魔法があるみたいです
「レオン様。ご飯ですよー♪」
俺が赤ん坊になってから3ヶ月・・・相変わらず俺はメイドさんにお世話される生活をしていた。
「レオン様は本当に可愛いですねー」
この3ヶ月の間、俺の世話をしてくれているのはこのメイドさん一人だけ・・・うん、いまだにこの人以外に会ったことないんだよね。
あ、ちなみにこのメイドさんの名前はセリカって言うらしいですよ。
年齢は多分20歳くらいに見えるけど・・・なんかやたらと若く見えても子供の世話の馴れ具合からしてもっと上でもおかしくないと思うがまだ上手く声が出せないから聞けない。
・・・まあ、声が出せても女性に年齢を聞くなんてデリカシーのないことはしないけどね。紳士ですので。
「あうー」
「ふふ・・・お腹一杯になりましたかレオン様」
感謝の気持ちを出ない声であげると嬉しそうに微笑むセリカ。
「本当に・・・レオン様はこちらの言葉をわかってるかのように反応しますね。きっと将来は大物になりますね」
・・・いい人なんだけど、少しばかり親バカというか・・・
というか、俺はこの人が実は母親かと思ったのだが、どうにもこの人の話を聞いていると俺の実の母親は別にいるみたいだし・・・なにより俺はこの3ヶ月の間に一度も両親らしき人物に会えてないことからなんか凄く込み入った事情がありそうで怖い。
「・・・と、そろそろ灯りが消えますね」
そんなことを考えていると俺のご飯を終えたセリカが新しく蝋燭を入れ直して何もないところから火をおこした。毎日のように見ているそれの現象に俺はいつものように声なき声をあげてアンコールを祈る。
「あうー!」
「あら・・・魔法が気になるのですかレオン様」
もちろんですとも。とは言えないので「あうー!」とバリエーションのない返事をするとセリカは少し困ったように微笑んだ。
「流石レオン様・・・ですが、魔法は女しか扱えませんからみてもあまり意味はないですよ」
そう・・・どうやらこの世界では魔法を使えるのは女だけらしいのだ。セリカが前に語っていた話しでは魔法の源である魔力というのは自然界に存在する精霊と呼ばれる存在から与えられる恩恵のようなもので、それを与えられるのは女だけ・・・というのがこの世界の常識らしい。
せっかくの異世界なのに魔法を使えないのは残念だけど・・・それでも魔法という不思議な力に興味はつきないので俺はこうして毎日セリカにねだって魔法を見せてもらっているのだ。
そうしてセリカは魔法を見せてから、俺を寝かしつけて一度部屋を離れる。
多分他の仕事があるんだろうが・・・俺はその時間を使って部屋の中を最近になってマスターしたハイハイで進んで部屋の隅にある本棚から重い本を取り出して読み始める。
言語事態はほとんど前世の頃の日本の文字と同じなので読むことには苦労しなかったが、ベッドから抜けだして重い本を取り出すのが赤ん坊の身体だととにかく重労働で、それに体力を使っていらからか俺は赤ん坊にしては異様なほどに徐々に体力をつけていってるようだ。
俺の取り出せる本は本棚の一番下の段のもののみだが、そこには丁度魔法の基礎について書かれた本があるので俺はそれを毎日のように読んで覚える。
魔法はさっきも話した通り、自然界に存在する精霊からの与えられる恩恵により発動できるもので、その精霊の恩恵をもっとも与えられやすいのが女性だというのはセリカの話と同じだが、本によれば、男でも過去に発現したケースがあるようだった。
とはいえそれはかなり異例なケースのようで、感受性の強い幼少期に魔力が発動しなければ以降いくら頑張っても魔法を使うことは出来ないらしい。
そして俺はと言えば・・・・
「あうー」
意識を集中させて、声なき声で光のイメージをすると・・・目を開ければそこには小さな光の球体が浮かんでいた。
うん・・・なんかね。使えるみたいなんだよね。魔法。
最初に発現したのはついこないだなんだけど・・・今のところ本にのってる魔法は全て試して全て成功している。
本来魔法には得て不得手があって、与えられる精霊の魔力の質によって使える魔法は限られるらしいが・・・俺はすべての属性を使えるという不思議な結果。
多分前世の記憶があるからこそのイレギュラーなんだろうけど・・・チートってやつかな?まあ、神様にあってないからただ単に転生の特典なのかもしれないけどね。
あと、気になるのは、魔法は本来は詠唱というのを必要とするらしく、声を出せない俺には発動できないはずなのだが・・・普通にイメージさえすれば使えるという矛盾ーーー所謂、無詠唱と呼ばれる芸当を普通に出来るのは何故だろう?
他の本で調べても詠唱というのが基本的には必須になるらしいので無詠唱については当然かかれていないし、まあ、そもそもこの世界で男の俺が魔法を使えるというのがイレギュラーだから気にしなくてもいいかもしれないけど、早く言葉を話せるようになりたいと切に願う今日この頃です。