始まり1 『白い?』
『汝、名を何と申す?』
「え、俺?俺は神埼雷斗。あんたは誰?」
俺は今、真っ白な世界に居る。そして、頭の中に響いてくる声と喋って(?)いる。
『フム、雷斗か。そなたは何故ここに居るか分かっているのか?』
「分かる訳無いだろ!阿呆!て言うかここは何処だ!」
『まあ、そう声を荒げるな。御主ならあちらに着いてから知れば十分だ。』
「着く?何処にだよ?」
『其れもあちらに着いてから知れば良い。』
「少しは俺に状況を説明する気は無いのか?」
『だから、御主ならあちらに着いてからで充分だ。』
「・・・。ん~、ならさ、あんたについて教えてくれないか?」
『俺か?俺は神に最も近い存在かなぁ?』
「・・・。神様でいい?」
『良いのかなぁ?』
「良いんじゃない?」
『なら其れでよい。』
「えーっと、その神様が俺に何の様?」
『之から俺の物を御主に預けるんだからな、その人間を見ておこうと思っただけだよ。』
「物?物って何だよ?」
『力だよ。御主の望む力と、あちらで生きるための力だ。』
「・・・俺の望む力?」
『そうだ。御主の意識の更に奥に眠っている、御主が真に望むものを力として具現化するんだよ。』
「へぇ~神様ってそんな事も出来んの?」
『俺は神では無いから分からないけど、神様ならもっと凄い事が出来るんじゃないか?』
「・・・もっと凄い事のイメージが俺には出来ないんだが、例えばどういう事?」
『龍神の力や不死鳥の力、他にも世界を真っ二つに出来る程の腕力とか、俺は人間の限界までしか出来ないけど神様なら其れも超えられるんじゃないか?』
「・・・。あっさり言ってくれるけど其れでもあんたの限界は充分凄いと思うんだが・・・俺だけか?」
『ふむ。そう言ってくれるのは嬉しいが、今の俺には何も出来ない。精々人に力を貸してその人間に頼む事だけだからな。』
「何かを俺に頼みたいわけ?」
『うむ。流石、聡明だな。』
「その程度に気付く位の頭は持ってるよ。で、何を頼みたいの?」
『世界を変えてくれないか?』
「嫌だ!」
『・・・流石に即答は凹むな。』
「そんな面倒くさそうな事進んでやる馬鹿が何処に居る!」
『しかし、後の二人はやる気充分だぞ?』
「っ!忘れてた。あの二人か・・・。」
『で、如何する?』
「・・・あの二人だけを放って置く訳には行かないしなぁ。」
『では、引き受けてくれるか?』
「幾つかの質問に答えてくれたらな。」
『答えられぬ物は答えなくていいか?』
「ああ、別にいい。出来る範囲で答えてくれ。」
『分かった。御主は何が聞きたいのだ?』
「まず、ここは何処だ?」
『ここは召喚されし者が私と会える様に作った空間で、其方に繋がった門<ゲート>と召喚陣の間に在るんだ。ちなみに、ここでは時間が止まっている。』
「なるほどね。んじゃ、二つ目あんたは誰?」
『・・・御主と同じ者で、力を失った存在だ。これ以上は言えない。』
「俺と同じ?・・・あんたについては興味深いところが多いが、取り合えず何も聞かずに置こう。」
『・・・感謝する。』
「なに驚いてんの?」
『いや、もっと食いついて来ると思ったからな。』
「食いついて欲しかった?」
『いや、食い付かないでくれた方がありがたい。』
「ん~、色々聞きたいけど、これで最後にしよう。」
『何だ?』
「この頭に流れてくる記憶は誰のものだ?」
『勇者と焔皇と呼ばれた存在の記憶だ。勇者の記憶は代々勇者をして来た者が受け継いできた記憶で九百年分の記憶になっている。そして焔皇の記憶は昔存在した人類史上最強の火属性の魔法使いの記憶だ。』
「なるほど。俺は何人目の勇者なんだ?」
『十人目だ。』
「有難う。とりあえず後はあんたの言うあちらに着いてから調べるとするよ。」
『ああ。死ぬなよ。』
「あれ?そんな苛酷なとこに俺は放り込まれるの?」
『世界を変えるんだ、そう簡単なわけなかろう。』
「・・・えーと、俺は帰れるのかな?」
『御前次第だ。』
「・・・分かったよ。絶対戻ってやるよ。」
『ふっ。頼んだぞ。』
「頼まれてやらぁ。」
そして、視界は真っ白になった。