ある日のギルド日誌 マリー・スルー
アタシはマリー・スルー。冒険者ギルドの超絶美人受付嬢だ。
こう見えて昔はアタシも冒険者をしていた。ランクも上から二番目のAランクまで上り詰めて冒険者界隈では結構有名だったんだ。
それを聞きつけたのか、ある日勇者がアタシを勧誘に来たんだ。
アタシを誘う奴なんていなかったから浮かれて即座にOKした。
勇者というだけあってあいつはめっぽう強くてね。肩を並べて戦ううちに惚れてしまったんだ。
でもあいつは他の仲間の魔法術師や治癒術師とはイチャイチャするくせにアタシには一向に手を出さなかったんだ。
だから、死ぬかもしれない大きな作戦の前に思い切って告白したんだ。そしたら「筋肉はちょっと……」とか言いやがって。
頭にきて周囲に当たり散らしたら、変な二つ名は付けられるし余計に男が寄り付かなくなるしで散々だったよ。
二十代半ばを過ぎていたアタシはこのままじゃマズイと思って冒険者を引退、古い友人でもあるサブマスに頼んでギルドで働かせてもらうことにしたんだ。
結局良い出会いなんてないまま二年近くが過ぎた。
もう一生独り身ないんじゃないかって思い始めた頃、アタシに天使が舞い降りた。
ギルドには似つかわしくない可愛らしい少女。ドレスを纏えば貴族の令嬢と言われても疑いようがない程の美少女が、屈強な男共でもビビってなかなか話しかけてこないアタシに最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に向かってきてこう言ったんだ。「暗殺の依頼はありませんか」って。
恐れを知らないその瞳。隙だらけに見えて付け入る隙のない威風堂々たる佇まいに子宮の奥がうずいて濡れたッ!
ようやく見つけたんだ。アタシの結婚相手を。
だからアサシンちゃんに手を出す奴は許さない。絶対に……絶対にッ!
(副)ギルドマスターから一言
貴様は日誌に何を書いているんだ。再提出。