41
「お疲れ様、みんな今日はよく頑張っていたと思う。特に綾人 零の一年生ピッチャーは最高だったな。二人のお陰で今日は快勝できた本番も気負いすぎずこのままよろしく頼む。」
監督のいないウチのチームは主将が試合後のミーティングで今日の総括をしながらみんなで意見を出し合っていく。基本的に自分のプレイに関することよりも仲間のプレイに関してよかった悪かったをつけていく。
皆が自分のことと仲間のことを考えると連携が取りやすいし、どんなことを考えながらプレイしているかの価値観を合わせることができる。自分はAというプレイをしたくてこのように動いていたが仲間はBという動きの方がいいと思っていた。どちらがよかったのだろう?というのを一つ一つ議論するのだ。
それとは別に単純なミスはあまり言われない。それは自分自身が一番わかっているだろうし、イージーミスに関しては経験を積んでなんとかするしかない。つまりは日々の練習をもっとしっかりやるしかないのだ。
「では、以上で全体での総括は終わりになる。この後は個々人で話をするなりバッテリーで話をするなり好きにしてもらっていい。解散!」
「「「「お疲れ様でしたっ!」」」」
総括も終わり着替えながらこれからどうする?みたいな話をしていると良二が俺と綾人と拓君でアイスを買って帰ろうと誘ってきたので近くの公園に近いコンビニまで行くことにした。
「何のアイス食べる?」
という良二の問いに綾人はガリガリ君 拓君はピノ 俺はパルム 言った本人はパピコらしい。少し日が沈み心地よい風が吹く中良二は今日のバッテリー間の感想を言う。
「零、今日は打たせて取るのも三振を取るのも上手くリズムを作ってどちらも成功したな。どちらをメインにしていくかは好みになるだろうがどちらにしろ2パターンの配球を使い回すわけにもいかないから今日以外の配球でも戦えるようにこれから考えながら練習していこう。」
「そうだな、今日は打たせて取る方だからスローカーブがこないとか思われるのも良くないしな。効果的に使えるように何パターンか基礎の流れを作り上げたいな。」
例えばだが打たせて取るパターンの中でもカットとツーシームにチェンジアップを混ぜるバージョンとカット シンカーBにスローカーブのバージョンという感じだな。
「それと綾人は思った以上に新しい変化球が合っているな。これからは球を増やすよりも球速を上げるためのトレーニングと変化球の投げ込みに力を入れていこう。単純なレベルアップがそのまま戦力強化につながるしな。」
うんうんと頷く綾人、勢いよくいきすぎて頭が痛いのだろう額を抑えている。それを見て3人が笑っている。くだらない事で笑えるって最高だな。
あの後解散して各々家に帰る。俺が家に帰ってきた時には家族はみんな家にいてちょっと豪華な夕飯で今日の勝利を祝ってくれた。
「お兄ちゃん本当にかっこよかった!!それにみんなに馴染んでてエースって感じだったよ!やっぱお兄ちゃんが一番だね!」
瑠璃がニッコニコの笑顔でジャレついてくる。この小動物感はワンコだな。
「ありがとう!チームのメンバーがみんないい人達なんだ。それに朝から来ていた良二が凄いやつだからね、そのお陰でいい活躍ができたんだよ。」
「そっか!けどお兄ちゃんが投げた球も凄かったから二人とも凄いね!」
と妹と野球の話?で盛り上がりながら傍目には砂糖を吐きそうになる会話をしていた。
その後ら寝て起きたら身体の疲れは抜けているように感じたが念のために完全休養日として軽いランニングをしてお寺に向かう。
朝から源じぃに挨拶をしてルーティンとなっている瞑想を練習する。昨日の練習試合ではピンチの場面がなかった為使うことはなかったがどこかで必ず役に立つはずだ。
「あ、零くん!昨日勝ったんだってね〜。おめでとう!」
静ねぇがほんわかと笑いながら頭をなでなでと昔のように優しく撫でてくれる。この歳になると少し恥ずかしくて、パッと手を払い除けてしまう。
「あ、ごめん…」
「んーんっ!大丈夫だよ〜。恥ずかしいもんね。年頃だねえ。」
「そんなこと言って静ねえも年頃の女の子だよ?彼氏とかいるんでしょ?からかわないでよ」
「ばーか!!!いる訳ないでしょ?いつも早く家に帰って夜遅くまで配信して、学校の勉強してたらそんなひまないのよ?」
本気で怒っていると言うよりはぷんぷんという効果音が似合いそうな怒り方だなあ、と他愛もないことを考えながら話が長くなりそうなので体を休めるためと言ってその場を離れ、家に帰って休むことにした。
学校が始まると何人かのクラスメイトが完封の話を見聞きして褒めてくれてちょっと嬉しかった。最初の変な挨拶?から陽気なクラスメイトはちょこちょこ話しかけてくれるようになった。中学に比べたら過ごしやすくてとても嬉しいし楽しい。
「あ、零君、この前の試合お疲れ様です。吹奏楽の練習が終わった後に見ていたんですけど普段と全然違って…あの、かっこよかったです…」
何この可愛い生き物。もじもじしながら顔を真っ赤にして俺のことを褒めてくれている。
「あ、ありがとう。集中していて全然気づかなかったよ…ごめんね?」
「いえ!!気にしないでください…!他の友達も零君が野球してる事知らない子が多くてイメージが変わったってみんなきゃあきゃあ言ってましたよ?」
「えっ!?そんなことになってたの?ありがたいことだなあ。」
そんなにみんなに知られているなんて昔に比べたらなんと素晴らしいことだろう。
「ふんっ!」
え?駒井さんがなぜか怒った様子でどんどん先に行ってしまった。あれ?なんか失敗したかな?