セリカのために
最初に見つけたのは俺だった。
いつものように書斎にこもって勉強していたが・・・いつもならご飯の時間になれば俺を呼びに来るはずのセリカが一向に来ず、心配になり様子見のついでにセリカを探しているとーーー廊下で倒れているセリカを発見したのだ。
「セリカ!」
「レオン・・・様・・・?」
ぐったりとしながら薄く目を開けるセリカ。顔色は最悪と言っていいほどに真っ青で、熱があるのかかなり熱い。
急いで俺はセリカをベットに運んで寝かしつけるが・・・生憎というか、今日は両親や姉は社交界に出ていて帰りは明日になるから他の侍女も出払っており、セリカと俺しかいないので正直かなり困った。
とりあえず冷やしたタオルを額に乗せて楽な格好になるように少し服を緩めて寝かしつけたが・・・熱は上がる一方で一向に下がる様子もない。
「セリカ・・・」
「レオン様・・・申し訳ありません・・・」
弱々しくそう言うセリカ・・・まずいな。普通の風邪にはとても見えない。俺はしっかりとセリカの手を握るとなるべく優しく言った。
「大丈夫だよ。セリカはゆっくり休んで早く元気になってくれればそれでーーー」
「・・・申し訳ありません・・・私の身体・・・多分限界なんです」
「限界って・・・」
「・・・元々私の身体はかなり弱くて・・・長生きできないことが最初からわかっていました。そんな私を拾ってくれたのが・・・レオン様の母君ーーーミーシャ様でした。ミーシャ様も私と同じく先の長くないとご自身でわかっておられたのでしょう・・・私と旦那様にレオン様を・・・託されて行かれました・・・私もミーシャ様の元へ行く時がきたのでしょう・・・」
そう弱々しく微笑むセリカ・・・話が少し飛んでるが要約するとセリカは元々身体が弱くて、それを拾ったのが俺の実の母親で、そして・・・セリカの寿命はもう・・・
そこまで考えてギリッと俺は奥歯を噛み締めてセリカの手を握って言った。
「大丈夫・・・セリカはまだ助かるから。俺がセリカを助けるから」
セリカはその俺の言葉に弱々しく微笑んでそのまま眠りについた。
俺は急いで書斎に向かった。
理由はもちろんセリカの身体を治す方法を見つけるためだ。
もちろん俺は医者じゃないからセリカの症状からどんな病気とかを調べるのはできないけど・・・変わりに俺には魔法がある。
魔法には大きくわけて8属性の種類の魔法が現存しており、火、土、水、雷、風、光、闇、の7つと、そして無属性・・・術者のオリジナル魔法であり、固有魔法とも呼ばれる種類に分けられる。
俺は一応すべての属性を使えると言ったが、かねてより探していたのが最後の無属性魔法ーーー所謂固有魔法と呼ばれる特殊な魔法で、それがどうセリカを救うことに繋がるのかと言えば・・・・答えは単純明快だ。
「あるはずなんだ・・・回復魔法・・・」
そう・・・それが俺の出来る唯一の方法。
セリカを助けられるかもしれない唯一の方法だ。
どんな状態でも対象者を癒す手段・・・まさに魔法の中でももっとも奇跡に近いであろうそれを俺が身につける他にセリカを救う手段はない。
「あるはずなんだ・・・どこかに・・・」
無属性の魔法に関する本は少ない。
術者のオリジナル魔法である無属性魔法は文献に乗るほどの数があるわけでもなく、誰もが覚えられるわけでもないから当然のように資料は少ないが・・・それでも、高名な魔法使いなら確実に覚えているはずのそれをひたすらに探す。
何冊、何十冊目かの本を漁っていると・・・それはあった。
「これか・・・!」
とある賢者の私的な日記・・・ラズベリー伯爵家に伝わる古い書物の中に紛れていたがそれには確かに書いてあった。
「回復魔法・・・」
読み進めていくと、詠唱も確かに綴られているそれを見てーーー最後の部分で俺はぴたりと視線を止めてしまった。
「これは・・・」
そこにあったのは回復魔法の多用で自らの命が減ったのではないかという賢者の推測・・・もし本当ならこの魔法を使えばセリカを助けられるかもしれないが、同時に俺の寿命が減るかもしれないということだが・・・
「関係ない・・・俺はセリカを助けたいんだ」
例え命が減ろうが・・・セリカは俺にとって母親同然のいなくてはならない存在なんだ。だから俺は・・・