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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

誰かわたしを強く愛して

作者: 時ノ音 紅蒼紫


わたしは誰かに愛されたい。

強く、強く。

わたしがいなくちゃ生きていけないくらいに。

愛されたいの。


イケメンでハイスペックな彼に?

おとぎ話のような戯

事でも、わたしはそうなることを夢見ているわ。

でもね、もうそうじゃなくていいの。小さい頃願ってた白馬の王子様なんていらない。

わたしが欲しいのはわたしを愛してくれるひと。溶けていくほどドロドロに。骨の髄までわたしを溶かしきってくれるひと。わたしをぐちゃぐちゃにしてくれるひと。

ほしいの。わたしを求めるひとが。

だれかお願い...わたしを愛して。


わたしに向けられるのは、偽りだらけの空間。

冷めた家庭。繰り返される暴力。


外面だけはいいあいつらの言動が、外に漏れることは決してない。

制服の下の古傷たちに、誰もなにも気付かない。

学校だって嘘だらけ。

いい成績を取って風紀委員に入って、髪も制服も規定通り。先生の言うことに逆らったりしない、優等生。


でもね、それって嘘でしょう?

結局どうせみんなわたしの事なんかていのいい駒だとしか思っていないもの。友達?そんなもの居ないわ。嘘くさい笑みでご機嫌をとる奴等なんて、わたしにはいらない。

これでも昔は居たの。友達も彼氏も。

でも、ね。

わたしの体を見て、傷だらけの体を見て、みんなみんな逃げちゃった。気持ち悪い、そう言って。


家で振るわれる痛みの連鎖。

学校での優等生の殼。

自分が生き残るために必死なわたし。

ほんと、滑稽ね。憐れすぎて笑えるわ。


ねえ、わたしはどこへいったの?

もうわたしは泣くことも出来ない。過呼吸でさえも歯を食いしばって唇を噛み締めて...そうして息を詰めながら生きていくしか出来ないの。

わたしのまわりにあるもので、わたしの物はなにもない。

わたしの代わりに可愛い可愛いわたしの妹に、その全部は全ていくの。わたしは妹の奴隷。逆らっては駄目。自由なんて許される筈もない。

わたしは玩具にもなれない暇潰し。壊れた醜いお人形。


お父さん、お母さん、わたしをみて。

わたしを愛して。


認められようと頑張った。席次だって一位を取った。走って帰っていったら殴られた。

(まい)よりいい成績を取ったから、殴られた。

だからわたしは成績を落とした。

そしたらまた殴られた。

苺に勝てなかったから。家の恥だと殴られた。

生徒会に入らないかと言われた。

けれどまた殴られると思ってやめた。

そしたら苺に生徒会の座を用意しろと言われた。

だからその通りにしたらまた殴られた。

苺は生徒会に入っているのに役立たずって殴られた。

でも、情けで風紀に入ることは許してやる、そう言われて。一番過酷だと言われる風紀委員に入れられた。


わたしは意見が言えない訳じゃない。でも、言ってしまったらわたしは生きていけない。

苺はみんなのアイドルだけど、わたしはちがう。

地味で物を言わない人形。


だれか、だれかわたしを愛して下さい。全てを忘れてしまうほど強く強くわたしを抱いて。

わたしの傷だらけの醜い体を認めてくれるひと。それでも愛してくれるひと。

全てを忘れるほどの快楽を。誰かわたしに下さい。


ヤンデレと呼ばれるひとに、愛してほしい。

強く強くわたしを求めてわたしを縛って...そうしてわたしにわたしがいる意味を下さい。とろけるほど甘く、濃密な時をわたしに下さい。

わたしを愛してくれるひとがほしい。

わたしを見てくれるひとがほしい。

夢だなんて知っているわ。でもそれでも狂おしいほどに求めているの。


誰かわたしを強く愛して。



真夜中の公園。

夜の月はとても美しい。儚くてとても綺麗。

今日はわたしの誕生日。だからお祝いに家を追い出された。今日一日はここで過ごさないといけないの。

キイ...キイ...

ブランコをこぐ。

キイ...キイ...キコッ

ガサガサと音が聞こえた気がした。

ブランコを止めて当たりを回すけれど、誰の気配もしない。

気のせいね。

寂しくて心細くて。人がいることを願ったのだけれど、誰一人いなかった。サワサワと葉っぱのたてる音が怖い。

サーっと風が強く吹いた。

コツ...コツ...

足音が聞こえる。

コツリとその足音はわたしの前で止まった。

闇から伸びる手足。闇夜に赤く光る目。とてもとても妖しくて魅せられる瞳。まるで今すぐ食べられてしまいそうなほど飢えた色の瞳。

ああ、なんて美しいの。

チャラ...

いつの間にか。その瞳の持ち主はわたしの背後に立っていた。

ブランコの鎖を握るわたしの手を、その人は自分の両手で包んだ。

ふわり...酔ってしまいそうなほど濃密な甘い香り。とろんと思考がぼやけてくる。

ふっ、と首筋にその人の吐息が触れた。

「あっ...」

その感覚にびくりと思わず肩が跳ねる。

ふわりと柔らかいものが降り立った。

「あっ...ふぁ、やっ、ああぁあ」

ブチリと皮膚が噛みちぎられて、じんわりと熱がそこにこもる。

ずずっ、とわたしの血を啜る音が艶かしくて、そしてこの痛みがどこか気持ちよくてわたしは目を閉じた。


ああ、今なら別に死んでもいい。


その人の目が色香を纏う。あぁ、あぁ。


もう、これでいい。これでいいわ。


首筋からつっと血が滴り落ちる。その赤に魅せられる。


そう、それでいい。それでいいわ。もっと吸って...わたしの血を吸って...。


ねえ、神様。もしいるのならお願い。

次の世界では幸せに生かして。

わたしを愛するひとを下さい。


ねえ、誰か強くわたしを愛して?






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