始まり35 『餌付けww』
教室のようなところが二つあって、その中で俺達は子供たちと遊んでいた。
俺が、ターゲットのいる部屋、ルナはもう一つの部屋にいる。
「おねぇちゃん、おままごとやろー!!」
「つりしようよー!」
「おんぶしてよー!!」
「だっこー!」
「かたぐるましてー!!」
「くらえー!!」
「ぼうけんのおはなししてー!!」
こんな感じで、今俺の周りは凄いことになっている。
ちなみに、一番上のセリフの子はお飯事をしている数人の子の内の一人の子が言った。
二番目は、よく分からない材質だが、何かで出来た魚にヒモでわっかが作ってあり、釣り竿のほうには、針がついている。めちゃくちゃ危ないんだけど・・・。
三、四、五番目は勿論俺の足元に引っ付きまくっている子達が言った。
六番目はこれまたよく分からない材質で出来た剣を俺に叩きつけている子供が言った。ちなみにその剣あたるとかなり痛い。
そして最後のセリフは、同じく俺の足元に群がっている子が言ったセリフだ。
「じゃあ、みんな座ってー!」
そう言って子供たちを座らせる。
「円になって・・・そうそうそう。其処の二人の子、ちゃんとこっちに来て。」
そう言って俺が声を掛けたのはターゲットだ。
二人はこっちに来る気がないようなので、女の子の方を抱きかかえ、男の子の方を背中に乗っけた。
そういえば言うのを忘れていたが、今回のターゲットの二人の子供は、双子であり、上の子が女の子、下の子が男の子である。という事が分かっている。親は生きているが、昔から何かおかしい所を感じ取っていたのだろう、この双子を孤児院に放り込んだ。最初はこの二人もみんなと仲が良かったようだ。しかし、あるときスキルがいきなり発動してしまい、二階となっていた所を破壊してしまったようだ。子供たちは最初はカッコいいとか言っていたが、親が何かを吹き込んだのだろう、この双子に近づく子供はいなくなり、今ではこの二人が近づくと、避けるようになったそうだ。
俺が二人の子を抱えていくと、子供は若干俺から離れたようだ。
「よし、私が冒険のお話をしてあげよう。」
そう言って言葉を始める。
「あそこの山を知っているかい?そう、何処にでもあるような普通の山で、出てくるモンスターはゴブリンや、人食い花、スライムなど、大きくなったら倒せるモンスターばっかりだ。今の君たちじゃあ倒せないよ。倒してみたければ大きくなってギルドに入ってからにするんだよ。」
そこで一呼吸おく。
「まあ、大きくなれば倒せるモンスターばかりの山、私はそう思って、山を越えた村に手紙を届けに行った。しかし、知っているかな?あそこには時々餌を求めてやってくるドラゴンが出てくることがあるんだよ。」
そう言って少し前のめりになりながら話す。
「でもね、私はそれを知らずに、ドラゴンが出てきたとき逃げるための道具なんて持っていなかった。だからそのまま進んで行ったんだ。そして頂上まで着いたから休憩をしていると、後の方で何かが折れるようなバキッ、バキッ、て音が聞こえてきたんだ。何だろうと思って、後ろを振り向くと、向うの方に赤い物が見えたんだ。よく見ようと魔法を使って見てみたらね、その赤いのは・・・ドラゴンだったんだよ。」
そこまで話すと、少し話を止める。そうすると、子供たちが騒ぎ出す。
「ドラゴンだって!!」
「すごーい。」
「ドラゴンって大きいの?」
「大きいよー。」
「知ってる?山よりも大きいドラゴンがどこかにいるんだってー!」
一人の子供が自慢げの話すのを聞いて、そんな奴には会いたくねぇというかいてほしくないと心の底から思ったのは俺だけじゃあ無いだろう。
「ねぇ、お話の続きはー?」
全員がキラキラした眼でこっちを見てくる。
「そうだね。続きを話そうか。そのドラゴンを唖然として見ていたらね。上が真っ暗になったんだ。だから上を見てみた。するとそこにはね・・・。」
ゴクリと子供たちの数人が生唾を飲む音がする。実際に。
「もう一匹のドラゴンが居て、こっちを見ていたんだ。」
「うわぁぁぁぁ。」
キラキラした目でこっちを見てくる子供が半分。疑いの目で見ている子供が半分。
「ん?君たち疑ってるね?よーし、証拠を見せてあげよう。」
そう言って、ドラゴンの鱗である赤い物体を取り出す。
「みんなと会った記念として、これを皆にあげよう。」
小さめの鱗を選び出して子供たちに手渡していく。
「うわぁぁぁぁぁ。」
「これがドラゴンの鱗・・・。」
「かっこいいー!!」
「すげぇ!!!!」
「さっすがおねえちゃんは冒険者だね!!!!」
女の子は鱗の綺麗さに驚きながらも見つめていて、男の子は本気で感動している。
ちなみにドラゴンの鱗から不純物を取り出す魔法(それ以外の用途のない屑魔法)を使って、ドラゴンの鱗はきれいに輝いている。
全員に餌付けが終わって(もちろんターゲットにも)満足そうに俺は微笑んだ。
同じ部屋に居た孤児院で働いているお姉さんの顔が引きつっていたが、別に気にしないことにした。