004 虎の日
泣いてばかりのクライこと俺は、この世界に来てからというもの…
今日ほど笑顔で過ごしたことは無い。
なんと言っても人が来たのだ!!
漆黒の長髪に火の様に紅い双眸に黒づくめ――暴虐の美女以外にも、ちゃんとこの世界に人類はいたのだ!一人ちょっと人類かどうか分からない喋る虎がいるが、それも合わせて4人もの人が家に来たのだ。
マスターは物品売却依頼や報告があるとかで、茶髪ワックスで固めたようなビジュアル系な髪型のジーノという髪も眼も茶色の、革製装備の男と、俺がこんな風に生まれてきたかったという優しい雰囲気の金髪碧眼のエリック、そして兜を脱ぐとキリッとした美人であるゼルさん達と家の中で話していた。
家に椅子は4脚しかない。そして商談には全く興味がないという感じの強面の立って歩く虎が今俺の前にいる。
「おれ、クライいう。ますたぁ、おれ、テイムしたです」
虎男は首を傾げていたが、しばらくすると謝るように手をデコに、いや虎なので眉間なのだろうか、に置いて、しゃがみ込み目線を合わせてくれた
「・・・俺はギュンターだ」
やはり虎だけあって話すのは苦手なのだと納得した。
俺は、この初めての客人を精いっぱい持て成すことにした。
今やマスターが消し飛ばした一面が畑となっている。俺はその周辺の木に巻き付いて出来ている蔓からできた、アケビに似た、なんだか甘い味がする木の実と、竹としか言えない木の筒の中にある水を唯一の特技である『神の気』を籠めに籠め白湯化させた。木のコップに白湯を注ぎ虎男、ギュンターに渡した。
ギュンターは暇なのか子供の遊びのような持て成しを、強面を分かりやすい程ゆるませ言葉の代わりに俺の頭をワッシャワッシャと撫で、木の実を食べ白湯を飲んだ。
ギュンターはクライからの水を貰って思っていた。
この坊主、本当にカーティスの子供じゃないのか…これだけ小さいのに、よくできた坊主だ…と感心していた、生来体がでかく豪快なギュンターは子供の人気者であった、またギュンターも子供を肩に担ぐなど子供好きでもある。
山ならば、どこでもあるような木の実を出された。瘴気で多少汚染されていようと、ギュンターは快く受け取り口に放った。しかしながら、木の実から瘴気の気配は微塵も感じなかった。不思議に思いながらもクライの頭を撫で、なんの変哲もない白湯も受け取る。
この森の水は瘴気に汚染された毒だ。
カーティスは瘴気の障りを受けない。カーティスの子供ならクライもそうなんだろう。ギュンターは水に関して口をつけるフリをするつもりであった。
しかし白湯を口元に運ぶと瘴気など微塵も感じなかった。そこには、かつて冒険により苦労の末たどりついた妖精が住まうの泉のような気配…いや、それよりも清らかな何かを感じ、ギュンターは、それを飲んだ。
クライは不安になっていた。
虎男は口数が少ない。だがニコニコとした強面ながらも優しい人なんだと感じていた。俺のあげた木の実をおおげさなほど美味しそうに食べ、大きな手で俺の全身が左右にゆれるほど撫で、同じ勢いで白湯を飲んだ。
飲んだ瞬間だった
手は止まり、顔は獲物を見定める虎そのものとなり水の入っていた木のコップを睨んでいたのだ。その上、立ち上がり、身振り手振りでそこ待っていろというジェスチャーを、その顔のままやるのだ。
クライは不安になったまま、家から少し遠くにいるここから獲物を狩る虎の如く走り去るギュンターを見送っていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
走る勢いそのままにギュンターはドアを押し開ける
バタンッ!
