家族ですから
出来るかどうかなんてわからないけど・・・可能性がある限り俺がやることは一つだ。
「レオン・・・様・・・」
部屋に戻るとセリカがうわ言のように俺の名前をつぶやいていた。・・・・赤ん坊から3年間俺のことを侍女として、時には母親のように接してくれた大切な人だ。そんな人を助けられるなら俺は・・・
そっとセリカの手を握って俺は大丈夫だと祈るように一度目を瞑ってから・・・・詠唱を始めた。
「《大いなる大地と豊かな海を司る精霊》」
いつもなら詠唱などは飛ばすところだが・・・この魔法に関しては試したことがないので一語一句間違えないように神経を張りつめる。
「《還る者と逝くものの狭間》」
イメージするのは元気なセリカの姿。
イメージするのは自身を切り分けて相手につなげるようなイメージ。
「《残酷な時をも超越するは我が想い》」
恐れる必要はない。きっと上手くいくと信じて俺はセリカの手を離さないようにしっかりとーーー優しく握る。
「《覇者は我が想いに崩れ、森羅は我が想いを支える》」
きっとこの魔法を前に使った人も同じように誰かを助けたくてこの魔法を使ったのだろう。ならーーー
「《我が魂を以て汝にーーーー》」
絶対に上手くいくはずーーー
「《健やかなる安らぎを》」
瞬間ーーー目映い光がセリカと俺を繋げた。
目には見えないけど確かに見える無色のパスから送られるのは俺の生きてる力ーーー明確にわかる。俺の命がセリカに送られているのが。
何かが抜けていくのが分かるが、俺はセリカに意識を向けてその抜けていく何かを気にしないでおく。
やがてしばらくして光が徐々に輝きを失っていき、俺とセリカの間にあったパスも途切れていきそしてーーー
「ううん・・・レオン様?」
「セリカ調子はどう?」
「不思議なことに身体が軽いです・・・これはレオン様が?」
なんと言えばいいのかわからず俺はそのまま黙り混むがその無言で何かを察したのだろうーーーセリカは優しく握っていた手をほどいて俺の頭を撫でて言った。
「ありがとうございますレオン様・・・」
お礼なんていらない。無事で良かった・・・色々言いたいことがあったが、その心地よさとさっきの魔法の疲労から俺の身体はセリカの寝ているベットに預けられて、そのまま意識が遠退いていきーーー
「本当に・・・ありがとうございます。レオン様・・・」
最後に優しげに微笑むセリカの姿を見てから俺は眠りに入った。