仲間達 2
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サキが話を始めようとした時、俺の脳内に圧縮された情報が外部から差し込まれる。
情報の中身は動画だ。
脳内で自動再生された情報は、終了するまで実際には0.1秒もかからなかったと思う。
だが情報量は動画換算で優に5分分程度はあった。
瞬間的に再生されたのに何故か俺には中身全体が理解できた。
内容を理解すると俺は自分の思い違いに気がつかされた。
俺は悪いクセでよくこういう誤解をする。
ちらっと周りを見るとエリがあわてて目をそらす。
脳内に差し込まれた動画はエリが発信元だろう。彼女の役割名が“コミュニケーター”とはよく言ったものだ。
そしてサキが、1行分の自己紹介を終わった時に俺は割り込んだ。
「昨日は慌ただしくてお礼が言えなかった。命を救ってくれてどうもありがとう。」
サキの仕事は、契約者候補である俺の安全を確保し、契約の締結をする事。
俺が死にそうなら助けるのは当然ながら彼女の仕事だ。
だけどエリが脳内に送り込んだ、俺を砲撃から守って助けようとしている時を記録したサキの映像は、今にも泣きそうで必死だった。
サキはこういう性格だったんだ。別に任務だから助けたんじゃない、死にそうな人間が目の前にいたから必死で助けた。俺の思い上がりかも知れないが警護対象として陰から、ある期間守ってくれてたんだろう。その為の思い入れもあったのかも知れない。
命を救ってもらったお礼は、俺という個人がサキという個人にしておくべきものだった。艦隊から、お互いに押し付けられている仕事とかとは関係ない。
俺のお礼の言葉を聞くと、サキは不意打ちを受けたような表情で(何故か今回の思考は読めてなかったようだ)顔をそむけながらボソッと言った。
『助かってよかったわ。』
う、可愛すぎる。エリには後でお礼言っとかないと。
とりあえず、昨日の喧嘩の気分は引きずらなくて済みそうだ。
◆
『ではあらためて。私の役割名は、“プロテクター”ってこれはもう知ってるよね。 この役割は司令官着任後も継続される。 司令官自身への脅威を排除するってのが基本的な仕事内容。
地球で言うところのボディガードみたいなもの? とにかく守ってあげる。
ただ、同時に一人で一個の戦術単位でもあるんで、本来はあんまり望ましい状況じゃないんだけど、もし白兵戦なんかが起こったら役に立てると思う。それなりの武器を装備しているから。
以上』
強そうなお姉さんってのはもちろん認識してました。
アレックスがあわてて会話に割り込む。
『サキ。謙譲の美徳というやつなのかもしれんが、それだけじゃあ司令官が判断を間違える。明らかに説明不足だ。
司令官。サキは極めて強力な地上戦力だ。
“敵”が司令官を消去する為に、何故戦艦クラスを送り込んだのか理由を考えてみて欲しい。
“プロテクター”が展開した領域内では、ほぼ全ての物理攻撃やエネルギー攻撃は無効化される。
レーザーや質量弾や爆撃も核攻撃でさえ、効かないってことだ。無効化の範囲は限定されるが。
例外として一部の戦艦クラスの船で運用できる“情報破壊兵器”、つまり今回、敵が司令官に対して使った空間の持つ情報ごと破壊する兵器、に対しては破壊力の減衰はできるが完全には防げない。
ただしそれでも“プロテクター”の減衰能力は重巡クラス以上の船でないと持っていないものだ。
通常の地上兵器ごときでは不可能な能力だ。
また“プロテクター”の攻撃能力は、射程は極端に短いが、威力自体は重巡クラスに匹敵する。
それだけの性能を持つのだから“プロテクター”は極めて高コストで数が限られる。
使われている技術は、“本部”の“お偉方”が使用制限をかけていて量産は出来ない。
その為、辺境配備の艦隊に普通なら虎の子である“プロテクター”は置かない。司令官は運がいいと思う。
・・失礼。気分を害するつもりは無いんだが、中央から見ればやはり地球は遠いので、辺境という扱いになってしまう。
辺境では“コミュニケーター”が司令官の警護を兼任する事が多いんだ。』
エリが口をはさむ。
『 “プロテクター”ほどではありませんが、私“コミュニケーター”にも戦闘能力はあります。
私達の持つ兵器の中の重戦車と同程度の攻撃・防御能力ですが、サキが手を離せない状況でしたら、私でも何かお役に立てるかもしれません。
“プロテクター”が展開している状況で、私の戦闘能力程度では邪魔にしかならないので、先ほどの説明では省略致しました。すみません。』
お嬢様っぽいエリが戦闘しているところをつい想像してしまい、良いかも・映えるかも・と思ってしまってすいません。
サキの動画を送ってくれてありがとう。