「カーティス!!なんだあれは!!」
ギュンターは興奮していた。
「…おちつけ。・・まず何があったか分からん内には答えようがない」
カーティスは冷静に告げた。
森の現状報告は特に異常がないという報告にとどめる旨の説明を終え、概ね道具の売却についても話がついていた。ジーノ、エリック、ゼルの3人には今まさに、その坊主、クライのことを打ち明けているところであったのだ。
「おお、そうだなスマン。今な、坊主が俺にお茶、いやありゃ白湯か、そいつを俺にくれた。もちろんここの水だ、フリで済まそうとしたが…俺は飲んだぞ」
「な…馬鹿なギュンター、正気ですか!?」
声を出したのは普段寡黙なゼルであった。ゼルが声をあげるほど、それは異常な行為なのだ。瘴気とは命を蝕む毒素なのだ。冒険者の間では瘴気の濃いところには聖水とよばれる聖属性を付加された水の飲用や、聖属性付加のお守りなどで身をまもるのが常識なのだ。
冒険者であれば瘴気の濃い場所にある水を飲むとは、即ち毒を飲むことと同義であることなど常識だ。
冷静なエリックですら自分のカバンから聖水をだしながら、ジーノに
「帰りの分は、今気にする時ではありません。残りの聖水を!」
と、声をかけ取り乱していた。ジーノもワンテンポ遅れて事態を把握し動こうとしていた。ゼルに至っては解毒の魔法を詠唱している最中である。
「お…落ち着け!みんな俺が悪かった、大丈夫だ落ち着いてくれ…」
ギュンターの声掛けでジーノとエリックは手を止めたが、ゼルは構わず「解毒」と唱えていた。普段は盾役だが前衛の毒でパーティーの動きを止めないように簡単な解毒や回復魔法を使えるゼルは魔法をかけた後、カーティスを睨んでいた。
「クライが白湯を出したんだな?ふふ、よく効いただろ」
カーティスはゼルの視線を無視してギュンターに言った。
「そうなんだ!!普段でありゃ、このクエストのあとは教会直行だ、そこで瘴気払いのメンドクせぇ入浴やら精進料理で一泊だ。なのに分かるか!?俺は今、瘴気のせいで重かった体に微塵も瘴気の毒を感じねぇんだ!」
ギュンターはパーティーメンバーとカーティスに向けて自分の身に起きた変化を説明した。3人は「何言ってるんだ?瘴気の毒にあてられたか?」といった様子だった。
カーティスはタイガーファングの4人に向けて言った。
「ここからの報告はナシだ――ただし…」
カーティスは疑われても面倒であることと、自分の子供という誤解を解くためにクライについて4人に伝えた。
出会い、使い魔化、特技について特に細かく説明した。
「クライには使い魔化の命令として開拓を命じてある。あいつが耕した場所からは、もう瘴気は出ない、注意してみるといい、この丸太小屋と前の土を起こしたところを」
ゼルとエリックが立ち上がり窓を開け畑と呼ばれた家の前を見る。
少し離れたところで黒髪の少年が不安そうに、ちょろちょろ動き回っていたその土地には、魔力感知により魔物の所在を掴むゼルをもってしても白色魔力を得意とし回復や解毒魔法に優れるエリックをもってしても、どう観察しても、そこは『ただの空き地』だったのだ。
「どうやら、本当のようですね…」
呟くエリックにゼルは
「瘴気を感じない」と続けた。
「瘴気の弊害のない私には、何の役にも立たないがな」
4人にとって鉄面皮でクールな印象のカーティスが珍しく、どこか楽し気にそう言った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「クライ!!『中へ戻れ」」
マスターが玄関から大きな声でそう言った。
マスターが、わざわざ、大きな声で…である。
俺は今日一日ずっとワクワクしていたが虎男が家に走ったあたりからヒヤヒヤしていた…そして、ついにその時がきたのだ。
服の端を握りしめ俯き…消え入るように
「はぃ・・・ますたぁ」
