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今日は土曜なのでお昼に投稿してみます
俺が投げた後にマウンドに立った綾人は凄いの一言だった。140キロ前半をコンスタントになげ、相手のバットに掠ることなく三振に討ち取る。
かろうじて当てているメンバーも詰まったあたりでファーストと拓くんにさばかれていく。俺はあんな球速出ないから憧れる…という話を綾人にしたら頭のおかしい変化球を持ってる零も大概だと総ツッコミをくらったので何も言わない。
解せぬ。実際球速というのはピッチャーにとって付いては離れぬ病気みたいなものだ。俺も実際速い球を投げる為に良二と綾人にアドバイスを貰いながら筋トレをして少しずつ筋肉を増やしてフォームを改造しているがまだまだ効果が出るのは先だろう。綾人が何人か討ち取っていくと一回は不知火とあたる。その時の話をしよう。
綾人は不知火相手にギアを上げたように今日最速の148キロど真ん中を投げ込む。不知火にとっても初めての生きた148キロだったのか、驚いた様子で振り遅れていた。2球目は不知火の打ち気を逸らすようなスプリット。しかし、外れてボール。ここで不知火には変化球かストレートかで迷いが出る。勝負の3球目良二が要求したのはインハイのストレート。
ベンチから見ていてもわかるほどのスピンの効いたいいストレートが不知火の手によってライト奥まで運ばれる。綾人の球威によってホームランは避けられたようだが今日1番のボールを打たれた綾人は悔しがる。だがそのあとは落ち着いてバントを処理。
そして続くバッターも打ち取り結局1.4で合同チームの勝利で幕を閉じた。
「不知火、次の対戦楽しみにしているよ。」
俺は不知火の前まで行って握手を求めた。
「こちらこそよろしく、次は君の魔球をスタンドまで持っていくよ」
不知火の厚く硬い手の感触を感じながらがっちりと握手をした。そのまま俺たちはスタンドでお昼を取りながら二試合目の三重高対松代工業の試合を観戦する。三重のピッチャーは中学時代も県内、地方内で名を轟かせていたピッチャーらしい。球速はマックス148キロ、変化球はタイミングを外すスローカーブに手元で動くカットボール、スプリット。スタミナも先発をこなすくらいにあり、制球力に難があるものの普通にストライクゾーンには集められる。
完成度の高い良いピッチャーである。実際工業のバッターを翻弄して完封した。三重のバッターは打つ打つ打つ、一年生だけがそうなのかもしれないがフルスイング型が多く、アベヒ型と思われるバッターでもスタンド前まで余裕で運んでいく。
少しでも甘い球を投げたら首を取られそうだ。俺としては三重高の2番キャッチャー山下林治4番ファースト宇和山大和、この二人を抑えるのに神経を使いそうだと思っていた。この二人以外は打つと言っても不知火ほどではなく、各高校にいる良いバッターほどのものだが、あの二人は県を代表するような実力だ。と良二に教えてもらった。俺と良二はどう試合を進めるか考えながら試合の時間まで話し込んだ。