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今日は全体の守備練の後バッピをすることなくブルペンへと向かう。勿論先輩達は心良くブルペンへ行く事を、許可してくれたし、何故かいつもより優しい感じだった。謎である。
「よーし!じゃあまずは何からいく?」
キャッチャーミットを手に取った良二が声をかけてくる。
「うーんとりあえず左への変化をするシンカーの反対、スラーブをもうちょっと研究したいかな。」
俺はそのあと良二のミット目掛けて握り方や手首の使い方、リリースポイントなどをずらしたり調整してよりよい変化をする方法を模索する。
「うーん、やる前よりは断然に良くはなった。腕の振りは変わってないし、変化量も大きくしたりも少しはできる。だけどなあ。スピードが高速シンカーほど早くないし、キレも若干見劣りする。」
「それこそ、準一軍ギリギリのラインだな。」
「そういう事。」
うーん、どうしたらいいんだろう。とりあえず他の変化球を試すか?だが、妥協で進めると結局良い結果にはならないことが多い。詰めるべきだろうな。
「二人はスラーブというかパワーカーブ?にこだわっているみたいだけど、むしろ打者の打ち気を逸らすのにカーブって使うんじゃないの?」
休憩ついでに来たであろう寺脇先輩が元投手の目線からアドバイスをくれる。
「なるほど、なまじうまくスラーブを投げれてたから速さとキレを求めてたけど別に遅くてもいいのか。零!遅めでいいからバッター近くで大きく変化する感じのカーブ頼む!」
「わかった!色々試すから後ろにそれても許せよ!」
以前試してみたかったスローカーブの握りをスラーブの強化の時に加えた技法を織り交ぜて投げる。
投げたボールは普通のカーブよりも格段に遅く大きく弧を描きながらストライクゾーン手前で大きく落下する変化量の大きいカーブとなった。
「おお。」
「これならいけんじゃね?」
寺脇先輩がドン引きして、良二が冷静に分析する。
「これなら準一軍入りさせてシンカーとの駆け引きの1つに出来るかもしれないな。」
良二と相談した結果、スラーブの強化を手に馴染ませるのとスローカーブを手に入れる事にした。
「あ、そういえば他にも試したいことあるんだよね。折角だし試していい?」
「ああ勿論いいが下手に球種増やし過ぎて癖付かせるなよー。」
よし、グローブの中で握りを確認する。爪を立てて押し出す形だ。
せーのっ!
「は!?」
ふらふら〜とスローボール気味に進んだボールは不規則に意味もわからず落ちていく。
現代の魔球と言われるナックルシリーズの王道。ナックルである。
「実はさっきのカーブもナックル気味に爪立ててたんだよな。だからこれも出来るかなあと。」
「おいおい、こんなヤバいナックル後逸が怖くて要求できねえよ。もし使いたいなら俺が取れるように練習付き合ってもらうぞ。」
「んー、実際俺もナックルでなげると指しんどいから今日みたいに授業で少しずつ鍛えてだな。練習自体は手伝うけど最後の終わりに数球くらいだ。」
「わかった。ならそれで行こう。」