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3話 足りない情報と今後

「ああ、俺が追い掛け回されたって話したの覚えてるか?」


 そう言われてから、ジュンはケンタが公園で話していたことを思い出す。

 朝、目の前で人を殺された衝撃もあって、言われるまで忘れており、思い出すことはなかっただろう。


「それがどうした?」


 ジュンは続きを促す。

 なるほど、自分を襲ったのも異常者だったのかもしれないとケンタは考えていたのだろう、とジュンは予想をつける。

 だが、異常者のことならもう既に知っているため、今更そんな話をしても無意味であろう。

 ジュンは話を振っておきながら、ケンタの話をどうやって早く切り上げるかを考え始めた。

 長い付き合いもあって、そんなジュンの心境を把握しているのか、ケンタは苦笑しながらも話を続ける。


「そいつは……走ってたんだよ」


 ケンタの言葉にジュンが目を見開く。

 いらない情報だ。

 いや、正確には真実であってほしくない情報だ。

 今、何が起こっているのか分からないまま、異常者の危険性が増していることだけが分かる。

 悪い情報を聞きたくない。

 ゆえに、ジュンの返した言葉は


「……走ってた? そいつは走ってたのか? 俺が見た異常者はどっちも駆け足程度の速さだったぞ。 ってことは、そいつは普通の人だったんじゃないのか?」


 否定だった。

 ケンタは首を横に振ると真剣な顔で答える。


「おそらく異常者だ。 事実、そいつも目が白かった」


 その情報にジュンだけでなく、マサキも動揺する。

 ジュンは尚も自分が見て得た情報と合わせて、なんとか否定できないか考えているようだ。

 その様子からは納得できないというよりも納得したくないということが伝わる。

 ここで、マサキが口を開く。


「あいつら、まるでゾンビみたいだったよな……」

「それは思ったけど、まだ断定できない」

「だな。 だから、殺さなかったわけだし。 それに、あいつら、死んでておかしくない傷を負ってるどころか無傷だったしな。 いろいろと情報が足りてない」


 ジュンとケンタが批判する。

 異常者について話し合っていると、下で人のざわつきが聞こえた。

 マサキが確認しに行くと、ケンタとジュンもついてきた。

 屋上から下を見下ろすと人が歩いていた。

 校門の方からも散発的だが、続々と人が入ってきている。

 皆、一定の方角へ進んでいるようだった。

 行き先を見ると、体育館であった。

 地震で歪んでしまったのだろうか、男の人が体育館の扉を重そうに開けている。

 地震で住む場所を失った人や安全を求めている人たちが避難のために集まってきているのだ。

 どうやら、高校に来た時に感じた異変は杞憂だったようだ。

 マサキは人の流れを見ていると、ある一点に目が留まる。


「あれって……」


 二人に分かるように指をさす。


「間違いなく異常者だ」

「新しい情報が得られそうだな」


 体を拘束されている者の目が白いことから、ケンタが異常者だと決めつけた。

 異常者を警戒するために複数の人が周りを囲んでいる。

 異常者を拘束する時にできたものか、怪我をしている人たちがいる。

 中には、噛まれたであろう生々しい傷を負っている人もいた。

 ジュンはそこからゾンビと同じような結果になるのか、知ろうとしているようだ。

 マサキは、ぼうっと人の動きを追っている中、何回か拘束された異常者を見つけた。

 すると、後ろから物が落ちる音がした。

 振り返ると、ジュンが自分のリュックを引っ繰り返し、物を辺りにぶちまけていた。


「災害時には物が不足する。 急ぐぞ」


 ジュンの奇行に驚いていた二人は、その言葉を聞くと急いでジュンと同じようにリュックの中身をぶちまけて、屋上を飛び出した。



 ☆★☆★☆★☆



 三人は近隣のコンビニへと向かった。

 幸い、今回は異常者と遭遇することなくコンビニへ辿り着くことができた。

 日持ちする水や食料といった重要なものを中心にそろえていく。

 二件目のコンビニを回った所で、三人は思い出したように家族へ高校に泊まると連絡した。

 高校に戻ってくると、三人は今後のことを話し合いながら屋上の扉まで上がっていった。

 だが、屋上の扉に到着すると扉越しに人の話し声が聞こえる。

 急いで屋上を出たせいで、鍵を閉め忘れたのだ。

 ケンタが身構えながらドアノブを捻り、ゆっくりと扉を押し開けていく。

 マサキとジュンも警戒している。

 





 そこにいたのは、制服をきた二人の女子生徒だった。


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