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プロローグ。
ーーそれぞれの人に、それぞれの生き方がある。
それぞれの価値観があり、それぞれの行動理念がある。
だから世界は残酷だし、面白い。
そうだね。例えばここに林檎があるとしよう。一個だけだ。他には何もない。
そこに100人の人がやってきた。さてどうなる?
ーーふふっ。君には少し難しい話だったね。まあいい。いずれ答えは分かるだろうからね。
じゃあ今晩はこれでお暇させていただくよ。次に会う時はーーーいつだろうね?
「ーーーはっ!?」
夢!?
というか、今何時だ!?
ーーーー10時40分。
致命的な、遅刻。
「あにぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
しまった。寝坊だ。しまった。
大慌てで着替えて、朝飯のカレーパンを咥えて学校に行く。走る。
腕時計で時間確認。死亡フラグにジャストミート。
そこで気付く。曜日見る。
「……休みだ。」
しまった。日曜日かよ。なんだよこの野郎。急いで損したよ。
沸き上がる敗北感に打ちひしがれながら、俺は帰路に着いた。
今日は7月8日。太陽が照り付けている。
椿咲高校に、長い長い夏期休業が訪れようとしていた。