そう答えトボトボと歩いて家に向かった。
中に入ると4人が俺を見ていた。マスターは
「クライ『後光でこいつらを照らせ』」と訳の分からない指示を態々命令として俺に出した。
俺は全力を出した。
『神の気』で何ができるのかの実験以上に本気で、だ。
体内に意識を巡らせる。腕を曲げる位簡単に俺は『神の気』を引き出せる。それを体でいえば腹筋に力を入れるように、グッと『神の気』を圧縮させる、全身をつかい溜めに溜め―――解き放った。
「うぉッ眩しいな」
ジーノが素直に感想を述べた。
4人は不思議な面持ちで眩しさに目を閉じていた。光が放たれた瞬間、瞬時に体の重さが取れたのだ。普段であれば宿屋に4泊はできる料金を払い聖水風呂に数時間は浸かるのに、一瞬で体の重みが抜けたのだ。
「普段は目くらましにしかならんな」
カーティスの感想に4人は、どんな顔をすればいいのか迷ってしまった。
「ますたぁ、おわり」
溜めた『神の気』を放出し終えマスターの顔を伺った。どうやら怒っているわけではなく顔見せに呼ばれたようだ。ついでに特技の一つでも紹介しておけと言うことだろう。
「よし、戻って畑を整えてこい」
それだけで怒られることもなく解放された。俺は安心感と4人に俺が覚えてもらえそうだという期待で再びルンルン気分にもどり、アルプスの少女然とした両手を広げた格好で駆けて行った。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
クライが走って出て行ったあとカーティスは水甕の水を指さし言った。
「そこの水は今のアレを水に閉じ込めたものだ。汲んでいくといい。」
「クライの存在は、伏せておいてくれ。見ての通り害は無い。それに使い魔化
できている。問題は無いはずだ。お前たちにも瘴気抜きの経費が報酬となる悪い話ではあるまい」
4人はそれを了承した。
4人が分担してカーティスの調合薬や素材を担ぐ。それぞれの水筒に、まだ中に入っている聖水を窓から外に捨て水甕の水を汲む。
ジーノが「もっと貰っていいか?」と聞いた時
「ここはトイレの水も全部それだ、好きにしろ」
とカーティスが気にも留めないところを見ると4人ともが保存食などを一所にまとめ、水を入れられるであろう容器にいれられるだけ入れ、飲めるだけ飲んだ。途中エリックとゼルが外に出て畑付近の石に魔法をかけ大壺のようなものを作るとギュンターは他の荷物をジーノに持たせ大壺に入るだけ水をいれていた。その様子をカーティスは呆れるように眺めていた。
立ち去るとき背中に壺を背負ったギュンターが俺に向かって手を振り大声で
「また来る!!」
と言い残すと4人は森の奥へと姿を消していった。俺はギュンターとしか話せなかったことを残念に思ったが、この世界でマスター以外の人に会えたこと、虎人間を見れたことなど普段と違う一日を満喫できた。それに何より、今日は武術も言葉の落とし込みもなかったのだ!!こんなにいい日は無い。
4人が去ったあと、水甕からシャワー用の水、果てはトイレの水まで全て汲み足してこいと言われたが、俺は水の減り具合に驚きつつ素直に水汲みに従事した。
なんで水がなくなったかの理由とギュンターが大壺を担いでいたことが俺の中でつながることなく、俺は4人の顔を何度も思い出しながら本を読み、いつも通りマスターの言葉に従いシャワーを浴び、歯を磨き、眠りについた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
タイガーファングの4人は、普段であれば片道5日で帰る帰路を6日と半日をかけて街へ帰った。『神の気』と呼ばれた力を含む水を持ち帰る為だった。
結論から言えば街に着くまでの間に『神の気』と呼ばれる水はカーティスの丸太小屋で飲んだ程の効果は無くなっていた。と言うのも帰りの道中でも水は、その力を発揮して周囲を浄化してしまっていたからだ。そのおかげもあり、4人はほとんど瘴気に毒されることなく街へ帰れたわけだが
