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〜私たちの物語〜
あの夏の夜。
彼女は確かにそこにいた。
幽霊や幻なんかじゃない。
確かにそこに存在していた
「かこー。起きてるの?」
私を呼ぶ、いつもの母の声がする。
昔の、遠い昔の夢をみた。
…なんだかとても、不安になった。
彼女を忘れてしまうのではないかと
今でもはっきりと覚えている、あの夏のこと。
覚えているのに、覚えていない
いつか、本当に忘れてしまいそうで
すでに、私以外の人は誰も、
彼女、
紫晴のことを覚えていないのだから。
まるで、最初からいなかったかのように、
私の、妄想、あるいは夢だったかのように。
でも、私は紫晴と約束した。
この約束を私が忘れることはない
これは本当にあった私たちの物語。。
あの夏から、多分、12年の月日が流れた。
当時私はまだ高校2年生だった。
あの日も、今日のように母の声で起き、
準備をして、いつも通り学校へ行った。
いつもと変わらない朝。
いつもと変わらない学校。
そこでたった1つ違ったのは、
紫晴がここ、星蘭高校へやってきたことだった