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周りに地元の人がぞろぞろと集まってきてくる。孫を連れたおじいちゃんや、野球好きのおじさん達。それにある程度の保護者たちだ。
松代高校はグラウンドが広くよく練習試合などで使われることが多い為みんな土日の観戦に来たりする。それをわかっている松代高校も試合が決まれば毎回知らせたりもしているので集まりがいい。
一年生大会とは違って観客も多く3年生まで含めたフルの体勢で戦う公式戦のような形は初めてである。
この中にいるのかわからないが今時スマホで録画などはできる為あまり手の内を晒したくはない。
と考えていると良二は愛想の良さそうな顔で野球好きのおじさんたちと話をしていく。良二に聞いた話だが野球好きのおじさん達は地元に関しては根強い情報を持っている為仲良くしておくことで必要な情報を得られるらしい。
良二がそうしている間俺はどうしようと思っていると家族が来ていたので軽く話をしに行く。
「お兄ちゃん!今日は頑張ってね!」
「ありがとうな。かっこいいところを見せられるように頑張るよ。」
と当たり障りのない会話をしていると良二がやってくる。
「すいません傑さんにちょっと来ていただきたいのですが大丈夫でしょうか?」
「ああ、勿論大丈夫だよ。零と一緒に3人でいって地元のスポーツ好きの人達に君達を紹介しておこう。これまで以上に仲良くしてくれるはずだね。それが狙いだろう?」
良二ははみかみながら答える。
「ええ、まあ。よろしくお願い申し上げます。」
そのまま3人で地元の人たちに挨拶をして行くと、やはり父さんは地元の人たちによく知られていたようで心良く協力してくれることを教えてくれた。
こう言う時に親の凄さを実感する。ただの店長ならここまでよくしてくれてないだろう。みんな何かしらの繋がりがあって父さんならと信頼してくれている証だ。
そうこうしていると相手のチームも到着したようで俺たちのチームが練習しているグラウンドとは別のグラウンドでアップを始める。そこで俺たちも主将に呼ばれた為断りを入れて集まる。
「じゃあ、今日はスタメンで出るメンバー以外は代打や何かで交代しない限り審判やコーチャーを頼むぞ。」
うちは、進学校ということもあるが清廉潔白な審判で一定の信頼を得られている為こちらが審判を出してもなにも言われない。ここも何気すごい点だ。
こちらの監督の代わりである主将と相手の監督が話し合い今から一試合、昼からもう一試合行うことになった。最初の試合はスタメンで二試合目は今日出ていない選手を出すための試合らしい。
できればどちらも投げたいな。完投を目指すためには出来るだけ球数を使わないためにも打ち取らせる形にしないといけない。少し良二に相談する。
「良二、できれば俺は二試合とも投げたいから打ち取らせる形を多めにしたいんだ。後半は三振を取らせる形で経験を積みたい。」
「え!?二試合とも?できなくはないだろうけど一試合目でだいぶ球数節約しないといけないよ?それに、カットと、ストレートで討ち取るのはいくらなんでも厳しいよ?」
「わかってる。だから7回からは綾人に任せたいんだ。それと、シンカーを極小の変化をかける。それなら一種のムービングとして使えないか?あと一応シュートも投げられるが。」
「え?シュートも投げれたなら教えてよ…。まあいいか。それでいってみよう。ピッチャーの起用法については一任されてるし綾人にも相談してくるね。」
「いや、大丈夫だぞ!話は聞いていた。二試合目は多分、寺脇先輩を使った良二のリードを見るつもりだと思うから多分零は外野起用だと思うが。まあ後半寺脇先輩で行くなら大丈夫だと思う。」
「よし、なら両試合とも先発零、中継ぎ兼クローザーを一試合目綾人二試合目寺脇先輩だな。」
なんやかんや話していると整列して挨拶をする。
「お願いしゃーす!」