実際異世界にきたらチートより人との繋がりが大切だ
お楽しみください!
死んだ……26年間の大谷 健斗としての人生はここで幕を閉じた
誰を助けたわけでもない、女の子?男の子?女子高生?お婆さん?たとえ誰が何に引かれようとしてたとしても俺は助けるなんて選択はしない、なぜなら誰かのために自身が犠牲になるなんて馬鹿のする事だからだ、と俺は思ってたからだ
そう、俺はこの高一からの10年間そう生きてきたんだ
高校一年生の二学期の頃、何となく見たSF映画に感化され、クラスでいじめられている子を助けた、
俺は現実的に考えてこのクラスでいじめはなくなるとなぜか考えてしまった
本当に現実的に考えたらそんな事有り得ないのに
人間とは人を下に見なければ生きていられない生物なのに
しかも「大丈夫か?俺は君の味方《王子様》だぜ?」とか言ってたしな
その頃俺は高校デビューをしてノリに乗っていた、その頃の友人が言えばそこそこイケメンだからだそうだ、今思えば尻軽な彼女をもち、薄っぺらい友人達もでき、何というか…調子に乗っていたそう、調子に乗っていたのだ、だからこそくだらない人間の作ったしょうもない空想の物語になんて感化される
助けた後、確かにその子には感謝された、しかし目は感謝なんて感情は浮かんでなかった、記憶が定かではないがむしろざまぁみろと言っているようだったと思う
ありがとうと言われて自己満足だかすごくその時は嬉しかった、しかし
その子は次の日に引っ越したようだった、聞いても誰だ?そんな奴いたか?と言われてるあたりから俺のいじめは始まっていたのかもしれない
次の日学校に行くとターゲットは当然の如く俺に変わっていた、最初こそ友人や彼女なんかも俺に気を使ったりつるんでくれたりした
一週間経った頃だ、俺の彼女だった尻軽女はいじめてきた奴らの彼女になり、薄っぺらいながらも友達だと思ってた奴らは我関せずといったような反応を取ってきた、人間ってこんなもんだと絶望を感じた瞬間である
そこからは酷かった、負の連鎖ってやつだ、何をしてもうまくいかない、挙げ句の果てにはうまく行くとは思えない、だが俺はそこで諦めて自殺できるほど行儀がよろしくなかった、
俺は高校を出てから就職をし見返してやろうと思い必死に努力をした、最初の方は俺の死んだような目を見て上司には理不尽に怒られたがそんなもんじゃへこまない、あの頃に比べたらと思うと悪意なんて起きない、
そして10年がすぎ、役職もランクアップし、本当の親しい仲間はできなかったが夢のマイホームなんかもできたりした、ようやくここからが俺の人生だ!と思ったりなんかした瞬間これだ、しかしいくら車に引かれたといっても痛みすら味合わず死んだと認識できるのはどうなのだろうか?
何で死んだのかわかるのかって?そりゃお前みんなおなじみの“白い部屋”にいるからだよ、ここから俺の第2の人生が始まるってか?まぁ、それもいいのかもしれない、あんなクソみたいな世界よりはな、女神とやらが出てくるのであろうか
「初めまして、ボクは転生を司る女神、ラスト様の部下であるセラフィムさまの部下の日本転移部門のライトと申します」
「えっ?女神の部下の天使のまた部下?思っていたのと違う、こういうのって女神さま直々じゃないの?」
「いえ、それは創作物だからでしょう、仮に一国の王自身が指揮をとりますか?それこそ悪戯の神さまなどはやるかもしれませんが転生や転移などは有り得ません」
「いや、いけるいける、だってよく見たもんそんな話」
「ですから創作物でしょう、貴方はたしか人が嫌いなのではなかったのですか?それこそ人が作った映画も」
「は?アニメとか漫画をバカにしてるの?確かに作ったのは人かもしれない、だが神の様な手や頭脳を持つあの方たちはもはや半神、むしろ神であろう」
「そんなことはどうでもいいのです、ですからボクは貴方を異世界に転移させるためにやってきたのでさっさとされてください、常にここは人員不足なんですから」
「まぁよく人って死ぬしなぁ、何人かは忘れたけど結構な人数だ、しかし転移なのはなぜだろう死んだなら転生じゃないの?」
「えぇ、まぁそこはランダムなので、死んだらとりあえず天国か地獄に振り分けられ、そこから天国か転生・転移に振り分けられます」
「じゃあ転生とかした人結構その世界にいたりするの?」
「被らない様にしてますが流石に正確には履歴を見たりする暇などないので何人かいる場合もありますね、生きていたらですが、っと本当に時間がありません、では飛ばしますのでいい旅を」
チートとかあるよね?大丈夫だよね?
