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少年魔法少女譚「ななめトランス!」  作者: 由樹ヨシキ(夢月萌絵)
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第十八話 最終章 ワールドエンズ・デカダンスホール(4)ナナメ、悩ませる

第十八話 最終章 ワールドエンズ・デカダンスホール(4)ナナメ、悩ませる


登場人物紹介

七芽しちがや祐太郎(14) 魔法少女にされてしまうオデコ少年。テレビゲームとお風呂が好き。

白銀卓斗(16) 祐太郎の先輩。眼鏡男子。マスクドウォリアー・システムで変身してナナメを護る。

須賀栞(14) 祐太郎が気になっていたクラスメイト。中学生にしてはおっぱいが大きい。 

武者小路秋継(30?) 祐太郎を魔法少女にした元凶。変態紳士。

柳井ミキ(14?) 通称ヤナギ。祐太郎のクラスメイトで人間と魔法生命体のハーフ。変身フランツして強力な魔法を使う。

黒田龍之介(14?) 祐太郎のクラスメイト。クラス一番のひょうきん者のはずが『魔特』を襲撃する。


1.ナナメ、悩ませる。

合体魔法少女ナナメウイングが、巨大嵐雲型MIDを制圧して、核になっていた鳥型MIDを抱えて地上に降り立った。

三本木隊員と白銀卓斗は急ぎ『魔特』の車両でナナメの元へ向かっている。

車に揺られながら卓斗は考えていた。

(俺は・・・ヒーローになりたかったわけじゃない。

俺は・・・ただ、目の前の女の子を助けたかっただけなんだ。

なんだか危険に巻き込まれていそうな、なんだか酷い目にあってそうな女の子。

見て見ぬふりはできなかった。好奇心もあったのかもしれない。

あの子を助けたいと思った。強くならなくちゃいけないと思った。

知識も体力も、技術も、格闘術さえも身に付けなくてはと思った。その気持ちが、俺を成長させてくれた。

だが。

ナナメなんていう少女は最初からこの世に存在してはいなかった。七芽祐太郎が無理やりやらされていただけだったのだ。

俺はもとより必要無かったのだ。

ヒーローというなら、あの小さな身体で苦手なことにも立ち向かう、七芽こそがヒーローじゃないか。

身体もできていないのに一生懸命俺の後ろを走ってついてこようとしていた、七芽が。

急に魔法少女なんてやらされて危ない目に遭わされて、それでも人知れず街を守り続けていた七芽が。

今や世界の命運を握っている。あんな巨大な嵐雲だって吹き飛ばしてしまった。

本当に、俺はもう必要ないんじゃないか。格好だけ無駄にヒーローみたいで空虚じゃないか)

卓斗の思考がぐるぐる巡るうちに、車はナナメの元へ着いていた。


「お疲れ様でした、ナナメウイング」

三本木隊員が車を降りて労いながらナナメに駆け寄る。

そこから卓斗と二人で、無力化された鳥型MIDをケイジに入れ、耐電性の素材で覆い、車輛に積み込んだ。

「おや、どうしましたナナメウイング。顔色が悪いですね」

三本木隊員が心配する。卓斗は、心ここに非ずでナナメの変化に気づけず、ハッとする。

「お腹痛い・・・」

ナナメはやがて立っているのがやっとという感じになりふらつきだした。その時、強制的にナナメウイングのフュージョンが解除され、ぐれりんが弾き飛ばされた。

倒れかかるナナメの身体を卓斗は慌てて抱きかかえる。

「どうした!七芽、大丈夫か!」

卓斗はナナメの太ももを伝う血を見て動揺する。そして卓斗自身の変身も解除される。ナナメからのMP供給が途切れたのだ。

「早く・・・早く、医者に見せなくては!武者小路さん!何とかしてくれ!」

ナナメを抱きかかえる。

〈落ち着き給え。ナナメ君のバイタルはこちらでもモニターしているよ!貧血を起こしているね〉


2.ナナメ、大人の一歩

「せ・・・せ生理・・・ですか・・・!?」

『魔特』ラボに戻ったナナメは医務室で診察を受けていた。

「初めてだったの?14歳にしては発育がゆっくりだったみたいだね。心配すること無いわ。皆迎えるものだから。ただ、あなたの身体が赤ちゃんを産む準備ができてきたっていうだけだから」