水の力は飲んだ瞬間、瘴気による体の重さが吹き飛ぶものから、飲んでから5分程度で浄化する程度に落ちていた。しかし、エリックはメンバーに向かい言った。
「勢いで持って帰って来ましたが…」
エリックは前置きをして続ける
「教会が販売している最上級の聖水ですら、こんな効果はありえません。これはカーティスさんの“クライ君のことは伏せておけ”を守れば、売れないですね」
「なんだよぉぉこんな重かったのによー!!」
ジーノが大声で愚痴を吐く。
ゼルは分かっていた。これは売れないであろうことを。そして帰りの道中ギュンターに相談をしていた内容を言う決心をする。
「…知り合いがいる」
伏し目がちに下を向き、ゼルが口を開く
「教会では浄化できないほど瘴気を吸って…隔離病棟に…知り合いがいる」
ギュンターは子供が言いにくいことを言ったのを褒めるようにゼルの頭をなでる。ゼルが上半身を左右に揺らすほど撫でながら
「ぐははは、そうだな、どうせ金は浄化分が浮くんだ!たまには慈善活動してやるか!?なぁおいどうだ2人とも!?」
一番重い大壺を揺らしながらギュンターがいうと、ジーノとエリックはやれやれといった様子で承知した。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
街はずれ、最早街からは忘れ去られたような場所
そこに、大地の毒――瘴気を吸いすぎたものが集まる場所がある、存在そのものが呪いのように扱われる場所だ。
冒険者はクエスト管理と同等に瘴気の管理に気を付けなければならない。
しかし残念ながら、突如噴出した瘴気や、呪いに憑りつかれてしまい、強い瘴気をあてられる者は後を絶たない。それが一攫千金も夢ではない冒険の代償でもある。
エミルも旅の途中、噴出した瘴気により体を蝕まれ、死を待つだけの日々を送っていた。
かつてエルフの女4人組みで旅に出て、仲間を庇い瘴気を浴びた。その仲間も、この隔離病棟までは来ない。いや…ここに行くと知った時点で互いに今生の別れを告げ泣きあったのだ、来るはずもない。
エミルは想う。
私には自殺する勇気もありません…病院に払う聖水代も…もう底を尽きました。
あぁ願わくば、再び森で歌い、仲間と踊りたかった
願わくば…恋をして…子を成したかった
エミルは、明るい性格であった。煌く金髪に輝く緑の瞳、眉も睫毛も美しい金色。その金色を引き立てる白く澄んだ肌、人の里にて亜人であるエルフの扱いは平等とは言えない中であっても、彼女の明るさと美しさは多くの人から人望を集めていた。
そんなエミルだが今や肌は灰色となり、目の下にはハッキリと黒いクマがうかがえる。腰まであった自慢の長髪はバサバサになりシーツの上に切れ毛が散っている、ほぼ寝たきりとなり今やトイレにいくために立つことも辛くなっているほどに衰弱した彼女にかつての面影はない。
冒険者は瘴気隔離病棟を死に行くものから合法的に財産を吸い上げる監獄だと言う。教会の聖水はランクもあるが安いものでも1本が昼食1食分程度にはなる。延命のためともなれば安物では済まないのが現実だ。
エミルは涙を…もう流せなかった。
泣きたいけれど、涙を流せるほどの生命力がもう無いのだ。
コンコン
この狭い個室のノックをするのは聖水と食事を運ぶ看護師だけだが、この時間には来ないはずだった。
直後、聞いた覚えのある声がした。
「入る・・・」
ゼルはそう言い放つと返事を待たずエミルの部屋へ入った。
部屋は悪臭に満ちていた。別に汚物に塗れていたわけではない――死臭
死に纏わるような匂いがしたのだ。ゼルは顔をしかめることなくベッドの脇に立つと
無言のままエミルに瓶の中の水をぶちまけた。
「…なっ。。」
力なくもエミルは声を上げた。
