始まり32 『スキルマスター』
「お姉ちゃん。」
「なに?ルナ。」
「ドラゴンを倒したんだからレベルアップしてるんじゃないの?」
そういえばそうだ。
ルナの言うことはもっともだったので、ギルドカードを見てみた。
ルナ・カンザキ
Lv:35
攻撃力:A(300)
防御力:A(300)
魔力:A(3000)
精神:S(8500)
速度:S(8500)
耐久:A(3000)
魔攻:A(300)
魔防:A(200)
職業:勇者
装備:金剣エクスカリバー、銀剣ブラスターブレード、闇剣デュランダル、黒龍石の手袋、黒龍石の靴、黒き腕輪、旅人の服、詠唱破棄の剣、宝剣の太刀×2宝剣の両刃剣×2、傷だらけのブロンズソード、皮の鎧
特性:光剣の所持者、勇者の加護、深眼(右)、竜殺し、火耐性、闇耐性
「竜殺し・・・。」
「お姉ちゃん、カッコいい!」
ルナの目がキラキラしている為、何か面倒くさそうで隠すスキルが増えたなぁと思っていることは、口に出さないでおく。
「そういえばルナもカード作ってもらってたよね?」
「うん。」
ルナが俺の登録の時も付いて来ていた為、一緒に作ってしまったのだ。
その時に、師弟システムを使ったため、ルナが冒険者として払わなければならない様な物は俺が全部払っている。
「見せてよ。」
「・・・駄目。」
「ええっ!?なんで?」
「お姉ちゃんの能力値が高すぎてなんか癪だから。」
「ひどい!それだけの理由で!?」
「・・・冗談。」
そう言ってルナはクスリと柔らかい笑みを浮かべた。
ルナってこんな表情も出来るんだ。とか思いながらルナが取り出したギルドカードを覗き込むようにして見てみる。
ルナール・セイン・ファブリュート
Lv:1
攻撃力:F(10)
防御力:F(10)
魔力:G(0)
精神:C(1000)
速度:D(500)
耐久:F(100)
魔攻:F(10)
魔防:F(10)
職業:
装備:白き腕輪、旅人の服、
特性:能力使い
ここで俺の目を引いたのは魔力が0という所と、特性にある能力使いという物だ。
「ルナ。」
「・・・なに?」
「この能力使いって何?」
「分らない。」
この能力使いについては本人の自覚が無いらしい。
しかし・・・。
「これじゃ、魔法使えないね。」
「・・・うん。」
自分でこれを見たときから落ち込んではいたのだろう。それに俺が事実を突き付けた事でかなり凹んだようだ。
「だ、大丈夫だよ。ちょっと待ってね。」
「・・・?」
右目を使ってルナの能力使いを検索する。
「・・・これは・・・・。」
「お姉ちゃん如何したの?」
「ルナ。」
「・・・何?」
「能力持ちが見えたら言いなさい。その子を仲間にする。」
「・・・?」
「能力持ちはただでさえ魔法が使えないという特性を持っていていじめの対象になりやすいんだ。その上に能力なんて化け物じみた事を出来ることが分かったらもう周りはいじめなんかで留まらず下手すれば、その人たちを排除しようと動きかねない。それを私の仲間にしちゃえば簡単に手出しは出来ないと思う。」
「・・・待って。能力が見えるってどういう事?」
「ルナ、貴方の能力能力使いは、能力を見分け、弄る事が出来る筈なんだ。でも弄るのは危ない可能性がある。大丈夫だって判明するまで待ってね。」
「・・・分かった。でも・・・。」
「如何したの?」
「そんなに仲間を増やして大丈夫なの?」
「大丈夫。その子達はお城へ送るよ。」
「どうやって?」
「転送魔法を作っておく。それを使ってお城のお兄ちゃんの所に飛ばす。」
「なるほど・・・。」
「分かってくれた?」
「もう一つ聞いていい?」
「なに?」
「能力って何?」
「・・・。魔法より大規模で応用性が利くけど、一つの事しか出来なくなる言わば特化型の魔法。これは、今、特殊魔術として国に扱われているけど、本当は能力という名称があり、差別の壁を作っているものだよ。」
「ふーん。」
「例えば私のこの右目も能力なんだよ。」
「・・・。」
「兎に角、ルナ、貴方には見えるはずだよ。」
「うん、自覚したときから出来る様になってるよ。」
「そっか。」
「・・・お姉ちゃん。」
「何?」
「帰ろう。」
「一箇所だけよってからでいい?」
「いいよ。」
既にお昼は過ぎていて、食べ物を買ってから行くことにした。
この日は、俺とルナにとって、印象に残る一日となった。