始まり29 『初クエストでの災難』
ギルドの職員に教えてもらった通りに進む。
街道をずっと進んでいくと、モンスターがウロウロしている草原がある。其処のモンスターを狩ればいいらしい。
多少魔法も使って走ったので、草原には10分程度で着いた。
「ウロウロしているな、確かに。」
ゴブリンやスライム、人食い花のようなモンスターがちらほら見える。
「それじゃあ、行きますか!」
そう言って走り出し、手ごろな場所にいたスライムを真っ二つにする。それを見て寄ってきた他の人食い花やゴブリンを叩ききる。流石に人間に近い姿形をしているゴブリンを切るときは顔をしかめたし、人食い花は正直気持ち悪いし、スライムはきったときの感触を好きになれるとは思は無かった。
5分程度で粗方片付け終わったので、ギルドカードをかざしてモンスターから戦利品を取っていく。
ここはゲームじゃないから、勿論モンスターに近づいてAボタンを押すなんて事は出来ない。しかし、このギルドカードには便利な所があり、このカードをかざすだけでそのモンスターで売れそうな部位を取ってギルドカードに保管してくれる。これは倉庫も同じで、今自分の持ち物として持っている道具をかざせば倉庫に入れることも出来る。
しかし、倉庫に入っている道具は町の外では出せないらしい。
1分ほどで、戦利品の回収は終わり、草原を突っ切って、山道を進んでいく。
今回魔法は戦闘で使わず、移動または逃走用にしようと思っている。
そのため、移動速度は速いの何の、三十分程度で山の頂上に着き、見下ろすと、麓にある村を目で見ることが可能だった。
「よしっ。」
あと少しだと思い、水分を取り終わると、後ろのほうでおかしな音が聞こえた。
バキッ、バキッ、バキッ。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
「咆哮!?しかもあれは・・・。」
後ろのほうにいたのは、一匹のドラゴンだった。
「おいおい、こんな所で出るなんて聞いてねぇぞ。」
そんな独り言を呟いていると、地面に影が落ちた。
「ん?」
怪しく思い、空を見上げると、其処にはもう一匹ドラゴンがいた。
「おいおい!ありゃ、番のドラゴンかよ!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!」
「・・・逃げるか。」
危険だと判断し、逃げようとすると、前のほうにドラゴンがいた。
「3匹目?」
いやな予感がし、振り返ると、後ろには一匹しかドラゴンはいなかった。
あぶねぇ。3匹いたら逃げることすら出来なかっただろうな。
「てか、挟まれた?」
しかも少しずつこっちに向かってきている。2匹両方だ。
「とりあえず、前のを転ばせて逃げるか。」
そう決めて、前のドラゴンに突っ込んでいく。
木々をうまく使い、ドラゴンから俺の姿は時々しか見えない様になっている。
「そりゃっ!」
朝買ってきた両刃剣を、叩きつけるようにしてドラゴンの足に攻撃する。
足に食い込んで、あと少しで切れそう!という時に、ドラゴンの腕が上から迫ってきた。それを辛うじて回避し、もう一度攻撃する。それを続けていると、ドラゴンが空へ舞い上がった。
「これはヤバイぞ、ブレスだ!」
口を開けている為、のどの奥のほうが見える。そこは赤く光っていて徐々に炎が競り上がって来る。そして一度口を閉じて、その口の炎を吐き出した。
それを待つ間、俺は何もしていなかった訳ではない。炎に強いタイプの障壁魔法を何重にも掛けていた。
「移動と逃走用だったんだけどなぁ。」
ブレスが来る間、障壁の中で何もしていなかった訳ではない。次に攻撃に転じるための準備を整えていた。
「来た。」
ブレスが放たれ、障壁がだんだん削られていく。しかし、障壁は何とか耐え抜き、次に攻撃に転じた。
ブレスが炎だったから、こいつはレッドドラゴンだろう。鱗は鈍い赤だ。鱗が鮮やかなほうが強いなんて思いがちだが、この世界では鈍いほうが強い奴が多い。鱗に不要な成分が段々増えてきたのが、鱗が鈍い色になってしまう理由だ。生まれたばかりのドラゴンは、鮮やかな赤だが、年を取れば鈍くなる。
ドラゴンの中で年をとるという現象は、強くなる、と置き換えて大丈夫だ。
つまり、こいつは結構強いというわけだ。
このドラゴンはレッドドラゴン、つまり、炎を使うドラゴンなわけだから・・・。
「水系の魔法をぶち込む!!」
そう言って、展開を終えて待機状態になっている魔法を次々に放つ。
「『氷撃槍』『水流撃』『氷柱』」
どれもドラゴンに直撃、右の翼と、左腕、脇腹の辺りを損傷したようだ。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
とんでもない音量の咆哮だ。耳を塞ぎ一気に片を付けるため、目の前のドラゴンに突っ込む。
逃げるはずだったのに、まともに戦っちまってる。何でだろうなぁ。
背中に悪寒が走った。これは嫌な予感の前兆だ。そう思い、空中に飛び上がった。
嫌な予感は当たったようで、もう一匹のドラゴンが其処には居た。