愛情を感じました
姉様にアリスとリリアを任せて俺は目的の部屋に向かう。
こんこんとノックをして「レオンです」と言おうとすると、それより早く開けられて知ってる顔が現れた。
「遅かったわねレオン」
「義母上・・・」
出迎えてくれたのはまさかの俺の義母であるシンシア・ラズベリー伯爵夫人だった。
まさか父上の書斎で出迎えられるとは思わず一瞬驚きに襲われるが、すぐに表情を引き締めて言った。
「遅くなってしまい申し訳ありません・・・父上も中にいらっしゃいますか?」
「ええ。いるわよ。とりあえず中に入りなさい」
そう言われて俺は頭を下げて中に入る。
父上の書斎に入ると、この時間でも多忙な父上が書類を整理しているのが視界に写った。
「父上ーーーレオンただいま帰還しました」
そう声をかけると父上は書類を読む手をピタリと止めて立ち上がってこちらに歩いてきた。
なんだろうと思っていると俺の前に立ってからーーー俺の頭を撫でて言った。
「おかえりレオン・・・無事で何よりだ」
「父上・・・申し訳ありません」
「事情はマナから聞いている。お前は正しいことをしたのだから胸を張ればいい。ただ・・・」
そこで少し言葉を濁してから父上はちらりと義母上に視線を向けてから恥ずかしそうに言った。
「あまり危ないことはするな・・・心配したんだからな」
「ーーーーーす、すみませんでした」
そんなことを言われるとは思っておらず、思わずフリーズしてしまう。今までこちらから愛情を示したことは何度となくあるが・・・こんな風に父上から心配されたのは初めての経験だった。
いつも父上は俺の前に立つと困惑した表情を浮かべているか、何かを考え込むばかりだったので、正直かなり動揺してる。まあ・・・そんな顔をさせてる理由は俺の行動のせいだから自業自得かもしれないが・・・
「本当に無茶なことばかりするんだから・・・でも無事でよかったわ」
「ーーーは、はい。すみません義母上」
さらに追い討ちで義母上からもそんな風に言われてしまった。
どこかツンケンしている義母上からそんな言葉をかけられるとは思いもよらず、俺はまたもや返事に窮してしまった。
そんな俺の様子を見て父上は「とりあえず・・・」といつもの渋い表情を浮かべて言った。
「今日は疲れただろうから、ゆっくり休みなさい。あと、セリカがずっこ凄く心配していたからちゃんと謝るんだよ」
「はい。わかりました」
「それからお前が今日連れてきたという二人は・・・」
「姉様が引き受けてくれました。多分今はお風呂にいってるかと」
俺の返事に「そうか・・・」と父上は少し何かを考え込んでから言った。
「とりあえずその二人はお前の付き人としてセリカに面倒を見させよう。お前が拾ってきた二人だからな」
「はい。ありがとうございます。父上」
「うむ・・・」
あとは何か言うことあったかな?という感じの沈黙をする父上。
そんな父上に助け船を出すように義母上は俺に声をかけた。
「とりあえず今日はゆっくり休みなさい。詳しいことは後日聞くから」
「わかりました。失礼します」
「ああ・・・」
そう言って父上は書類整理に戻ったので俺も一礼して部屋を出ていった。
あとはセリカにかえりの報告しないとな・・・
「旦那様・・・顔がにやけてますよ」
レオンが退室してから・・・シンシアは夫にそう声をかけていた。
「そうか?」
「ええ。レオンが無事で安心したといわんばかりのお顔です」
「むぅ・・・そうか・・・」
確かに内心そんな気持ちがあるからだろう。ライルは自分の顔に手をあててから妻に向けて「けど・・・」と言葉を発した。
「お前もだいぶ穏やかな顔になってるぞ」
「そうかしら?」
「ああ・・・さっきまではレオンが遅くてかなり心配そうな顔をしていたからな」
その言葉に二人して笑いあうーーー結局のところ、二人とも、レオン本人の前では出さないだけで、レオンが無事で帰って来たことに心底ホッとしているからだろう。
「レオンは・・・いつも私の予想より早く成長している」
ライルはそう言って懐かしさむように視線を細めた。
「あいつに・・・ミーシャにそっくりな私達の息子は・・・」
その言葉にシンシアも懐かしそうな表情を浮かべて言った。
「本当に・・・彼女にそっくりに育ってきて・・・あなたったら一時期そのせいでレオンにも私達にも負い目を感じてあんな荒れていたものね」
「それは言わんでくれ・・・」
かつての自分の所業に頭を抱えるライル。
「私も色々余裕がなかったんだ。私が彼女を・・・ミーシャを娶らなければ、レオンも私達も・・・」
「あなた。それは絶対に言っちゃダメなことよ」
その夫の言葉にシンシアは真剣な顔で言った。
「私も彼女のことが好きだったし、あなたが彼女のことも愛していたのは知ってるーーーだから絶対にそんなことを言っちゃダメ」
「そうだな・・・すまない」
妻の言葉にライルは頷いて言った。
「私達の息子は順調に育っている・・・ミーシャもきっと向こうで見守ってるはずだしな」
今は亡き最愛の妻の一人に想いを馳せてそう呟くライルにシンシアは無言で隣に行くとそっと手を繋いだ。




