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自宅から自転車で15分ほどの距離にお寺はある。朝早くの時間帯だがお坊さんである静ねぇのお爺ちゃんはお寺の掃除などをこの時間からやっている。
「おはようございます。」
俺は静ねぇのお爺さん 源じぃに挨拶をする。
「零くんじゃないか、大きくなったのぅ。おはよう。」
「もし宜しかったらお話を聞いていただけないでしょうか。いつものように掃き掃除をしながら。」
俺は小さい時から誰にも相談できない悩みがある時はここで掃除のお手伝いをしながら源じぃに話を聞いてもらった。
ザッザッ
箒で掃き掃除をする。
「源じい、俺今野球部でピッチャーをやってるんだけど、瞑想をルーティンに取り入れたいんだ。これから朝の掃除をこうして手伝いに来るから稽古というか、やり方を教えてもらえないかな?」
「おお、零が野球のう。やっと始めたのか。勿論零はしっかりと手伝いもしてくれるしいいぞ。ついでに静香を嫁にもらってもいいぞ。」
源じいはいつもこれだ笑。何かとあれば静ねえを彼女にしようとする。本気なのか冗談なのか良くわからないが。
「流石に静ねぇも高校2年生。彼氏くらいいるでしょう。それに中学生の頃は思春期真っ盛りで疎遠でしたし。向こうも気にしてませんよ。」
「それはどうかのぅ。まあ、ここに通うなら会うこともあるじゃろて、昔みたいに仲良くしてやってくれな。」
「えぇ、こちらこそです。」
雑談をしながら境内の掃除と寺の雑巾掛けを行う。源爺はなんというか型破りな人で今時手を床につくなんて腰痛めるわいとかいって。クイックルワイパーみたいなのを使ってサーッと手際良く済ませていく。
「さてと、瞑想じゃったな。とりあえず瞑想についてどう思ってるか教えてもらって良いか?」
「僕のイメージは心を無にすると良く言われているが違うと思います。古武術にもあるような一定のリズムを保った呼吸法。それに合わせた思考の沈め方。結果として心が落ち着いて無になる。と考えています。」
余談だが、昨日瞑想について考えていたところ、プロ選手の中でも選ばれしものしか入れない集中した領域。蓮が多分だが試合後半に入ったかもしれない境地に行くための方法につながると思っている。
「なるほど、まあ大体あっておる。そこが第一段階じゃの、その後には自然と一体化すると表現される状態。自分の知覚領域を上げるところまでが瞑想じゃ。これは古武術や居合道に通じたワシの持論じゃがのう。」
やはり、あの境地への特訓にもなる。
「では、とりあえず呼吸方からじゃの。こういうのは焦ってもしょうがないものじゃ。ゆっくりとやっていくぞい。」
こうして俺は毎朝学校に行くまでの時間源爺に瞑想の特訓をつけてもらえることになった。
ついでに部活のラインで朝練に行けないことを部長と一年生グループに一応伝えておく。
ウチの朝練は自由方式だから来ても来なくても良いが、連絡しておくに越したことはない。