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逍遥恋歌  作者: あんかけ
1/6

1.

雨、強風、横降りの雨粒は傘を物ともせず衣服を重たく彩っていく。

予報では90%の晴れマーク、念のための10%に備えた折りたたみ傘は片手を塞ぐだけの邪魔物になった。どうしてまたこんな日に一張羅をひっぱり出したのかと言えば、きっと今日の占いが1位だったせいだと思う。

駅への道中突然降り出した雨に降られた僕は電車に乗って一息ついたところで自分の状態を改めて確認する。水に強いレザーではなかったはずのトートバッグを見て苦い気持ちが沸いてくる。きっとまた小言を言われるんだろうな、と。


待ち合わせ場所はちゃんと決めてない、けれどお互いの行動パターンがなんとなく分かっているからいつもの所で待っていれば自然と合流出来る。

携帯でつまらないニュースを眺めて5分ほど

「ずぶ濡れじゃん、何してんの?」と抑揚の少ない、けれど不快そうな響きを纏った聞き慣れた声が横合いからかかった。

「この通りですよ」傘をぶらぶらさせながら降参ポーズで答える。

「買い物はもう済んだ?」

「もういいかな、雨降るって分かってたら明日にしたのに」

「止むまで待とうか」

「いい、帰ろう」背筋がすっと伸びた姿勢で駅へ向かいすたすたと先を行く彼女。いつからだろう、あんなモデルみたいな歩き方をするようになったのは。

「ところで、鞄。なんでまだスプレー降ってないの?」ぼけっと立ち止まったままの僕を振り返る彼女、いつもより湿気を含んだ髪がふわりと背を跳ねた。

「…実は買い忘れてた」

「はぁ、ついでだし買って帰ろう」小さく溜息をつきながら進路変更する彼女に僕は駆け寄った。

ねぇ、と顔を見ず声をかける。

何、と答えた彼女に「ユウ、歩き方綺麗だね」

と考えていた事をそのまま伝えた。

少し驚いたような気配が隣から伝わってきて数瞬「ハルがそんなに大きくなるから悪いんじゃない」小さく笑い声のおまけ付き。

「ふぅん、分かるような分からないような」

「別に分からなくていいの、私の問題だから」何が楽しいのか少し上機嫌になった声音を聞いて雨に濡れて沈んでいた僕の足取りも軽くなった気がした。


「傘刺さなくてもいけるかな」

「横着しないの、ほら」

小降りになった雨の中、1つの傘に2人で入る。いつもより猫背になった僕はさっきの言葉を思い出してくつりと笑った。

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