始まり36 『孤児院戦闘』
あの後お話もしっかりして、自己紹介をしてもらうことにした。
「私は知っての通り、ルナ・カンザキです。よろしくね。」
俺が自己紹介をすると、次は左側に座っていた子が自己紹介を始める。
「私はハンナ、ハンナ・スタッドです。」
「俺はカイン、カイン・アルソートだぜっ!!」
そうして、一週回ってきてターゲットの子の番になった。
「私は、カナ、カナ・アルステイル。」
「僕は、セイン、セイン・アルステイル。」
「よし、みんなの自己紹介が終わったし、何して遊ぶ?」
「おねーちゃんは魔法を使えるの?」
「使えるよ。」
「見せてー!!」
キラキラとした目で、みんなこっちを見てくる。
「ちょっと待ってね。」
安全で、全員に危害が及ばない魔法を考える。
「『光よ、我が手に集まり、翡翠の色となり、全員を照らす蝶となれ光の蝶』」
魔法を唱えると、光が手に集まり、いくつもの蝶を生み出していった。
「わぁ。」
「きれい・・・。」
その蝶はひらひらと舞い、全員わ包み込むように動く。
「どうかな?」
「おねーちゃんやっぱりすげー!!!」
「きれいだぁ。」
セインやカナもうっとりと見つめている。
そこで悪戯を思いついた俺は、蝶に少しづつ魔力を込めていく。そして、蝶を全員の掌に載せた。そこで俺は、指を鳴らした。すると、蝶は弾け飛び、光を撒き散らした。蝶を爆発させたときに、数人は驚いて尻餅をついたが、殆どの子供はそのまま光を眺め続けていた。
・ ・ ・
「そーれ。」
一人の子供を捕まえて、高い所まで上げて、降ろす。
背中にくっ付いている子供は私の耳を触りまくっている。しかし、それを気にしていると、他の子供たちが騒ぎ出すため、どうしようもなかった。
「おねぇちゃんは魔法を使えないの?」
一人の子供が最初のほうに、私にこの質問をした。この質問で、軽く心がズタズタになったのは言うまでもないだろう。
私、ルナール・セイン・ファブリュートは、残念ながら魔法を使えない。お姉ちゃんは、「私が使えるようになる方法を探すから。それまで我慢して!!」と、言ってくれたが、私が魔法を使える事は無いと直感が告げていた。
「おねーちゃんどうしたの?」
考え事をしていた為、ボーっとしてしまったようだ。子供たちが、心配そうにこっちを見つめてくる。
「何でもないよ。」
そう言って笑顔で、子供たちに答える。
「さて、次は何をしようか?」
・ ・ ・
「そーれっ!」
子供たちは今、絶賛浮遊中だ。
俺が範囲にかける魔法を使って、子の部屋の重力を殆ど無くした。
そこで、ボールを投げたりして遊んでいる。
「わー!!!!」
飛んだり跳ねたりと、子供たちは大忙しだ。
そんな光景を微笑ましいと思いながら眺めていると、違和感を感じた。
この感じは・・・魔力?いや、弱いけど魔法だ!しかも攻撃の意思がある!!
「『盾よ、我らを守れ!!』」
一番詠唱が短く、強度も弱いが、あの程度も魔法なら防げるだろう。
「クソッ。何だってんだ!!」
そう思い外に出ようとして寸前で止まる。
また魔法か?しかもこれは方陣魔法だ!!
「みんな伏せてっ!!」
そう叫び、魔法を解除する。
この場で攻撃されているとの理解が出来ているのは俺だけ、隣りの部屋にはルナがいるが、この攻撃に気が付いているか分からない上に、気が付いていても何もできないことを思い出し、全体を守る事にした。
「クソッ。広範囲すぎてこのまんまじゃ対応が追い付かない!」
そう思い、近くにいた先生に、この部屋の子供を隣に連れて行くように指示する。
「で、でも・・・。」
「いいから早く!!」
状況の判断の出来ていない先生は、俺の気迫に押されて、子供に指示を出し始める。
「状況を判断できない・・・。」
出来れば子供たちから離れたくないけど・・・。
この状況を打開するために、ドアを蹴破り外に出た。
すると、外にいたのは仮面に黒い服の、いかにも怪しい人たちが立っていた。
その人たちは、俺を見た瞬間に逃げだした。
それを疑問に思い、中に戻ろうとすると、地面が光った。
「方陣魔法の発動が今かよっ!」
心の中で毒づきながらも、園内に飛び込もうとするが、魔法の発動のほうが早かった。
その光は、孤児院を満たして消えて行った。
光が眩し過ぎた為、閉じていた眼を開くと、孤児院は紫の気持ち悪い物体と化していた