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第一章
由梨絵ちゃんは、陸上競技の長距離の選手として活動しているぼくとは違う会社の、女子陸上部の部員だった。
小柄で、目がクリクリして、ショートカットがよく似合う子。
姿を全く見なくなって、数ヶ月が過ぎた。
お互いの寮が近かったから、練習に使うコースも一致していたのだ。
練習場所や大会などで顔を合わせることは度々あったが、連絡先を教え合ってはいないから、今の状況を直接聞くことができない。
由梨絵ちゃんと同じ部の人に、消息を尋ねるのも、気恥ずかしい感じがする。
ぼくの気持ちが、バレてしまいそうだから。
そう。
ぼくは、由梨絵ちゃんに片思いをしている。
プライベートで二人きりで会いたいと思っていたが、タイミングよく誘うことができなかった。