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4話 各自の準備

 マサキたち三人は、とりあえず安全であることを確認すると警戒を解く。

 しかし、皆が避難しに集まり、これから助け合おうしている時に、抜け駆けして必要な物を買い漁っていたのだ。

 そのことに対して後ろめたさを感じており、この女子生徒二人に荷物の中を気づかれたくないと三人はまた警戒してしまう。

 すると、女子生徒の一人であるマリが話しかけてきた。


「お前ら、何でそんな怖い顔してんの? っていうか、何やってたの? ここに散らばってんの、全部お前らのでしょ?」


 マリはそう言うと、マサキたち三人が辺りにぶちまけて散乱させた荷物を指し示す。


「おいおい、決めつけは良くないぜ? 俺たちは今、来たところだ。 それが俺らのものだっていう証拠はないだろ。 むしろ、お前らが何してんだ?」


 マリに対して、ケンタが警戒していたせいか、なぜか強気な態度で嘘の返答をする。

 ジュンは顔を手で覆い、空を仰いだ。

 もう一人の女子生徒のケイは呆気にとられている。

 マリが目をつり上がらせる。


「お前、ウチらのこと馬鹿にしてんの!? 落ちてるのに名前、書いてあんじゃん! 舐めてんの!? その態度もムカつくんだよ!」


 マリは、落ちているものの中で教科書を指さし、ケンタを睨みつけながら怒鳴る。

 ジュンはすぐに思い至っていたのだろう。

 ケンタは羞恥により顔を赤くしている。


「まあ、いいよ。 ウチらはこの辺りの状況を見に来たんだ。 ここだったら、そこそこ見渡せそうだしね」


 マリの言葉に五人全員が屋上から辺りを見渡す。

 近くも遠くも等しく、地震によって変わり果てた世界が広がっている。

 建物は倒壊しているものがあったり、道路は隆起していたり、裂けていたりなどしている。

 マリが悲しい顔をしながら、ため息をつく。


「ウチらはもう体育館に戻ろっか……」


 マリがケイに言う。

 ケイはケンタたちの方を見ると心配そうに尋ねた。


「ケンタ君たちは行かないの? 体育館で一度も見かけなかったけど……」

「ああ、俺たちは……いいよ」


 ケンタは、話しながら体育館を一瞥すると行くことを断った。

 ケイが話し終えると、マリはケイの手を引いて扉に向かっていく。

 いつの間に移動していたのだろうか、マサキが扉を開けて待っていた。

 マリたちが扉の所まで来ると、ジュンが質問を投げかけた。


「待って! 最後に教えてくれ! 拘束した異常者はどうしたんだ?」

「拘束した異常者ってあの人たち? 危ないからって、体育館の倉庫に監禁されてたよ」


 ジュンの質問にケイが答える。

 ジュンが礼を言うと、マリたちは出ていく。

 マサキはマリたちが出ていくのを確認すると扉を閉め、流れる動作で鍵を閉める。


「ちょっと、どういうつもり!? 何で鍵、閉めたの!? 開けろよ! 開けろよぉ!」


 扉を閉めた後、鍵を閉める音まで聞こえたのだろう。

 怒ったマリが扉を騒々しく叩きながら怒鳴り声をあげる。

 問題を起こしたマサキは困った顔をしているが、どうやら扉を開けるつもりはないようだ。

 ケンタはマサキの行動を褒め、ジュンは苦笑している。

 そうしている間に、マリは手が痛くなってきたのか、扉を叩くのをやめ、最後にもう一度罵って去っていった。



 ☆★☆★☆★☆



「ハハハっ、俺、お前のそういう割とゲスなところ好きだよ」

「それ褒めてないよね……? でもまあ、早く消えてほしかったけどね。 荷物の中身とか知られたくなかったし」


 ケンタはマリに怒鳴られたことを少し気にしていたのだろう。

 マサキがマリに対してしたことが嬉しかったらしく、ケンタは上機嫌に笑っている。

 マサキはそんなケンタをウザったそうにしている。


「そうだな。 早くどこかに隠した方が良いな。 あの上とかどうだ?」


 ジュンが屋上よりさらに少し上の、塔屋の上の部分を指さす。

 マサキとケンタはそれに同意する。

 本来、あるはずの梯子がなく、以前はあったであろう梯子の跡だけがむなしく残っている。

 きっと、昔の先輩がいたずらで故意に壊したか、経年劣化により脆くなったのを処分されたりしたのであろう。

 一番体格のよいケンタが、三人の中で一番身長の低いジュンを肩車して荷物を塔屋に載せていく。

 ジュンが三人のリュックを上に載せようとする時に、ぐらつく体を支えるのに筋力を使っており、ケンタは苦しそうな顔をしていた。

 辺りに散乱させていた荷物も塔屋に載せ終えると、マサキとジュンもケンタを土台にして塔屋に上がり、荷物を整理していく。

 そして、あることに気づく。


「俺はどうすればいい……」


 ケンタが悲しそうな顔をしながら、塔屋の上にいる二人を見上げている。

 ケンタが困っている通り、ケンタが上る手段がないのだ。

 椅子や机などを持ってきたら、勘の鋭い奴が来た時に塔屋に置かれた荷物に気づかれてしまうかもしれない。


「縄だ。 確か、技術室にあったはず」


 マサキは思いつくと屋上に飛び降りる。

 ジュンは三人のリュックの中身を空にして、リュックを持って屋上に降りた。


「どうせなら各自で武器になりそうな物も確保しとこう」


 ジュンはそう言いながら二人にリュックを渡した。

 二人はその意見に賛成する。

 三人全員がリュックを持つと、屋上を出て別れた。

 マサキは始めに技術室で縄を手に入れると、運動場の倉庫に向かった。

 倉庫に着くと、扉が閉まっており、鍵が施錠されていた。

 倉庫はスライド式の金属製扉であるが、扉自体の厚さは薄く、脆い作りになっている。

 マサキは深呼吸すると、扉に体当たりをして壊す。

 勢いで倒れた痛みに顔をしかめながらも、金属バットを太いのを中心に三本ほどリュックに差す。

 倉庫から出ると、ふと開かれている校門に目が留まる。

 あそこから新しい異常者が入ってきたらという考えが頭をよぎりゾッとする。


「閉めた方が良いよな」


 そう呟くとマサキは校門へ駆けつけ、重たい門を引っ張っていき、閉める。

 門を閉めると屋上へと戻っていった。

 

 

 

 





 

 

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