「装備一式と注意点をその袋に入れておくので頑張ってください!」
なーんか釈然としないが俺は異世界に飛ばされる事となった
目を覚ます、周りを見回すと、木の椅子に俺は座っている様だった、
後々わかるが俺の家を用意しておいてくれたらしい、ありがたい事である
「ステータスオープン」
何も起きない、よくよく考えればわかる事だ、そんなもんで自分の強さとかわかったら学校の身体測定とか要らないよな
注意点を読むと絶望に陥る
その1、俺にはチートがない
その2、地球から来たいわば部外者な俺は魔法を使えない
その3、あとは頑張れ
使えねぇ…その一言に尽きる、剣と金は入っていた、金はどう使えるのかはわからないがチマチマ使っていこう、どこまでも意地汚くだ!まず俺の憧れ、ギルドに行ってみるか
ない!ない!なんで!?俺は困惑したので失礼だが嫌々ながら通りがかった老人に話を聞くと、魔物はいるが国の騎士団が全て刈り尽くしているのでそんなもの必要ないとのことだった、まぁ素材なら国が買ってくれるらしいがな、
そしてその爺さんは聞いてもいないのに今の騎士団長の話をされた、それは美しく、龍をも屠る騎士なのだそうだ、しるか!だから人と話したくないんだ、めんどくさい
金策を聞くと
金がないなら畑をしろとのことだそうだ…そうだ、狩りにいこうそしてスーパー狩人として名を馳せようと思った
そして現在草原
慣れない剣を持ち、俺は猪の様な生き物に突撃して行く、知ってるか?人は自分が制御できないくらい重いものを持って振り回すと体を痛めるんだぜ
手首がグキッとなり嫌な音がしたなぁと思ったのもつかの間、剣が手から離れ猪のアタマに一直線!ぐさっと猪の目に刺さる、やったか?と思ったのだが野生の生き物が簡単に死ぬわけもなく猛スピードで俺に突進してくる、
咄嗟に我が身に恐怖が宿る
目を瞑る、そしてあ、また死ぬのか…短い異世界人生だったなぁ、と何かを達観し、少し涙で目を濡らす
俺の人生はくだらないクソみたいな人生だ、だがこれで死ねる、本当に死んだらどうなるんだろう、記憶がなくてここで何もかもなくなるのだろうか、ははっ、楽に死ねるといいなぁなど現実逃避のための言葉を脳内でつらつらと並べていく
人は本当に死ぬ自覚ができるとどうでもいい事を思い出すらしい、あの高校で助けた女の子の事だ、確か名前は東 鏡花、いじめられてた理由は…正義感だったかな
「人間くだらない正義感なんてほんっと!持つもんじゃねぇな!!」
この世に生まれてきた事を後悔する様に叫ぶ
ザシュッ!!
何かが切り裂かれた音が聞こえた、
目を開くとそこには黒髪のショートの日本の女性らしき子が金色の鎧を着て立っていた
「大丈夫?私は君の味方よ?」
悪戯っぽい笑顔で言ってくる
そのフレーズで思い出す、脳回路がゆったりと動き出す、そして俺は考える、この子はもしかしたら東 鏡花なのではないかと、あの頃の俺と同じ様に人を助けて生きているのではないか、彼女がいなくなったのは、みんなが忘れさったのは異世界に行ってしまったせいなのだと確信する、あちらはいまこっちの事を知っているのかは知らないが助けられたら言える言葉があるだろう、人が嫌いだろうがなんだろうが言わなければならない、それこそ生きて、生活している意味でもあるのだから
「ありがとう…鏡花さん」
俺はニッコリと笑顔で伝える
「覚えてたのね…大谷君…」
ハッとして彼女はそう答える
彼女は涙を流していた、なぜかは知らない、そして俺の彼女の記憶は間違っていた事を彼女の涙で思い出す、記憶がフィードバックされる、彼女はあの時ざまぁみろなんて思ってなかった、むしろこの後起きる事を思い悲しそうな顔をして涙を流していた、それでも笑おうと必死だった目が俺の悪い感情、お前さえ助けなければと言う感情で書き換えられて行く、思い出とは非情なことに感情によって改変されて行く都合のいい記憶データなのだ
しかし思い出すと同時に人に対する負の感情が段々と洗われ浄化されて行く、
「あぁ、覚えているよ、なんてったって俺は君の王子様だからな」
どうやら俺は彼女に惚れているらしい、動機とかアレだし吊り橋効果ってやつかもしれない、だがもうこれを逃したら彼女としっかりと話し合える機会がなくなるかもしれないと脳が命令してくる、中学生男子のように、告っちまえよ!と
それに乗ってやろうじゃないか、
少し間が開く、そして声をかける
「「あのっ!」」
「俺からでもいいかな?」
「えっ、あっ、うん…」
「よかったらでいいんだが俺と付き合って、いや結婚してくれないか?」
!?!?!?何をイッテルノオレ!?流石に引かれたかな…死にてぇ…
「っ!!うっ、あっ、あのっ、嫌なら今からなかったことにしてもいいけど勿論!私と結婚してください…」
そうして俺たちは結婚した、騎士団員の男どもには文句とか言われたが知らん
神様の部下とやらが用意してくれた家に2人で住み、末長く暮らして行くのである
確かに異世界には魔法やチートやギルドなんてものはないが一番大切なのは人と人との繋がりである、1人では出来ないことも2人や3人で力を組み合わせれば困難に立ち向かっていける、絶望なんて彼女と子供達がいれば乗り越えていけるはずさ!愛の力は実在する!
しかし異世界は思ったより異世界ではなかった
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