。スイングスピードが上がっているため前よりもタイミングを早く持ってこないと…
次の日はツーシーム チェンジアップ カットボールなど指先の感覚単体や握りで簡単にコントロールできる変化球を練習した。ツーシームはただ回転数が上がったくらいかな?キレが上がった気がする。
チェンジアップは特段変化はなかった。カットボールも変化の出始めが遅くなった気がする。
その次の日はスラーブ スローカーブ シンカー 高速シンカー の各種類を試した。
1番大きな変化をしたのがカーブ系だ。今まで以上に鋭く曲がるようになった。そして回転数が増えているためカーブを掬い上げようとしてもフライばかりになってしまうようだ。
逆にシンカーは完成されていたのか特に変化はしなかった。
最後はナックル。こいつは前以上に揺れるようになった。筋肉というよりは指の筋トレが効いたようで連投はできないが大分使い物になるようになった。
そして全体的な急速が2.3キロ上がって全力ストレートは5キロほど球速が増えた。コントロールは効かない。本当に効かない。たまーに外れるかな?あとはストライクゾーンのどこ行くかわからん!
そして回転数が上がったおかげでノビが良くなった。今は試合で投げたくてうずうずしている。楽しみだ。




