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 良二は打席に立つ前に白松先輩に何か耳打ちをしている。それを聞いて白松先輩は笑みを深め頷いている。


 打席に立った良二は相手のストレートとカーブをいい感じのあたりでファールにカットしていく。主軸で投げてくるスライダーに関してはボール球ではなければ見逃しではなくわざと振りに行ってストライクになる。追い込まれて2ストライク1ボール。


 ここでスライダー狙うのかと思えば、ストレートをバントにして緒方さんを揺さぶる。


 サードとピッチャーどちらが取るか迷う場面で少しピッチャー寄りにして緒方さんに処理をさせる。緒方さんは揺さぶられ慣れてるのか動じずに落ち着いて丁寧に良二をアウトに取り1アウト2塁で白松先輩に回す。


 「よくやった!後は任せんしゃい!」


 白松先輩は良二の肩を叩いて打席に立つ。緒方さんは何度も対戦していて白松先輩を知っているのか嫌そうに顔を顰めて、また元の顔に戻す。

 

 「良二なにを白松先輩に伝えたんだ?」


「俺と拓人でスライダーを投げるように誘導してるので全球スライダー待ちでいいですよって伝えたんだ。」


「なるほどな。だからわざとアウトになったのか。」


「あ、主将に怒られるかなこれ。」


「多分大丈夫だと思うっすよ。気づいてると思うし。」


寺脇先輩がフォローしてくれる。

白松先輩の打席に集中して見ていると1ストライク2ボールだ。バッター有利のカウント。多分この場面ならスライダーが来るはずだ。


そう思って見ているとやっぱりスライダーがきた。白松先輩も待っていたボールがドンピシャできたからスイングに迷いがない。自分のスイングをかます。


ガッキッーン


 音だけでわかった。これはホームランだ。一応白線でここを超えたらホームランとなっている。その線をぐんぐん超えて道路に出ないように設置されたフェンスに直撃する。


 白松先輩は全身のパワーとひねりで振り抜いた体勢からバットを離すと悠々と走りホームに帰ってくる。


「二人ともよくやった!待っていた通りスライダー打ってやったぞ!」


白松先輩はその大きな手で二人の肩をばしばしと叩く。


「いえ、さすが白松先輩です!あのパワーは俺たちじゃ出せませんよ。」


「白松なんて堅苦しい言い方はいらん!大輝でいいぞ!」


 今ここで白松先輩に二人は認められたのだろう。チームとして繋がりが一つ増えた気がする。


 そんなこんなしていると朝山先輩と鳥沢先輩が粘れずに戻ってくる。やはり、経験を積んでいるエースは打たれたくらいで動揺せずに仕事を全うする。


「流石にスライダー狙いがバレたみたいでリードを変えられたね。読み間違えてあっさりと三振になってしまったよ。3人が仕事をしたのに悪いね。」


「しょうがないですよ!実際ストレートにパワーがこもっていて長打になったと思うあたりがとられましたからね。相手の外野も中々に守備が硬いです。」


綾人が主将のフォローをしながら守備の準備をする。


「まあ、一年生であの距離まで飛ばす綾人も大概だけどな。」


「いうじゃねえか変化球お化け。」


俺たちは軽口を叩きながらマウンドへ向かう。

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