第三章
ぼくは、年末も、走っている間も、大きなアクシデントがなく、無事に走り終えた。
ぼく個人の区間成績も、チームの総合成績も、真ん中より少し上ぐらいだった。
ぼくは今回も、4区を任された。
4区は、フルマラソンのおよそ半分ぐらいの距離で、各チームの『エース』と呼ばれる選手が多く走る区間だ。
フルマラソンで活躍するような、有名な選手たちの中で、ぼくの力不足を痛感させられた。
夜になってから、ブログに頂いたコメントに目を通す。
『お疲れ様です。中継所でタスキを渡すシーンは、何度も再生して見ていますよ』
ああ。
由梨絵ちゃんからだ。
チームとして上位でも下位でもなく、真ん中あたりの順位だと、テレビ中継にはなかなか映らない。
ぼくがテレビに映ったのは、おそらく、タスキを受け取ったところと、次の中継所でタスキを渡すところぐらいだろう。
しかも、どちらもほんのわずかの時間。
繰り返し、再生して見てくれているとは、なんと嬉しいことだろうか。
……いや、調子に乗ってはいけない。
ぼくだけじゃなくて、ぼくのチームの人たちの、それぞれの中継所のシーンかもしれないのだ。
『応援ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
体力が回復したら、コメントを下さった方には改めて個別に返信を書きます。おやすみなさい』
あいさつの言葉をブログに書いてから、寮の自室のベッドに横になった。