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逍遥恋歌  作者: あんかけ
2/6

2.

「暑い」

「暑いって言うと余計暑くなるからやめて」

「じゃあ涼しい」

「どんな神経してるのよ」

理不尽だと言わんばかりの顔をして、けれど団扇を扇ぐ手は止めない。

表情をふにゃふにゃと変える、よく笑いよく話す人。


家のリビングで向かい合って数学の課題を進める8月頭、家族の方針で出来るだけクーラーは付けない事になってる。昔ながらの日本家屋だからマンションなんかに比べたら少しはましかなとは思うけど。

昔から変わらない定位置で、最近は少し手狭に感じるようになったちゃぶ台に向かい合う私達。

腹立たしい事に人より頭の出来がいい彼は私が筆に詰まっている様子を楽しげに眺めながら団扇を動かす。

「そこはね「いい、言わないで」人に教えるのも上手なものだからよく試験前には頼られている姿を見ている、男女問わず。幼馴染が人に好かれているという事に悪い気はしないけれど、どこかおもしろくないように感じる私は狭量な人間なのかとも思う。


「…終わった」

「お疲れさん」

よいしょっとなんて少しじじ臭いかけ声で立ち上がり台所へ。勝手知ったるなんとやら、悠々とした動作で冷蔵庫から取り出したラムネを持ち寄り隣に腰を下ろす。

「ほれ、夏じゃろ?」

「はいはい、夏ですね」

ぷしゅっ

閉じ込められた二酸化炭素を吐き出す音はそれこそ夏らしいなと思う。

ぴりつく炭酸が喉を冷やし落ち着いた所でふと時計を眺めるともう夕方に差し掛かる頃。

「明日」

「ん」

「お祭り、行くでしょ」

自身になのか彼になのか、宙ぶらりな問い掛けに彼は一瞬眠たげな目をまん丸にした後またふにゃりと相好を崩した。それが返事みたいなものだ、なんて分かりやすい人。


事分かりやすさについては私も相当だと彼は言う。気付くのも気付かせるのもたった一人にだけなのだから当然だ、と遺憾の意を込めてからんと下駄を鳴らした。

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