魔特の女医の言葉にどういう感情を持っていいかわからない祐太郎。

恥じ入ればいいのか、こんな目に遭う不幸を呪えばいいのか・・・

「赤ちゃん!?ぼ・・・私が・・・!?」

「おめでとうナナメ君!」

そこにタイミングよく扉を吹き飛ばしそうな勢いで武者小路博士が乱入してくる。

「盛大に祝おうか!魔法少女ナナメの初潮の訪れをね!」

「やややめてください人に聞かれたらどうするんですか!」

「恥ずかしいことじゃないのよ。女の子は皆体験することなんだから」

(いや!僕普通の女の子とは違うんで!!)

ナナメは女医の方へ振り向いて抗議したい気持ちに駆られる。

だがきっとうまくは伝えられない。

ナナメの表現力も足りないだろうし、無理矢理女子にされてしまった男子でしかも一時的に戻れなくなってしまった人間の気持ちがわかる他人なんているわけがないのだ。

(それに先輩には絶対聞かれたくないよ!)

「大人の階段を一歩上ったナナメ君には、私から個人的に贈り物があるよ」

「・・・このポーチは?」

「開けてみたまえ、子供用のサニタリーショーツ、軽い日用のかわいい柄のナプキン、おジャ〇女のウェットティッシュを準備しておいたよっ!」

「細やかな気遣いありがたいけど凄く気持ち悪いです!」

「お赤飯も炊いておいたよっ!安心したまえ勿論お豆は十勝産甘納豆だよ!」

「甘納豆のお赤飯は大好きだけど恥ずかしいですから!あんまり周りに知られたくないし・・・」

「折に詰めておいたから好きなだけ持って帰ってくれたまえ!真実那さんと一緒に食べるといいよっ!」

「だから恥ずかしいんですってば!」

ナナメは博士たちに卓斗には言わないようにと口止めして、先に帰してもらった。

ナナメ祐太郎の身体を案じていた卓斗は不承不承であったが、自分には何もできることは無いと説得されて先に帰って行った。

(うう・・・ごめんなさい先輩・・・今どんな顔をして先輩に会ったらいいかわからないのです・・・)


3.ナナメ、帰宅する

「ただいま~」

博士の気がきき過ぎる贈り物を持って、家の前まで送ってもらい、祐太郎はふらふらと帰宅した。

「おかえりネウ太郎ちゃん!聞いたわよ!生理になっちゃったんですって?

びっくりしたでしょ?でもおめでたいことだからね」

「あああお母さんに対しての口止めを忘れてたあ!」

「うふふ、お母さん張り切ってお赤飯炊いちゃいました!勿論お豆はデコ助君の大好きな甘納豆でーす!十勝産!」

「このノリで二回目きっつ!」

「?」


そうしてその夜の七芽家の食卓はやたら甘納豆お赤飯だらけになってしまったのだった。

(好きだからいいんだけどね、お赤飯)

「サンダーバードはね、巨大樹ヒュートデードの守護者でね、100m以上にもなる大樹の森に棲んで時折雷を降らせるの。森の下の方は燃えてヒュートデード以外生きることを許されない森になっていくの」

「すごいねえ」

「へ、へえ・・・なんか改めてお母さんが他の世界から来た人だって実感したよ」


一歩大人の女への階段を登り始めた魔法少女ナナメ。

頑張れ、世界の危機はもうすぐだ!



お赤飯食べたいなあ・・・

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