「飲め」
ゼルはエミルの顎を掴み無理やり水を口に流し込んだのだ。エミルは無い力を振り絞りほどこうとした。しかし衰弱しきったエミルと現役冒険者のゼルでは抵抗など無駄でしかない。
エミルは瘴気に侵され魔力も枯渇している、成す術などないのだ。
「ゴホッ…ぐ…な…なにをするん、ですか」
水をぶちまけられ、顎をつかまれ水を飲まされたのだ、抵抗しようと、たとえ咳き込もうと無視してだ。
「ゼル…貴方は、こんな私に…なにを」
エミルから涙が溢れた――
突如来た顔見知り。いやダークエルフの中では唯一友人と呼んでいたゼルが、こんな理不尽なことをしてきたのだ。どうせ死ぬのだから何をしたって構わないというような扱いで
「うっ…ぅぅ…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
エミルは動けない自分の情けなさを噛みしめ顔を覆い泣いた
大粒の涙を流し大きな声を上げ、子供のように力いっぱい咽び泣いた
私はダークエルフだからって差別したことなんて無いのに…エルフがダークエルフを差別するからって、死に行く私に最後にこんなことして、仕返しのつもり!?
エミルは一頻り泣くと突如として立ち上がりゼルに向かって勢いよく平手を振った
「馬鹿にしないでください!!!!」
そう声を上げ振るった平手をゼルは防ぐこともなく顔で受け止めていた。
ゼルは鉄のような色の瞳から涙が溢れていた。
「良かった・・・エミルが元気になって」
「・・・・・・えっ?」
エミルは我に帰った。
――この日、隔離病棟は空になった。
全員が完治したのだ。
タイガーファングは分担作業をした。ジーノは調合薬を職員の食事に混ぜエリックはマスクを被り職員を魔法で眠らせた。ギュンターとゼル、そしてエミルはエリックが提案した「完治させます。私たちの情報を口外しないことを守れるなら」と患者に約束をつけ、カーティスの家の水を飲ませて回った。
ギュンターの冷静な実証実験により、一人コップ半量で感知すると判明したため100余名いた患者全員の瘴気を払うことが出来たのだ。
助かったものから口づてに伝わる。決して自分を救ったものに迷惑をかけないように……しかし、感謝が伝わるように…と
後日、人々は、この日の事件を『虎の日』と敬意の念を込め、そう呼ぶようになる。
直接的ではないが、クライがこの世界に来て起こした初めての事件であることは知る由もないだろう…
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
エミルはギュンターの前で膝をついていた。
ゼルにより助かった命に対する礼では無い。
「お願いします。私を仲間に加えてください」
もう冒険者時代の装備は無い。今は多少の魔法が使える程度である。本来、同程度の実力や役割分担により組まれるパーティーだ。無理を押す形で頼み込んでいた。
「命を救っていただいた恩を返させてください」
エミルの性格をゼルは知っている。明るいだけではない『律儀』
ギュンターは2つのことで困っていた。
「俺じゃない、ジーノに頼め」と何度言っても、ギュンターに頼むからだ。
もう一つは『神の気』の宿った水を運んだだけだということを伝えられないことだった――が2つの悩みはアッサリ解消された。
「おう、いいぞーよろしくな」
と軽く言うジーノ
「あの水を貰った所に再来週また行く」
と秘密を暴露するゼル
「お・・・・おまぇらぁぁぁぁ!!!」
遠くからがガォォォ!!という虎の雄たけびにしか聞こえない声でギュンターは2人を説教している。エリックは「こうなるからギュンターがリーダーだと思われるんですよ」と、人ごとのように眺めていた。
「ありがとー!」エミルは笑顔でギュンターに飛びついていた。
4人組であった『虎の牙』が5人組みになった瞬間である。